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【凍てついた心を照らす様に】

 愛しくて愛しくて、思い出せばきりがないほどにお互いがお互いの全てだった。
 5年という長い長い永遠のような日々はお互い離れたまま孤独を1人持て余していた。
 まるで欠けた一部のように、どうしようもなく焦がれて、愛しくて、離れ難い。泣きたくなるほどに募る思いを指折り数えて、そして、永遠のように感じられていた日々は突如として終わりを告げた。愛しげに口付けて抱き締めた海はとても儚くて、壊れてしまいそうなのに。どうしようもなく愛してしまって、もう戻れない。
 抱き締めて触れようとした海をベッドに寝かせながら男はそっと涙を拭ってやるとポンポンと小さくて丸い頭を撫でた。

「海…何しやがる、」
「...っ、お願い...」

 しかし、海はその撫でていた手を引き寄せ小さく吐息を漏らしながら、リヴァイの骨ばった手を掴んでまた頬に一筋清らかな涙を流して、そっと彼の唇に触れる程度のキスをしたのだ。
 海が自ら唇を求めてきたことは今までそんなになかったから、拍子抜けして脱力して彼女のされるがままに重なるキスはより深さを増した。不意を突かれてとっさに反応が遅れる。力が入らない。

「リヴァイに、今、すごく抱いて欲しい...お願い、私を抱いて、もっと...」

 甘えるような声でそう告げた海は儚くて、今にも消えてしまいそうだった。
 昨日この部屋で5年ぶりに海を抱いた事。お互いに翌日に控えた壁外調査の為に生殺しのような劣情に蓋をして、支障が出ぬように自分が精魂付き果てるまでは至らずに無理矢理抑えこんだ情欲が沸き上がる。まるで殺し文句のような海の眼差しは5年前はまだあどけない少女の様だったのに、今は幼さの中に垣間見えるその儚げな色香に、溜まりに溜まった欲情を酷く煽られた。
 大切にしたいのに、小さな体を目一杯あらゆる手段で優しく愛したいのに時折相反するどす黒い感情に苛まれて。むちゃくちゃに壊したくなる衝動に襲われるのはなぜなのか。
 それでも目の前の女はそれを望んでいる。自分に酷く抱いて欲しいと、相反する欲望のままに、愛されたいと。

「海、」

 するりと海の手が伸びて、そしてたどり着いたのは。自身の着ていたUネックのインナーに手を伸ばし、海の小さな手が彼の衣服を奪いさり、自身の筋肉で覆われた厚みのある硬い胸板にピタリと当てられた海の色白で小柄な割に長い指先。
 小さくて折れそうな肢体を今もまだ燻って消えない劣情に任せて抱く事などしたくはない。欲を散らすだけならそんなもの自分ですればいい。

 しかし、その先を懇願するように自分を見つめて着ていたインナーを脱がせる海の眼差しは同じように情欲に染まっていて、夜空に照らされた可愛らしい表情は大人びて、綺麗だと思った。淫らで情欲とは無縁だった純情で愛を知らない男の考えることも知らないで無防備なほど健気に自分の周りをうろちょろしていた海を自分がこんな風に変えてしまった。

 海の前で露になった屈強な筋肉を纏った男の身体。部下を失った、また死なせた自分の不甲斐なさを、喪失を何かで埋めるなら体温で包み、そして抱いて欲しいと懇願して。

「リヴァイの身体、綺麗だね」
「んなわけねぇだろ、お前の肌の方が綺麗だ」
「ん、」
「5年間は長ぇな、華奢で頼りなさそうだったのによ...顔はガキのまんまなのに、見ねぇ間に身体はすっかり女になっちまった...」
「っ、そうね、ずっと兵団から離れていたもの...筋肉も落ちたし、傷跡も薄くなったから、」

 抱き合っていなければそうでなければ、きっとやり切れないのだろう。あまりにも突然すぎて、そしてあっという間に死んでしまった、殺された仲間たち。殺したのは...。男は海がこのやるせない虚無感から逃げるように、そのはけ口として自分の温もりを欲していることがわかった。

「キスして、」
「海...」
「あっ、んんっ...もっと、っ、リヴァイ...」
「っ、お前な...見ねぇ間にすっかり...どうしちまったんだよ、」
「っ、私だって...女だよ、あなたの前ではただの、海だよ」

