samurai7 | ナノ
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主機関に向かい始めた直後、これまでに無い爆音と揺れが襲い、ユメカが転倒しそうになるのをボウガンが立ち止まり受け止める。そしてそのまましゃがみ込んで揺れが収まるのを待った。


「今のって……」
「でかいな。何か攻撃を受けたんだろう。……あいつらか」


ボウガンがカンベエ達のことを指す。ユメカが一生懸命記憶を探り、頷いた。


「カッツンだよ。ウキョウがカンナ村に撃ってきた主砲を跳ね返したんだと思う」
「…………」


ボウガンが真剣に向けてくる視線で、大きな揺れが治まったのに気付いたユメカは自分の膝に力を入れて立ち上がる。


「ごめん。早く行かないとだね」


刻一刻と最後の時が近付いてくることが感じられ、心臓の鼓動が恐怖で早くなり、自分が本来知り得ない状況を説明していることに気付かない。ボウガンもまた、そこには触れずにユメカの手を引いた。

機関室の扉の前まで来ると、ボウガンはユメカを護るように背後へ回し、扉の横で左腕を構える。自動ドアを反応させると、中へと突入した。
しかし拍子抜けするかのように、装填された鉄矢を仕舞うと左腕を下ろす。


「とりあえず入って来て大丈夫だ。不気味な景色だけどなァ」


声を聞いたユメカは恐る恐る中へと足を踏み入れた。突風が顔に当たり、一瞬目を瞑る。そして広がった景色におののき、立ち尽くしてしまった。
機関室は壁が無く、すぐ外では無数の野伏せりが飛び回る、そんな現実を目の当たりにしたからだった。


「とりあえず外の奴等は此方に気付く気配は無いが、いつ敵が入ってくるか分からないから隠れて待つぞ」
「う……うん」


ボウガンが再び手を引き、ユメカを制御装置の陰へと誘導した。


「大丈夫か?」
「うん。……あは、駄目だね。今日の日のことは何度も考えて来たのに……現実になると恐くて足が竦んじゃう」
「当たり前だろ、戦えねぇんだから」
「……そうだね」


ボウガンが視線を落とすユメカの頭へ、ぽんと右手を置いた。


「安心しろ。あんま頼りないかもしれないが、俺がユメカの腕になるために此処に居る」


ボウガンの言葉がすっと心に届き、ユメカは強ばらせていた表情を和らげる。そうだ、もう夢に見た景色とは違うのだからと。


「……ありがとう」
「あぁ。それで、カツシロウ達は何処から入ってくるんだ?」
「正確には分からないけど、外から直接だよ。その頃には私たちが入って来た扉からは連射銃を持った敵が入ってくると思う」
「承知」


口元を弧に描いて自然な調子で頷くボウガン。ユメカはようやく心に余裕ができて違和感を感じた。本来不自然になってしまうはずの会話であったことに。


「ボーガン、今私が言ったこと、信じるの?」
「ああ。これから先、起こることを知ってるんだろ。あり得ないけどあり得てる。ユメカが必死になってるんだからな」


心強い言葉。その時、外から滑り込んでくるような人影が視界に入った。続けざまにヤカンも入って来て確信する。カツシロウとヘイハチだと。


「ヤカン!?敵か!」
「待って違う!あの中にはヘイハチが入っているの。カッツン!ヘイさん!」


即座に駆け寄るユメカに続き、ボウガンは自分達が入って来た扉に意識を向けながら近寄った。
聞こえる筈の無い声に反応したカツシロウが険しい顔で目を見開き、ヤカンの蓋を開いたヘイハチがその姿を確認する。


「ユメカ殿!?」
「ユメカ、やはり都に。
ボウガンでしたか、カンベエ殿から話は聞いています。今すぐ外へ連れ出してください」


近くに居るボウガンの様子で此方側の人間であると認識したヘイハチは、険しい表情で指示を出す。


「ちょっと待ちな。それはユメカの用が済んでからだ」
「用?」


次の瞬間、ボウガンが入り口に向けて鉄矢を撃った。入り口から入って来た都の兵達が急所を付かれて倒れる。
ヘイハチはハッとしたようにヤカンから降り、中から爆薬等の道具を取り出して見せる。


「どうやらユメカのことは私の役目を終えた後になりますね。もう敵に居場所を知られてしまった様ですから下手に動くと危険でしょう。
私はこの主機関から天守閣を切り離さなければならないので、カツシロウくん、援護願います」
「承知。任務遂行を」
「ボウガン殿は何がなんでもユメカを守り抜いて下さい。傷ひとつでも付けたら許しませんよ」
「言われなくても分かってる」


会話の隙さえ与えぬと言わんばかりに、入り口からまた新手の兵が押し寄せる。
カツシロウは刀を手に敵の元へと向かい、ボウガンもユメカの盾になるように前に立ち、遠距離から敵を狙う。
切迫した状況になり、ユメカはボウガンの背で護られながらどうするのが一番良いのかを考えた。
ヘイハチの状況には猶予が無い。

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