samurai7 | ナノ
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ゴロベエの優しい言葉に、ホノカは涙を流す。
しかし、ヘイハチは冷たい眼差しをホノカに向けていた。


「それで、この女どうします」


立ち上がったヘイハチは、ホノカの背後で刀に手を掛けた。


「ヘイさん……」


ユメカは思わず声をかける。
しかしそれ以上に何かを言うことはできなかった。


「ユメカ、裏切りは本来、死を持って償うべきなんですよ」


視線を合わせずに言った言葉は、普段のヘイハチからは想像できない辛辣なものだった。
ヘイハチの過去が原因。それをユメカは知っている。
ヘイハチはホノカを自分と重ね、自分に言っているようだった。
しかし驚いたリキチがヘイハチとホノカの間を割って入る。


「どうか……!引いてくだせぇ」
「だが生かしておいては式杜人にも害が及ぶ!」


しかし当の式杜人は「私等のことはお気遣い無く」とあくまで重要視していない答えを返す。
どうにもならない状況に、時が止まったかのように静まり返った。
一陣の風が吹き去り、髭を撫でていたカンベエが口を開く。


「ホノカ殿」


ホノカが死を覚悟して肩を震わせた。


「妹御と逢わせよう」
「……!?」


カンベエの思いもよらない言葉に感極まり、ホノカは勢い良く地面に額が付きそうな程に頭を下げる。
リキチも深く、感謝の意味を込めてカンベエに頭を下げた。


「甘すぎやしませんか」


ヘイハチの不満げな様子に、カンベエは穏やかなまま言う。


「裁きはサムライの本分では無い」
「…………」


ヘイハチは不意を付かれたように片目を開く。
しかしすぐに、気が抜けるようにいつものヘイハチの表情へと戻った。
怒りも消えうせ、カンベエという人の面白みに意識が向く。


カンベエが立ち上がった。


「式杜人、リキチとユメカとホノカ殿を頼めるか」
「「承知」」


その時、比較的近い場所で爆音が響いた。
サムライ達が煙が上がるその方角へと駆け出す。
ユメカもキュウゾウだと思い、駆け出そうとするが式杜人に腕を捕まれた。


「ちょっと…!放してください!」
「先程頼まれたんで無理ですよ。貴女はこちらへ」
「やだ!」


振り払おうとするが、無理だった。
渋々手を引かれ、ユメカは安全な高い位置へ向かう。


(これじゃヒョーゴが…!)

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