samurai7 | ナノ
14
96 / 177

閉じた瞼に光を感じ、ユメカが目を覚ます。
ふと隣に視線をやるとシチロージが居て、わっと驚いた。


「キュウゾウ殿でなくてすまねえ」
「な……!」


その一言でついキュウゾウに身を引かれた瞬間を思い出し、金魚のように口をぱくぱくさせた。
顔は熟れた林檎のように一気に真っ赤に染まる。
必要以上に動揺する様子に、シチロージは一瞬目を丸くし笑みを湛えた。


「あらら、いい反応で。さては何かありましたな」
「ーーーっシチさん!」


自分の反応を止められず、ユメカは必死に目で訴える。
シチロージはからかい過ぎたと肩を竦めた。


「悪い悪い。そろそろ出発するとしましょう」


キララが怪訝そうに二人の様子を眺める。


シチロージの話によると、ユメカが眠りについた後、
見張りを変わりにキュウゾウがシチロージのもとに行ったらしい。
ユメカは出発前から疲労感でいっぱいになった。


昨日と変わらず黙々と歩く。
ずっと歩く現状に、キララもユメカも息が上がった。
刹那、キュウゾウが立ち止まる。


「つけられてる」


小さく呟いたキュウゾウに、ユメカはびくりと固まり、キララは驚いて振り向こうとした。
シチロージが「見るな」と、キララの背を押さえ止める。
みんなが立ち止まったことが不自然でないよう、シチロージが腰を落とし膝を立てた。


「足を乗せなさい」


キララが途惑う。


「いいから早く…!」


キララが恐る恐る足をシチロージの膝に乗せた。
キュウゾウがゆっくりと刀の柄を掴む。


「殺る気かね」


シチロージの問いの答えを行動で示すと言わんばかりに、キュウゾウが後方へ駆け出そうとするが
キララがその身を引きとめた。


「お待ち下さい…!何故なんです。
敵かどうかも分からない相手をわざわざ」
「…………」
「今は村へ行くのが先決のはず。無駄な殺生は止めてください」


キュウゾウがキララを見て、刀から手を離した。
そのままキララの前を歩き出す。


「…………」


キララが眉根を寄せ、その姿を眺める。
何も言葉を返してこないキュウゾウに向けるキララの怒りが伝わり、
シチロージは深く溜息を吐いた。再び歩き出す。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -