Going Under | ナノ
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【この「出」愛に悔いは無い】

 彼女と自分との間に宿った大切ないのちが奪われたのは全て秘密裏に中央憲兵に仕組まれていた事だった。
 彼女の両親がすべてのはじまりだとすれば彼女がその事実をもし耳にしたとして、その事実を知る事が、果たして彼女の幸せになるのだろうか。
 どれだけ嘆いても失われたこの命はもう永遠に戻らない。幼き命は摘み取られてしまった、その事実を知った自分の胸の痛み以上に肉体的にも精神的にも傷を受けもう二度と子供を授かれない彼女がこの事実を知れば、きっと、彼女は――。もしかしたら最悪の選択をするかもしれない。

 ――「俺を嬲り殺しにしてくれ……リヴァイ。あんたの好いたの女の分までな。それが……俺の……血に染まった…人生のすべてだ」

 浴室から出てきたリヴァイに何食わぬ顔で声をかけたのがそもそも間違っていたのだ。彼は海を見るなりまるで飢えた獣のようにギラついた瞳で上から下まで舐めるように見つめてきた。
 彼の普段とは違うカッと見開かれたその目には見覚えがあった。そして、久々に人間の血を見て地下でも幾度も見て、そして感じてきた、彼は時折獣のような本心を露わにすることがある。
 猛る気持ち、彼はやり場のない感情をこうして無言で行為にぶつけてきた。そして、自分はそれを受け入れるのだ。
 纏わりつくような視線を受けて海は身じろいだ。しかし、拒むという事はしない。
 海の華奢な手首はリヴァイの逞しい腕に力強く掴まれ、再び海の唇は塞がれた。

 ――「いいよ、あなたの気が済むのなら、幾らでも……好きにすればいい」

 海が口にした、その言の葉が引き金となり彼のなけなしの理性を壊した。
 ヒストリアの身代わりとなりウズ汚い男に弄ばれた海の傷つき穢れた身体も、心も、慈しむように抱いてくれた時とは全く違う手つきでリヴァイにのしかかられ、それでも海は抵抗する素振りは見せなかった。
 なだれ込むような行為、例え、どんな彼でも受け入れ愛することを決めたのだ。この決意が揺らぐことは決してないのだ。
 リヴァイの細身の割に重量のある強靭な腕に包まれた海は決して彼を拒むことは無かった。それは、二人だけの秘密の逢瀬にも感じられて。
 思い出すのは仄暗い地下の、血なまぐさい世界。
 そこから束の間でも解き放たれ、温かな温もりを求めて止まなかった。

「んッ、んんっ……あ、待っ、て……」

 突然息もつかせぬキスが降ってくる。逃げ回る舌を引き出され、彼の唾液の味にくらくらと眩暈さえ覚える。
 普段冷静で感情をおくびにも出さないこの男がこんな風に自分を求めることなど自分だけが知っていればいい、暗い優越感の中に海の伸ばした手はすぐに絡め取られてしまう。
 深く舌を絡めてくるリヴァイの灰色の瞳には一瞬だけ涙が見えた気がして、もしかしたら、彼が泣いているんじゃないかと、そう思えば思うほど切なくてたまらなくなった。

「っ、んっ、あっ……り、ヴァイ……」

 彼は、どんなときも思いやりと温もりをくれた。力強いその腕の中で彼に包まれる事は何よりの至福だった。傷ついた心も身体も全て彼が癒してくれた。
 そんな彼に今やり場のない怒りを、欲のはけ口のように衝動をぶつけられても海は決して拒まなかった。
 いつも彼は自分を気遣い、そして優しくその温もりを、分け与えてくれるように包んでくれていた。彼は言葉がいつも不器用なだけ。
 そう、彼は愛し方を分からないだけ。彼に初めて抱かれたあの日のことは今も、鮮明に覚えている。
 彼に初めてこの身体を貫かれた時、女になった証、破瓜の痛みだけが脳裏を支配した。
 愛することも、愛されることも、それがこんなにも痛みを伴う感情と知らずに生きてきた。

