samurai7 | ナノ
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その時、足に硬い何かが当たる。ウキョウはちらりと下を見て、怯えながら前方へと視線を戻した。


「おおおオラ、農民だで。天主様に言われて此処に来ただけだあ…!」
「下手な芝居やめろってんだ。匂いで本物だって分かるんだよ。テメーも元は農民なんだってな」
「え」
「おめえが天下取った気持ちは分からなくもねえ。俺だって農民から出世目指して、こんなナリに身を変えたんだからな」


キクチヨの話を聞き、ウキョウの表情に笑みが戻る。


「へえ、君も農民だったんだ。じゃあ分かるだろ、野伏せりに苦しめられて来たからこそ、僕が天主になる意味がある。僕なら農民を解放できるんだよねー。なのに何故僕を斬るのー?僕何か悪い事をしたー?」
「じゃかあしいやい!天下取って仕舞いなら文句はねえ!だがテメーは陰で人殺しをしてるじゃねーか!」


怒鳴った時だった。部屋の外から数十人もの兵達が連射銃を手に突入してくる。形勢逆転。ウキョウを追いつめていた筈が、言葉で時間を稼がれ逆転の隙を与えてしまった。兵に囲まれ、身動きが取れなくなる。


「無駄さ。僕を斬っても世の中は変わらない。農民も浪人どもも、また苦しい毎日に戻るだけだよ」


ウキョウの巧みな言葉が続く。しかしキクチヨは大太刀を振り上げた。


「サムライってのはなぁ、刀持ったら迷わねえモンなんだー!!」
「ああああああああ!!」


ウキョウが悲鳴を上げた時、都が大きく傾いた。偶然にも進路上にあった岩が都に衝突したのが原因だった。その場に居た者達がよろめき、キクチヨの振り下ろした大太刀はウキョウではなく壁にめり込む。
ウキョウは狙いを定めて地面に手を付いた。先ほど足に触れた硬質なもの――連射銃を手にするためだ。即座に手に取るとキクチヨへ向け引き金を引いた。


「あぁああぁぁあ!!」


キクチヨの全身を弾丸が襲う。


「キクチヨ殿!」


身を案じてカツシロウが声を上げる。しかし囲んだ敵兵達も連射銃を発砲したため、カツシロウ、シチロージ、キュウゾウは散るようにその場を跳び退く。しかし無数の弾丸とあって、数発身に受けて体勢を崩す。その隙に敵が三方に別れ一人一人を包囲した。


倒れたキクチヨの頭に、ウキョウは尚も銃を撃ち込む。弾丸が無くなると、銃を鈍器のように何度も何度も振り下ろした。


「機械のサムライは嫌いだ!大っ嫌いだ!この僕を虫けら扱いしやがって!世界を滅ぼしてやるからな!天主だって同じだ!この僕を農民なんかにしやがって!一番貧乏くじ引いたのは僕じゃないか!こんな世の中ひっくり返してやる!サムライも農民もアキンドも!今度はお前達を虫けらにしてやる番だー!!」


キクチヨのゴーグルから光が失われ、ようやく息を切らしながら手を止める。呼吸を整え、肩に掛かっていた髪を手で払い近衛兵に振り向いた。


「じゃ、行こうか」


一度剥がれたウキョウの仮面だったが、またいつもの調子に戻っていた。余裕のある様子で、サムライを尻目に歩き出す。辛うじて息のあるサネオミにも興味を示さず、一人の近衛兵に近付く。


「しかし、御座船は……」
「外にいる野伏せりに運ばせればいいだろ、頭悪いなぁ、まったく」
「は、仰せの通りに」


近衛兵の持つ銃を再び手に取り、カツシロウへと近付くと、その頭を足蹴にし銃口を向けた。


「カンベエくんは何処」
「知らぬ」
「あ、そう」


矛先を変え、ウキョウはシチロージへ近付き、脚の傷を踏んで見せる。


「ぐあああっ!」
「よせ!」


声を上げたカツシロウに再び銃を発砲して問う。


「カンベエくんは何処!」


それでも何も答えないカツシロウにウキョウは目を細め、三人を見た。


「そういやユメカくんがまだ中に居るんだよね。カンベエくんの居場所を教えてくれるなら、こっちも教えてあげようじゃない」


徐々に発進口が開いていく。良い方法だと思ったにも関わらず、誰も口を割らない。


「キララくんはどうしてる?このまま進めば、カンナ村を潰しちゃうよ。その前にキララくんを助けに行かなくちゃ」


外から入ってくる光が、暗い部屋を照らしていく。そこで気付いた。カツシロウがにやりと口元を歪めたことに。

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