Going Under | ナノ
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【秘蜜】

※蜂蜜を使用しています
※原作通りシリアスなのに珍しく甘いです、夫婦の時間が3ヶ月ぶりなので激甘なのでイメージを壊したくない方もご注意下さい
※何でも許せる方のみお楽しみください


 甘い甘い濃厚なミルク色。その白濁に浮かんだ幻想の中で、茶葉、抽出する苦いこげ茶色の液体に浮かばせた静かに溶けていく媚薬。

 男として、いや、愛する者を持つ者なら性別など関係なく恋しい女に触れたいと思うことは、限りなく自然な欲求だ。男にとってただの欲求を吐き出す一時の感情だとしてもだ。
 忙殺される任務の合間に山積みの書類は一向に片付く気配が無くて。
 ため息と共に休憩代わりに出された紅茶の注がれたティーカップに手を伸ばして口づける。いつもこのもち方を指摘されるが、今更それを正そうとか、どうこうするつもりはない。
 ティーカップの持ち手を持つよりも、こうやって指を使ってしっかり持った方が自分としては飲みやすくていいのだ。地下にいた時からずっとこうしてきた。持ち手にもしヒビが入っていたら落ちてしまうと思うとやはりこの持ち方の方が色々と都合がいいのだ。
 しかし、今更持ち方など、どうでもいい。
 そんな事よりも、男の脳裏に浮かんだのはただひとつだけ、それだけ。

「(オイ、信じられるか……、もう、三ケ月も、海に会えていないんだぞ)」

 机に突っ伏すようにショートスリーパーの男は白昼夢の中でそう思わず呻いていた。日付を確かめるように、指折り数えて待っていたのは愛する人との逢瀬が暫くぶりだという事。
 愛する女性は自分の子を産んだ。そして、今は恋人から妻としてこの壁の国の一番敵国が侵入する海から近い場所にあるシガンシナ区に居を構えてうまれたばかりの娘と死産だと思っていた息子と暮らしているのだ。
 その家族が敵国に脅かされる未来、いずれこの島は戦場になる。しかし、それをどうにかして回避するために自分は三ケ月も会えない日々を過ごしているのだ。
 敵国であるマーレから亡命してきた義勇兵の代表でもある不思議な雰囲気を持つイェレナ達とのやりとり、それから自分達パラディ島との唯一の交流国でもあるヒィズル国との腹の探り合いのような日々。
 和平に向けて敵外国が自分達に抱いているパラディ島の偏見をどうにかして無くさなければならないと言うのになかなか上手くいかない日々にハンジと共に毎晩どうしたらいいのか話し合う日々を繰り返していたら会えない期間はどんどん増えてしまっている。

 非番を利用して会いに行きたくてもなかなかその暇さえも見つからない。
 部下たちも忙しなくあちこちを駆けずり回ってこれからの未来の準備もしているのに自分だけが安らぎを求めてもいいのだろうか、部下を差し置いて自分だけが、そんな後ろめたさもある。
 きっと部下たちはそんなの良いから早く奥さんに会いに行けと言ってくれるだろうが、自分がなかなかシガンシナ区に足を向けなくなってしまっていた。
 心のどこかではきっと自分の妻は自分が忙しくてなかなか帰ってこられなくても急かしたり怒ったり責めたりはしてこないと信じている。
 元兵団の人間でもある彼女だからこそ理解してくれている、その優しさが自分にはありがたくて、そして何よりも自分には従順で、まとわりついたりとか、自己主張もあまりしない。甘えても来ない、そんな彼女が愛おしくてたまらないのだ。

「(あぁ。どれくらい過ぎたんだろうな。……もう、何カ月も、あの子に、触れてなくて。どうにかなりそうだ……、触れてない……どうも、変だ、おかしく……なりそうだ)」

 それは甘美な自分だけが見ることのできる秘密。ふわふわと浮かぶ、小さくて、甘くて、まるで菓子のような恋しい存在。いい匂いのする身体にどれだけ触れていないか。何処をどう触れば、どんな風に染まるか、容易く想像できるのに。突っ伏して物思いにふける日々が増えた。会議中も引き結んだ唇の奥では彼女の愛撫を求めている。

「(溜まってんのか。覚えたてのガキじゃあるまい……)」

 無意識の反応だろうか。たまらず頭を抱えながら男はまた呻くように声を漏らし、そしてしばらく考えた末に自分の上官でもあり、最近やっと自分の置かれている立場を自覚したのか、隻眼になり不便な生活を強いられている現団長の部屋へ向かうと、すぐに休暇をとりつけるのだった。
 彼女の事を気にしないようにしていた。だが、思い立ったらトロスト区の兵団本部を飛び出して馬車に乗り込んでいた。船に乗りそこから更にかつて大勢の仲間達が命を捧げ、自らも全てを賭けて戦ったシガンシナ区へ向かう。
 我慢できない、早く会いたい。そう思い立ったら身体はすぐだった。なんせ、三ケ月も彼女と娘に会えていないのだ。色んな感情が溜まるものだ。男だから、いや、男でも女でも関係ない、愛する人に触れたいと思うのは当たり前のごく自然な欲求だ。
 申し出れば上官であるハンジはすぐに自分に謝罪を何度も何度も繰り返しながら自分が彼女から君を奪ったようなものだと、それが申し訳ないとすぐに詫びるとあるものを自分に渡した。
 聞けば最近マーレの文化がどんどん投入されて忙しいこの島にまた増えた新しい文化、まだ雪の残るこの毎年2月14日は恋人や家族に大切な人に愛を伝える日だと。

 ▼

「リヴァイ兵士長、着きましたよ」
「あぁ。助かった、」
「帰りもぜひご利用くださいね、」
「よろしく頼む」

 かつて奪われた地平、そこは巨人たちによってひどく荒廃しており、整備されても人の戻りも復興も道半ばである。
 いつまた壁を壊されるかわからない、そんな過去の恐怖を思い出してはこの地を遠ざける人間もいる中でそれでも生まれ故郷で過ごしたい人間たちは荷物をまとめ肩身の狭い開拓地暮らしからまたこの地へ戻っていくのだ。
 この未だ治安が万全ではない駐屯兵団や憲兵団達が所属する支部が建設途中である地域に彼女が店を構えるのは内心不安があったが、彼女は見た目は可憐な女性でもかつては自分と共に肩を並べて戦い、過酷さを増す戦場でも臆することなく自分の足手まといにならないようにといつも隣にいてくれたから。
 彼女が店を構え、居住をここに移し始めた時期はお互い納得した上できちんと別れを選び離れていたこともあって、借金をしてまで再建した店兼自宅。
 今更彼女がトロスト区に戻るつもりは無いだろうし、何よりも彼女が巨人共に奪われて無くした故郷が五年の歳月を経てようやく帰って来たのだ、自分以上にこの場所に強い思い入れのある彼女からこの故郷を奪う事はあってはならない。
 理解している。だが、彼女は自分よりもまだ年下で本人自覚は無くとも自分と結婚して皆の前で行った式典では大勢の来賓に混じり彼女の顔を一目見ようと興味本位でやってきた無粋な人間もいる。
 自分の妻としての彼女は、花嫁という美しい婚礼衣装に身を包んだ晴れやかで幸せに満ち足りた顔に映える化粧を施した彼女が普段にも増して輝いているから自分はまるで彼女を見た時、この世のものとは思えない美しさを抱いたし、改めて誰にもその肌を、見せたくないとさえ、強く思うようになったのだ。

「あ、リヴァイ!? おかえりなさい……帰ってきてくれたのね……っ!」

 三カ月ぶりの休暇、ゆっくり過ごしたいと綴った自分の手紙と呼ぶにはあまりにも拙い手紙。無事に彼女の元に届いたのだろう。店の前に行けば看板の前で話し込む最愛の姿があった。思わず声を掛ければ、嬉しそうな顔で微笑みこちらに手を振って恥ずかしそうに俯きがちに歩み寄ってきた。
 しかし、その微笑みの先には、見知らぬ男がいた。

「あっ、リヴァイ、兵士長……おお。すごい、本物だ、」

 自分を目にした人間は必ず自分に対してそう言った。妻の店の常連客だろうか、背が高く自分とは真逆の大きな目に長い睫毛、まるで童話から飛び出して来たような男が何やら親し気に自分の妻と話し込んでいるものだから正直、面白くないとさえ感じた、心底、腹が立つ。
 だが、ここで彼女の店の客人に対してぶしつけな態度を取るのも申し訳ないので一応会釈はするが本心は「面白くない」だろう。
 自分に対しての本物の「人類最強」だと恐れているのか、それとも、その腹の内では自分の妻を口説こうとして居るようにしか見えなかった。
 訓練されても居ないただの復興工事の作業員が、リヴァイの鍛え抜かれた身体から繰り出す蹴りを喰らえばひとたまりもないくせに、もし本気で実行したら目の前の優男の骨は砕けるだろう。