 でも、今の彼は酷く脅えたような傷付いた目をしていた。一体、何があったのか。
 まるで泣いているような、そんな気さえした。
 海は彼に何があったのかと心配になり尋ねようと声をかけた時には、壁に押し付けられて、自分は知らなかった、思ってもいなかった。
 彼はずっとこれまで我慢してきたのだ。きっと、今も自分を壊さないように、壊してしまわぬように。
 優しい人、そんなこと気にしなくたって人は簡単には壊れたりしないと言うのに。
 普段にも増して冷たい彼の双眼に射抜かれ、それでも期待にゾクゾクと震えてしまう自分が、これ程まで浅ましく感じたことは無い。
 こんな時にまで。それでもこれまで幾度も彼に抱かれた身体は、はしたなくもその先を求めて期待してしまう。
 その重みに生の実感を感じてしまったあの日から求めてやまない。
 彼と愛し合う行為は自分が今も生きていると実感できる至福の悦びなのだ。
 まるで破り捨てるように、引き抜かれたブラウスとその下で露になる下着姿の自分はどんな風に彼の目に映るのだろう。
 彼は一切服を脱いでいないのに、自分だけがあっという間に裸にひん剥かれて女の部分をさらけ出すのだ。
 立体機動装置の支障になると胸を平らに固定していた下着の留め具を外して乱雑に床に落とされ、上から下までまじまじと海の揺れながら眼前に晒された両胸をジロリと見つめるその目には感情を感じられない。

 リヴァイの脳内ではまだ昨日の出来事が頭から離れずにいた。この胸を自分好みに育てた大切な女をあの変態がいいように弄んだと思うとふつふつと怒りがわいてくるのだ。

 ――こいつに触れていいのは俺だけだ。
 口にはしない、そんなこと、こんな醜い感情をとてもこの子には言えやしない。
 どこにも行かせないようにその翼を折ってでも手を放せばあっという間に攫われてしまいそうな彼女を誰の目にも触れさせない場所へと縛り付けてしまいたい。それが彼の浅ましい本心。
 そして、先程のサネスの拷問の時から洗った筈なのにいまだに消えない血の匂いもかき消すように、怒りの塊と化した男の手で海の身体は、昨晩愛し合ったシーツに埋められる。

「あっ……っ、んっ、ま、って、り、ヴぁい」
「なら、追ってくるんじゃねぇよ。期待、させるな……」

 下から持ち上げるようにゆっくりと包んで胸の先を指の間に挟むように揉まれれば否が応でも彼に幾度も抱かれて、今も焦がれて止まずに控えめな海の喘ぎ声がリヴァイの耳に届いた。

「ん、アッ、んっ、んうぅ……」

 しっかり感じている。彼の立体機動装置を巧みに操る繊細な指先が肌を撫でる度にピク、と細い肩が揺れる。苛立ちの中で彼女に癒しを求めるように欲情に身を任せ、サネスを殴り飛ばした両手で海の痩せた体の中で一際目立つ両のふくらみをぎゅ、と掴んだ。

「んぁ、……っ!」

 好き勝手に荒々しく海の胸の柔らかさを堪能した後、ようやく少しは落ち着いたのか、先ほどまで荒々しく口づけていたのがまるで嘘のようにゆっくり、優しく形を変える手つきに変わり、急に優しい手つきに変わるので海も幾度も抱かれた彼の腕の中に包まれ決して拒むことなく身を委ね安堵した。
 どれだけ乱暴な手つきで求められても、彼はそれでも誰よりも優しくて仲間思いであることを理解しているから。決して嫌だとも、怖いとも、感じないのだ。