 受け入れたキスに応え始めれば何度も何度も重なり交わる唇。海が自ら割り込ん出来た小さな唇から覗いた柔らかな舌、ぷっくりした薄桃色に染まる唇が一生懸命薄い男の唇を割開き舌を引き出すようにねっとり絡ませてくる海。幾度も繰り返して顎に伝うそれをようやく離すと海の上気した頬には流した涙の跡が付いていた。
 思わず「綺麗だ、」とらしくもない歯の浮くセリフが出た。
 元から幼い愛らしい顔立ちだったのに今はどこか研ぎ澄まされて、可愛らしさの中に芯の強さを感じる。普段きっちりまとめいている髪は今は解かれ、緩やかに腰まで伸びている長い髪ごと海を抱き寄せると男は両手で海の頬をつつんで見つめあった。

「馬鹿野郎、こんなにも、今にも壊れちまいそうなのに…」

 自分に抱かれながら、それでも自分を求める壊れてしまいそうな海。弱々しい手なのに、自分を求める眼差しはどこか艶やかで、5年という長い長いその月日が彼女を女へと変えたのだと知る。

「一丁前に女になっちまって...、この身体は俺しか知らねぇんだろ?そうだろう...?なぁ、海よ、」
「うん、そう、だよ。5年間誰にも触らせてない、私の身体も心もね、私には全てあなただけだよ。リヴァイ...信じて」

 信じても何も女の身体で男根を受け入れるそこは筋肉で出来ているらしい。しばらく性交していなければそこは直ぐに頑なに入口をまた閉ざすのだ。
 5年間誰も受けれていなかったそこへ再度自身を挿入した時、心地良さよりも痛いくらいに締め付けられて、海自身も前戯をしても奥まで濡れていなかったのかとても痛がったし出血もしていて、身の潔白は女の方がわかりやすいと身を持って感じた。
 男は女と違い身の潔白を証明できないが、自分はもう海しか抱きたくないと思った。
 女を抱くなんて、戯れに欲を散らすためだけの手段でしかなかったし、それなら自分で散らした方が事は早く後腐れもない。まして今や調査兵団兵士長の立場である自分がクライスのように女遊びなど許される立場ではないのだ。いい年にして独り身自分に擦り寄る色んな貴族の令嬢や、同じ兵団内の女ども、しかし、もう海しか自分には見えなかった。相当の男色家だと影で噂されてもそれで構わなかった。約束もしていなくても海の抱いた優しく柔らかな感触を、甘い香りを、忘れたくなかった。
 お互いに離れていたこの5年間。2人は決してその劣情を他人で埋めたりはしなかった。

「馬鹿野郎、お前が、そんな訳ねぇ事くれぇ分かってる、もう前からお前しか見えねぇのに...お前以外の女なんか抱けるかよ、」

 人間は弱い生き物だ、その命には限りがあって、人は簡単に死んでしまう。約束なんて永遠なんて存在しない、無限に続くものなどありはしない。それでも人は一人では生きていけないし、どうしても求めてしまう。

「海、」

 男は自身の痛む膝に海が気付かぬようにと情欲に染まってどこか色香すら覚える、海を受け入れていた。甘い香りに酔いしれながら5年間姿を消したままのあの沈黙を裂くように、海を抱き締め、何度も何度もキスを交わしては深く深く抱きしめ合う。
 生きている限り人はまた思いをつないで生きていける。身を乗り出しながら男は静かに海の額にキスをして言葉なく見つめ合う。

「っ、見ないで...今、変な顔してる、から」
「見つめられずにはいられねぇよ…5年間は長すぎた、まだまだ足りねぇよ」
「そうだよね…ごめんなさい…、」
「良い、もう過ぎた事は忘れろ。だから、お前がもう離れないで済むように…決めた」
「え?」

 交わる目線は2人が初めて結ばれた夜よりも穏やかで優しかった。

「お前まで…逝くんじゃねぇ。俺の居ない場所で勝手に死ぬことは許さねぇ、」
「リヴァイ…」
「海、愛してる…俺の傍に居ろ、これからもずっと、傍に…何も考えなくていい。分かった。望み通りにしてやるからもう考えるな、」