「この人は私のお店のお得意様でね、いつもこの時間帯に食事に来てくれるの、とってもいい人なんだぁ、」
「(誰もそいつについて聞いちゃいねぇんだが)」

 まったく自分の妻は本当に分かっていない。リヴァイは無邪気に紹介してくる妻のあまりの無防備さに、思わずため息が出た。
 この男に見せつけるように今すぐこの場で犯してやろうかと思うくらいに自分の居ない場所でいつの間にか知らない彼女だけの世界が出来ていることに正直面白くないと思った。
 兵団を辞めた彼女と残った自分。お互い「家族」となったが、それぞれ違う道を選んだことで自分と彼女の間にはまた違うコミュニティが増えて、彼女にとっては店の常連やお客様が増えるのは嬉しい事だろう。
 聞くところによると、彼女の店はだいぶ繁盛しているらしい。リヴァイがもしかしたらいるかもと、それ目的に会いに来る客ばかりだと彼女は言うが、実際は彼女目的な男性客も多いと、隙があれば彼女をどうにかする男もいるかもしれないから気をつけろとミカサは自分と同じ鋭い目つきで話していた。
 自分としては、正直男子禁制の店にして欲しいと思うくらいに彼女の店は復興半ばのシガンシナ区では酒も提供する店が無いのもあり、それ目的の男性客が多いのも気に入らなくて、腹立たしくて仕方なかった。
 いくら元鍛えられた優秀な兵士だとしても、所詮女の力がどの程度なものか地下で散々見てきた。

「リヴァイ?」

 さて、彼女と出会った時から何年の時が流れただろう。
 あどけなさが目立っていた少女はいつの間にか女性となり、彼女は子供を産んでからまたひときわ魅力を増して。
 自分とは違う柔らかな肢体や曲線を強調したりとか、そう言う事ではなくて。
 見目が華やかだとか、そう言う事でもない。言葉にするのが上手くない自分だから何とも例えようがないのだが、彼女はただ、かぐわしい程に魅力的だと言う事、もっと、これからもっと、磨かれて綺麗になるだろう。

「あ、そうだ。よかったらこれをどうぞ」
「わぁ、これは何ですか?」

 顔には一切出さないが、そんな複雑な感情を抱えた自分の気持ちを見抜いてか知らないが、男は自分の目の前で彼女に小さな箱を手渡したのだ。
 自分が彼女の夫だと、紙面でも知られている筈だがそれでもこの男は張り付けた様な笑みで自分の妻に贈り物を渡す。

「甘くていいものです、ぜひ、あなたに召し上がっていただけると。紅茶なんかにも合うと思いますよ。焼き菓子とか。ただ、そのまま食べるだけでもいいですし、接客業で喉を使われてますし、ぜひ。いたわってあげて下さい」
「わぁ、嬉しいです、ありがとうございます……!!」

 誰に対しても真面目で優しく人当たりの良さは兵団時代から何も変わらない、彼女は何処に言ってもきっとその人柄で愛されている。
 誰もが振り向くような傾国の美女ではなくともそれ以上の彼女の魅力は自分だけが知っていればいい、普段あどけない見た目の割に落ち着いた声だとか、触れた指先の華奢な中に確かに感じる曲線の柔らかさだとか、そんなもの。自分だけが分かって、理解していればいいのだ。
 嬉しそうにその箱を大事に抱えて見送る彼女の後姿に、思わず拳を強く握り締めていた。そんな優しい笑顔を自分以外の男に見せるなと、そんな邪な感情を強靭な理性で、グッと堪えながら。

 ▼

「ガキ共は寝たのか、」
「うん、最近は夜泣きも落ち着いてきてやっと朝まで寝てくれるようになってね、」
「そうか……店もあるのに、苦労かけたな」
「いいの。あなたの方が大変なんだから。ここにいる時くらいはゆっくり羽目を外して休んで、ね?」