「ひっ、あっ、んっ、」
「……どうしようもねぇな、お前も、俺も」
「あっ、リヴァイ……!!」
「言われなくても、欲しいんだろ、」

 いつも無言で温もりを貪る男に触れられた部分から快感が広がっていくのがわかっていた。

「こっちを見ろ、」

 振り返り、唇を押し当て、海の舌を彼の舌が引きずり出し、そっと唾液を飲み込めば二人の間を銀糸が伝っていく。

「あぅ、ん……っ」

 丁寧に歯列の裏側まで舐められた。幾度も彼に抱かれて積み重ねてきた行為にすぐ順応に身体は招くように甘く疼く。
 ビクビクと海の背筋が硬直し、シーツの上で自分の背後から覆いかぶさるその腕の中に閉じ込められ、ゾクゾクと背筋から伝う快楽に身をゆだねる。
 震える手に力は入らず、振り返り向かい合おうとしたが、その腕は易々と絡めとられてまたシーツに繋ぎ止められてしまった。

「あ、やんっ……だめ……ぇ」

 互いの絡めた指はそのままシーツに、もう片方のリヴァイの手は怪しく這いまわるように。海の平べったい腹を撫で、尻から引ん剥くように履いていた下着も脱がされてしまう。
 無言で腰をあげろとその手つきが訴えてくるものだから海はその無言の訴えを聞き入れて腰を浮かす。
 淡い茂みを掻き分けるリヴァイの手が海の一番恥ずかしい場所へと潜り込んで、ゆっくりと割れ目に触れる指先は既に胸の愛撫と唇から触れ合う粘った体液に絡まるのを確かめ、そのまま彼女の胎内を我が物顔で犯した。

「ひ、あっ、ふ、そこ……やぁっ、」
「嫌じゃねぇだろうが、」
「っ、んんっ、あっ、んっ、んっ、」

 しかし、羞恥から来る拒絶の言葉など聞こえないと言わんばかりに、リヴァイは指先を彼女の中へと深く沈める。微かな水音と共に彼の中指が当たり前のように胎内へ吸い込まれて滑り込んでいく。
 侵入してきた指先が浅い場所で擽るように動かされると、胎内は自然に潤いを増して。海はリヴァイの普段立体機動装置を操る繊細な動きにも似た愛撫に目を見開いてビクンと甘く、仰け反った。
 しかし、逃れようにも彼の重みにのしかかられ逃げることは出来ない。

「んん、ん……っ、あっ……は、これ以上は……っ、あっ、だめぇ……っ」

 彼により与えられる快楽は次第に強さを増し、声を押し殺そうとするだけで精一杯。縋るように伸ばして握り込んだシーツの指先の関節が血の気をなくして白く染まる程に。耳元で響く濡れた音が先程よりも響き始めたことに気付くと二本目が挿入され、幾度も彼を受け入れた膣口は決して痛みなどは感じさせず、早々と滑り込み我が物顔で蹂躙されても海は拒みはしなかった。

 沈黙の箱で、仮にも上官である自分の部屋に今入ってくる無粋な人間はいない。
 むしろ、先ほどまで中央憲兵のサネスを拷問と言う名の暴力で尋問した自分の存在を未だ若き翼たちは恐れ決して今現在拷問後で気が立って最愛の女性にさえ早急な手つきで求める彼には近づきもしないだろう。

***

「っ、あ…!ん、……っ!!ぁ、も、ダメ、っ、ナカ、来ちゃうっ、あっ、イく、イくから……んぁ〜〜〜〜っ!!!」

 これで何度目だろう。
 海の膣内をかき回す卑猥な音が大きくなるにつれて、とうとうリヴァイの指の数は三本になっていた。
 音を立て益々激しく掻き回していくうちに海の身体は五年間誰も受け入れてなかったが、彼と別れる前、彼の子供を授かる前まで彼に幾度も抱かれ続けて女としての悦びを引き出された感覚を思い出し体の奥底と内壁がズクズクと疼きが止まらない。
 もう彼のその指では足りなくなり、くたりとシーツに突っ伏した身体を彼の身体が覆いかぶさっているのでまるで甘い檻に閉じ込められたかのような錯覚さえ感じられた。