 昨晩、深く愛を確かめ合い5年間の空白を埋めた場所で、そっと海が着ていたVネックの柔らかな生地のブラウスのボタンを外すと露わになった柔らかな肩に触れ、辿る指先は海が大事に肌身離さず首からぶら下げていた指輪をつないでいたチェーンが、下着で寄せられた胸の中心に輝いていた。指輪を外してそっと海の左手を掴むとそれを本来填めるべき場所へと填めて。そのまま騎士が姫に忠誠を誓うかのように手の甲に口づけを落とした。

「リヴァイ…」
「今度はこんな安モンなんかじゃねぇ、もっといいものをお前に贈らせてくれ。お前は俺に繋がれている。必ず生き延びろ」
「うん、うん…っ、嬉しい、すごく嬉しい、ありがとう、リヴァイ…5年間ずっと待っていてくれてありがとう。もう離れないから、エレンも守って、リヴァイも。私が守って見せるから…」
「ああ、約束した。俺を看取るまで傍にいるんだろう、ちゃんと務めを果たせよ、」
「責任重大だね...」
「悪くねぇだろ。現実は残酷だ。だからこそ、俺にはお前が必要なんだ」
「うん、嬉しい、初めてリヴァイに抱かれた時みたいに胸が苦しい、幸せすぎて嬉しいの」
「お前が少しでも笑っていられるなら俺は何度でもお前を抱いてやる、だから受け入れろ、」
「うん、」

 リヴァイはまるで厳しい現実から逃れるかのように2人は女型の巨人の脅威から逃れて生還できたこと、仲間を失った痛み、お互いに負傷した身で限られた時間を喪に服し仲間の死に哀悼の意を示すべきなのに、不謹慎だとしても、肌と肌で抱き合い求め合わずにはいられなかった。

「海、オイ」
「私に、させて...今日は私からしたいの、だめ?」
「は、」

 自身をベッドに座らせて床にひざまづいた海。男の下着をくつろげさせると張り詰めた自身を取り出しながらそう告げる。
 相変わらずとんだ殺し文句だ。この5年間誰にも抱かれていないのに、目の前で恥ずかしげもなく自分の服に手をかける海はこんなにも淫らだっただろうか。優しくしたいのに、手酷くなんかしたくないのに海はそれを望んでいる。

「いい、止せ、無理なんかするな。お前は地下街の女みてぇなことすんじゃねぇよ」
「っ、でも...」
「俺はお前の中でイキてぇからな。お前に抱かれるなんて性に合わねぇんだよ。俺が...お前をヨくしてぇんだよ、」
「っ、」
「なぁ、海よ、このまま寝るのは嫌なんじゃねぇのか?」

 微かに海が流した涙を拭えば香る血の匂いに充てられて、それは仲間が流した血の匂い。地下街でその匂いを嗅がない日は無かった。

 海と出会った時も、海は血にまみれていた。流れる血には抗えなくて、赤い血を見ると人間の本能が猛ぶるのは何故なのか。地下街に長く居すぎたせいなのか。

「馬鹿野郎...っ、よせって、言ってるのによ」
「ふっ、んんっ...リヴァイ、気持ち、いい...?」

 止めろと言うのに、忘れたいのと。お構い無しに海は小さな口いっぱいに硬く張りつめた怒張を飲み込んだ、半分も飲みきれない部分を手で擦りながら愛しげにキスをする。
 この5年の間に何が起きたのか。可憐であどけない清純な少女からいつの間にかこんなにも艶やかな女になっていたなんて。

「っ、ん...」
「お、いっ...止せっ、」

 エレンが海を見る目付きが自分と同じモノだと気が付いたのはいつか。男として海を欲していると。
 しかし、たとえ幼少からの幼なじみだろうが、当たり前だがあんなガキに受け渡すつもりは無い。心も身体も海は自分だけのモノだ。大人の男の余裕を見せつけながら本当は誰よりも海を独占したい。

 たどたどしい手つきで自身を手に小さな口で一生懸命舐めて奉仕する海。膝の辺りには柔らかな2つの膨らみが潰れ、揺れている。この5年の間に肉付きが良くなり柔らかそうなその谷間に手を差し込めば温かくて滑らかな肌は綺麗だった。兵士を辞め身体の傷も大分癒えたはずなのにまた傷が増えてゆくのか。自分だけだ、海のこんな淫らな姿を見れるのは。自分だけで、いい。

「海よ、お前が...エロいな、そんな顔で、口に半分も収まっていないのに、もう、いい、」
「ん、んんっ」
「頭を動かすんじゃねぇ、医者がいいと言えど念の為にな、」

 大きく広げた口で喉の奥いっぱいにまで飲み込まれた自身は海の柔らかな唇と舌に絡まれて不覚にも達してしまいそうになった。口淫なんて、自分の自身を他人の粘膜に包まれ咥内に収まり舐められるのは潔癖の男には些か抵抗があった。地下街の女にもそれだけはさせなかった。ただ自然に募る自身の欲を散らすだけで良くて。女を抱くだけ抱き、それが終われば自分のアジトに戻り眠る。唇を交わしたことも女と一緒に夜を明かしたことは今までもなく、愛されたことを知らない自分はこのまま孤独に愛を知らずに生きていくのだと思っていたのに。あの地下街の片隅で、今にも儚く消えてしまいそうな海に、出会った。

「海、お前が、好きだ...愛してる」
「あっ、ああっ、ふぁ、っ」
「俺の舐めてこんなに...ああ、せっかくの下着が汚れちまうな、」

 しかし、海の薄桃色に染まり蜜を垂らす陰部を口で愛することは抵抗がないのに。

「あっ、ああっ!んああっ、」

 上の下着もとっぱらい下の下着もずり下げ裸の海が両足を広げて男からのお返しの愛撫に身悶え愛液を迸らせながら達した。胎内に埋め込んでいた指は3本に増え気持ちよさそうに粘度を増した愛液が男の指を汚していた。

 自身の欲で海を汚したくない、激しい抵抗感を覚えていた。そんな純粋だった海を抱いてまだ不慣れな身体をあらゆる手段で裸にして、快楽を覚えさせ抗えなくさせたのは自分なのに...。

「んっ、ンン、っ、」

 海の愛液で滴るそこに指を絡ませればそこはもう既に濡れて自分を受け入れたくてたまらずにいるようだった。

「オイ...っ、止せ」

 急に視点が変われば海に押し倒されていたことに気が付く。確かにこうすれば海に足を負傷したことは気付かれずに居られるが裸になれば包帯も傷だらけの身体も余すことなく海に見下ろされることになる。

「っ...!」

 のしかかって来られて膝に激痛が走り男は苦悶の声を放った。

「あ、ごめんなさい...重かったよね、」
「っ、違ぇよ」
「でも、痛そうにしてた...。え?リヴァイ...もしかし、て」

 海は突然は、と気がついたように今痛みを投げかけた男の膝に手を伸ばしてそのまま履いていたラフなスラックスの裾を捲りあげれば包帯と添え木で固定された彼の負傷した足が生々しく視界に飛び込んできた。

 酷い怪我を負っていた、それなのに仲間を失いパニックになった自分のせいで歩かせてしまった。そして彼が負傷しているのに現実逃避のために彼に迫って...。

「ごめん...なさい、怪我、してたのに私ったら...」
「気にすんじゃねぇよ、まさかここでやめるなんて言わねぇよな?」
「えっ、あ、あ!ああっ!!」

 ズプププッ、と粘着質な音を立ててリヴァイは真下から突き上げるように既に海の口淫で濡れた自身を海の燃ゆる胎内へと捩じ込んだのだ。急に捩じ込まれたリヴァイ自身に海は眩暈を覚えながら上になり言われるがままに腰を振る。

「あ、ああっ...!」
「っ、動いてみろ...っ、」
「は、あっ、」

 ウエストのラインから胸のシルエットが生々しく星空に映える。しかし、海は予告無く長大な彼を胎内に捩じ込まれた衝撃に息を詰めて受け入れるので思考がいっぱいだ。どこか妖艶にニッ、とほくそ笑んだ男の顔が卒倒しそうなほど色っぽい。海の長い髪がまるで檻のようにリヴァイを閉じ込めてそのままー...