「はっ、んっ、……っ、」
「オイ、まだ入れてもねぇが……」

 海の頭の中がぼうっと痺れ、喉の奥から出る声は甘く淫らで、普段聞かせない彼女から発せられる甘い声を聞けるのは自分だけだと言う優越感に浸る。

「ふ……っ、んんッ、……ふぁ……っ」

 あの日からお互いはお互いしか見えないのだと、確かめるように二人は片時も離れずにその温もりを分かち合った。
 言葉が拙い自分はただ無心で海という大切な存在、そして今彼女に安らぎをどうしようもなく求めた。この手に染み込んだ血の匂いが消えない、今すぐかき消してくれと言わんばかりに。

「あぁ……っ、んあぁん、んふ、ぁあ…っ……あ、あっ、ぁぁあ〜〜〜〜ッ!!!」

 うつ伏せにさせて、腰の上に伸しかかっていた体勢のまま、今自分がどんな表情をしているか。
 おそらくきっと酷い顔をしている筈だ。
 海には見せたくないのだと、変わっていく海の表情と声にリヴァイは剥き出しの真っ白な背中に口づけを落としながらあの薄汚い男に穢された肌を上書きするように吸い付きまた新たな華を咲かせた。

 ぬちゅぬちゅと音を立てて往復する度に溢れる愛液がシーツに飛び散るほど海は下肢をしとどに濡らしていた。潤いの尽きない海のそこは触れれば触れる程順応に反応し、とろとろと愛液が溢れ、悦びを素直に露わにする。
 海は胸を愛撫され、膣口も愛撫され、軽く達した余韻もそのまま責め立てられ既に理性は失われていた。
 頭がクラクラし、何も考えられないのだ。

「ん。ひ、ぁんっ……ん。あつ……っ……」

 待ちきれず。ヒクヒクと先端から糸を引き痛いくらいに張りつめたリヴァイの熱が一気に海のナカへ入り込んでくる衝動にはこらえきれずに海は悲鳴をあげて仰け反った。
 真上から伸しかかり、逃がさないと言わんばかりに捕食者は海の立体機動装置のベルトの痕がまだ真新しいその脚を引っ掴んで、腕に担ぐとそのままぐぶぷぷぷぷ……ッ!と彼の怒りにも似た屹立が挿入される。

「あぁ、ッああ……ッ〜〜!」

 ビクビクと震えながら、幾度も貫かれた熱を受け入れた身体はスムーズに彼を受け入れていた。
 グリグリ、と微かに先端を回されて、海が胎内をギュウウウッと伸縮して震わせると耳元で普段にも増して低く甘いリヴァイの声が響いて海の思考を奪う。

「ンっ、う……!」
「お前は……っ、何されても濡れちまうのか……?煽った責任は……とれよ」
「あ、あん…っ、ち、が、っ……リヴァイだから、あっ、ううんっ……ま、っ、て!!」
「待たねぇ、諦めろ……」

 その声はまるで初めて地下で出会った時よりも暗く冷たく感じられた。
 浅く腰を押し付けられて甘い声がひっきりなしに溢れて止まない。ドクドク脈打つ胎内に微かな快楽は拷問のようなもの。何度も頷きながらリヴァイへ素直に身をゆだねる海の順応に快楽を拾い集める姿、リヴァイは至極満足したように海の中を蹂躙した。

「欲しいなら自分でいい所に当ててみろよ」
「あっ、んや……っ! やだ…、恥ずかしい、よ……っ」
「さもねぇとこのままだが、」
「んっ!」
「なぁ、抜くぞ」
「あ、んっ、ひっ……!」

 ず、と少しばかり抜かれたそれに焦り、恥を忍んで海は赤い顔で数回腰を揺らす。しかし背後から伸しかかり表情が一切わからないリヴァイに囁かれ、冷たい声調と彼がその程度の律動で許すはずがなく。

「どうした。それで終わりか?」
「っ、…… 〜〜!」

 繰り返される容赦ない責め苦に海は堪え切れずにその目に大粒の涙を浮かべていたが、このままでは苦しくて仕方がない。観念し、ゆっくりと律動を始めた。

「んぅ、ああ……っ。あ、あん……」
「あぁ、そうだ、それでいい……」

 無意識のうちに腰を揺らして彼を自分が感じる奥のいい場所へと当てて。それはいつも彼が的確に探り当てるよりも早く。
 リヴァイは恥ずかしさも忘れて腰を振る海の肩や背中を撫でながらうつ伏せ状態で重力に従い下を向いていた両胸を柔らかく揉み上げ、器用に背後からの交わりで容易に届く上壁を突き上げて普段とは違う背後からの交わりの強い快楽にただ、身悶えた。