「お願い、っ、忘れ、させて...」

 人の生き死に触れて、自分もいつか物言わぬ骸になるのか。まだ彼と繋がっていたい。愛しくてだからこそ失いたくなくて、彼を感じられなくなることがこんなにもたまらなく怖くて、今はただ彼に抱かれて甘い夢を見たいと願った。束の間でいい、巨人に食われゆくこの世界の片隅で彼だけが私を生かすのだと。

「あっ、ああっ」
「っ、くッー...」
「ああっ!んんっ、」

 負傷して動けない彼に抱いてと強請り、そして躊躇えばもう彼は欲情と生への渇望を欲していて...。今更止めろなんて殺し文句。唇を塞げば言葉の代わりに行き交う吐息。代わりに動かねばならないのに彼しか知らない自分は彼の今まで抱いてきたどの女よりもたどたどしくてぎこちなくて。上手く彼の上で踊れない。それでも、上下より前後運動へ変えれば彼は海が腰を降ろしてきたタイミングで一気に突き上げてやる。

「あっ!ひぁっ!」
「っ、キツい...」
「ひぁっ、ああっ、だめぇっ、リヴァイ、ああっ!」

 生きている実感を全身で噛み締めるように5年間ずっと焦がれてやまなかった海に触れてもう歯止めが利かない、お互いに目前に迫る調査兵団のいまだかつてない危機とリヴァイ班壊滅という泣きたくなるくらいに辛い現実から目を背けるように、お互いに負傷しながらも無事を確かめるように、隙間を埋めるようにリヴァイと海は限られた時間の中で暗闇の中繋がっていない箇所はもうどこも無いように余すことなく深く交じりあった。

「あっ、ああっ、もうダメえっ、ダメっ!」
「うるせぇ...っ、おら、っ我慢しねぇでさっさとイけ!」
「はっ、ああっ、ああっ〜..んっ、つ!!」

 達してしまえばこの行為も終わってしまう。そう不安がりだからまだ達したくないと懇願する海。しかし、心配無用、自分はまだまだ海が足りない。何度、何度も達しても泣いても声が枯れてもやめる気は無いと、リヴァイの逞しい鍛え抜かれた身体は汗と海の髪の毛が張り付いていた。
 快楽に縋り付くように対面座位で見つめ合いしがみついて赤い筋を残す。しかしそんな痛みなど痛みではない。男は海に抱かれる形で達した海の色香に充てられて後を追うようにその締めつけで果てたのだった。

「っ、はァ...」

 互いの両手を重ねて握り、見つめる。周囲には二人の声と荒い吐息だけがただ、響いていた。そしてまた動き出せばリヴァイの上では踊るように揺れる海の柔らかそうな胸が早く触れと言わんばかりに先端を硬くしている。互いにこの行為に興奮して沸き立つ熱と汗が滴り温もりを分かち合い、没頭して男は静かに溜まりに溜まった熱を放った。

「海、」
「あっ、んぁっ、中、で...っ」
「ああ、っ、夫婦なんだから...いいじゃねぇか...シーツに零すなよ」
「っ、んっ、...」
「言ったろ、ガキならまた作りゃあいいと、」

 中に溢れたそれに海が涙目できゅうと膣口を締めていた。しかし、まだ、足りない。もっともっと、5年間は長すぎた。到底この空白はそう簡単には埋まらないだろう。

「あっ、ああっ!リヴァイ、リヴァイ...っつ!」
「海!イケ、何度でも聞かせろ、お前の声...いいな、いい声だ」
「っ、はぁっ、ダメ、ダメぇっ...!」

 衰弱している海が疲れ切って眠りに落ちるまで飽きることなく抱き合い、愛しあった。
 海は自身の左手の薬指に嵌めることを許してくれた彼の腕の中で負傷した彼の膝を気遣い、彼を跨ぐ形で彼の上で胸を揺らし、腰を揺すり、何度も、何度も、下から激しく突き上げられ消えてしまいそうな意識の中、ただ、願うのだった。
 これ以上誰も死なないでほしい、無理だとしても残酷な世界の中で願わずにはいられなかった。

 Fin.
 2019.09.09
【凍てついた心を照らす様に】

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