「ん、ひん……っ……あっ、気持ち、い……あんっ、ひぅ……」

 暫く観察し、海が身悶える場所を全て把握すると腰をガッチリと掴んで、と引かれた腰が戻ってくる瞬間を狙ってリヴァイはタイミングよく勢い良く腰を突き出したのだ。

「ぁっ、ひ、っあ……!? きゃ……あっ、ああっ……!!」

 ビクン、と背中を反らし腰だけを突き上げたまま、いいように揺さぶられてしまう。いつもは穿たれた場所からじわじわと広がる快楽も、今日は何故かその場所だけに止まり更に強い快感を生んで。
 自分が今達しようとしているのか、それとも既に達しているのかも分かない。自分では制御出来ない快楽が恐ろしく、彼の腕で帰られた自分の身体にただ涙を流した。
 何度挿入されたかもう分からなくなった頃、胎内で暴れていたリヴァイが硬直し、ドクンと大きく腰が跳ねた。

「っ、――うっ……ン、」

 その衝撃に小さく呻くと、リヴァイは長い息を吐きながら海の中から抜け出した。
 そして、うつ伏せのままシーツに縋り付くように幾度も高みに追いやられて快楽に浸っていた海の手を引き仰向けにひっくり返してそのまま彼女の顔の上に跨ると――。

「口、」
「んむっ、……!んんっ!」

 無言でさっきまで海の胎内を我が物顔で突き破る勢いで蹂躙していた自身を突き出し、そう低く吐き捨てた。
 差し出されたその熱を見て海は涙で大きな瞳を潤ませ与えられるがままにそんなに大きくはない口を開き、彼を小さな口へそのまま受け入れ、そして、

「ン……っ」

 迸る熱、吐き出された彼の白濁とした体液を何の抵抗もなく当たり前のように、受け入れ、口腔内に招いた。

「ンッ……」

 真上から重量のある彼に乗っかられてはどうすることも出来ない、ただくしゃりと髪の毛を乱暴に掴まれ喉を突くように奥をハメられてまるで自分は彼の快楽のはけ口のように扱われていた。
 しかし、苦し気に喉を突くたびに奥で締まるのがまた新しい快楽を引き出すのだろうか。
 ずちゅずちゅと先ほどまで繋がり合っていた時と同じ、粘着質な音を立てて先ほどまで自分の胎内を蹂躙していた熱に何度も喉を押し潰される。
 涙目を浮かべながらも海は決して抵抗をすることなく自分の眼前に伸しかかり腰を突き動かす彼の熱を受け入れたまま涙を流していた。
 ひとしきり彼の熱を受け入れた後、リヴァイの熱がズルンと、抜けていくと、飲み込み切れなかった白濁を零しながら力なくシーツに横たわる裸の海。よく見れば彼の代わりに肩を震わせて涙を流しているように見えた。

「お前は……何で、拒まねぇ……」
「っ、だって……、あの時私を見つけてくれたのは……取り戻しに来てくれたのは……っ、あなたでしょう?」
「海……」

 海は上手く泣けない彼の代わりに涙を流し訴えていた。
 一人でどうか泣かないで、と。
 同じ痛みを受け入れ共に戦うから、と。
 誰よりも愛しい彼に誓い、死よりも過酷なこの現状を共に乗り切って必ずクーデターを成功させてまたいつもの日常に戻るのだと。
 そしてもう一度二人の壊れた関係を修復しようと縋るようにリヴァイの為に涙を流していた。
 そんな彼女の姿にリヴァイは先ほどサネスが告げたあまりにも残酷な事実、この腹に確かに居た二人の間に残された命が淘汰された意味をとても口には出来ないと尚の事、思う。
 お互いにお互いが言えない秘密を抱え、それでも行為になれば本能をさらけ出しまるで寂しい動物のように求めあうのだ。

「リヴァイは……あなたは、確かに生まれた時は一人だったのかもしれない。でも、地下でも、今も決して一人じゃない……。周りにはあなたを頼り、信頼して助けてくれる人がいる。たくさんの人が、今もあなたを、必要としているのに。なんで……どうして、いつも悪者になろうとするの……!? あなたは、優しい人だって、私は誰よりも知っている、分かる、分かるよ……リヴァイ……あなたがわざと悪役を演じてあの子たちに自覚を、覚悟をさせている。これから人間と戦う、それはきっとこの手を汚すことになるって事、あなたは誰よりも優しくて、仲間を失う辛さを知ってる……痛みのわかる人……だから、もう、一人で何もかも、背負い込んで悪人になろうとしないで……私が、居るから……」

 剥き出しの背中に縋り付き涙を流す海の言葉をリヴァイは黙って受け入れていた。
 言葉が拙い自分はどうしても彼女の涙を止めて安心させてやれそうな言葉が思い浮かばなくて。だから、代わりにリヴァイは己の無力さや吐き出したい熱を全て衝動と律動に変えて、また彼女を求めた。
 後ろから覆い被さる彼の堅い身体を受け止めながら海はそれでも、彼に求められることを止めない。涙を流して受け入れ、彼を拒まない、それが自分の彼への愛なのだと示した。

「ん……っ、ん、っ、」

 彼が次に挿入してきた場所は先ほどまで繋がり彼の白濁を受け入れた膣口ではなかった。
 ビクリと震えながらも海は本来使う用途ではない部分。彼に幾度も吐き出された膣口を濡らした愛液をたっぷりまとった指で本来閉ざされた後ろの孔を開くように触れてきたのだ。

「……っ」

 その入り口を広げて、まるで慣らすかのような動きに、海は恐怖を抱いた。
しかし、海はそれを拒むことはしない。彼の指が好き勝手に自分の後ろの孔を蹂躙する。

「っ……んっ……」

 愛液を纏った彼の指がぎちぎちと痛みを伴いながらゆっくりと確かめるように自分の孔に挿入ってくる。正直、痛みが勝り、決して気持ち良さなど微塵も抱かない。しかし、もう自分の身体は彼によって作り替えられてしまったのだ。
もう戻れない。彼を愛すること、痛みを伴うとしてもその痛みさえも、みんなひっくるめて彼を受け止めたい。
 一度自分は誤ってしまった、自分のせいで小さな命は淘汰され、そして、彼と離れる事で彼をより孤独の世界へ突き離したのだ。
 彼をもう二度と、何処にもいかせないように閉じ込めたのは自分自身。

「もう、踏み込んじまった。マトモには戻れねぇな、俺も、お前も……」
「それでも、いい……」

 荒い息を吐きながら彼も苦しいのかそれでも、彼女が誰も受け入れたことの無い孔に自身を埋め込み、これでもうどこにと、誰にも触れさせやしないと。

「んん〜〜……!!」

 堕ちて来い、どこまでも。自分の目の端から溢れる涙を掬う舌がそのまま辿るように、二人は無言で唇を重ね、さっきまでの荒々しい行為とは真逆に優しいリヴァイのキスに狂いそうな心を抑え、彼の言葉を最後に海は余すことなく彼を受けいれそして目を閉じた。

「ふ……っ、んんッ、……ふぁ……っ」
「………ふ、……っん、」

 そのまま、彼の舌が海の口内を暴れ回る中強く吸い上げられると同時に、海の全身から力が抜けてさらに奥まで飲みこんでしまう。
 同じ痛みを抱いて。抱き合う二人はもう二度と、離れられないのだ。
 そして海は後ろの孔でも彼を受け入れ、気を飛ばすことは許されぬまま全身を彼の白濁に染まりながら空が明らむまで無言の部屋で二人は時が経つのも忘れてただ、ただ、無心で互いを求めたのだった。

 2021.07.11
【この「出」愛に悔いは無い】

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