 最近孤児院からこちらに移り住んだ息子と生まれた娘は二階の子供部屋で眠りについたようだ。自分が不在の間、まだ少年ではあるが確実に「アッカーマン家」の血を引いているであろう自分と同じ目つきをした息子が代わりにこの家を守り、生まれたての妹の面倒も甲斐甲斐しく見てくれているらしい。
 何カ月も戻らない自分よりも彼の方が家事も育児も積極的で、さすがに三ケ月も彼女の待つ家に帰らなかったのは申し訳ないと、リヴァイも罪悪感を抱いていた。
 店を閉め、子供達も眠りに落ちて。そうしてやっと訪れた夫婦水入らずの時間。地下街にいた時も、兵団時代も、なかなかこうしてふたりきりになれる時間というのはあまりなかったような気がする。
 だからこそ、こうして二人きりというのは本当に貴重で、その寂しさを心行くまで抱き合い埋めた事を覚えている。
 言葉が上手く話せない自分は結局、愛し合う獣のように彼女を求めて抱きよせた。
 久々に会えたのが嬉しいのか、普段よりも饒舌に近況の話をする彼女の笑顔に任務やら会議やらですっかりと枯れてしまっていたが、ようやく満たされていく。
 彼女が自分に用意したティーカップになみなみと注がれた紅茶と、そして先ほどあの線の細い優男が彼女に普段お店で美味しい料理と笑顔を提供してくれたお礼だとか歯の浮くようなセリフと共に手渡した箱の中身を開けると馨しい香りが漂った。

「何だ、そりゃ、毒か?」
「毒は毒でも猛毒……じゃなくて! もぅっ! あの人はそういう悪い人じゃないったら」

 ん?
 思わずリヴァイはそんな声を漏らしていた。
 自分以外の男性をまるで、庇うような。「そんな人じゃない」と、分かるまでの関係だということだろうか。

「蜂蜜……?」

 コロンとしたいかにも丸くて小さくて女が喜びそうな可愛らしい小瓶には黄金色の輝きが煌めいていて。
 それを明かりに透かして綺麗だと微笑む横顔にリヴァイは完全にいい歳をした大人だと言うのになんとも言えない感情を抱いた。
 3ヶ月も離れて、ここに帰ってこなかった自分が悪い。
 外交やこの島の防衛や新しく入団した兵士たちを鍛えること、最新の兵器のテストなどやらなければならない課題は山積みだとしても。妻を放置しすぎてほら、すぐ悪い虫が集っているじゃないか。
 ――駄目だ。この子は、俺のものだ。誰にも渡さない。俺だけの女だ。
 浅ましさから口にはしないが。行動が、その目が。すべてを物語っていた。
 その押し隠せない目の獰猛さ。愛する人にその目を向けられた女がこれまでどんなときも彼の愛が全てだと受け入れていたのに。拒むはずがなかった。
 彼と3ヶ月も離れて、気が気でなかったのは、自分だって同じ。
 彼に悪い虫がついているかもしれない。部下思いの彼のことだから、それを利用して甘えたり擦り寄る女がいるかもしれない。
 そんな女に彼を、横取りされたらどうしよう。そんな一縷の不安が芽生える。
 リヴァイは紅茶に浮かんだ甘い甘い蜂蜜を美味しそうに口に含む妻の唇を奪うよう、腕を引いていた。

「お前はいつの間にか自分以外の男をそうやって庇うようになっちまったのか? お前は俺の知らない所で、そんな嬉しそうな顔をして、そんな気さくな口ぶりで話すのか?」
「え?」
「お前は、ガキの頃から……無防備すぎんだよ。全く。だから、俺に食われちまったんだ」
「リヴァイ?」

 そしてそれはあまりにも一瞬の出来事過ぎて、彼女の思考が追いつかなかった。
 一体、これはなんだろうと思えば目の前には愛しい人の顔があって。
 気づいた時にはすぐに奪われていた。
 お風呂上がりで、いい香りのする髪を纏めていた髪留めを外されて、彼女の洗い上がりの髪を滑り落ちるようにゴトンと床に落ちた。
 最近マーレから入ってきた人工的な花の香りの香油を漂わせる最愛を引き寄せ、一切目をそらさずにリヴァイは目の前の彼女と向き合った。
 2階にある2人の愛するわが子の眠る部屋までここの声は届かない。つまり、あちらからも届かない。
 そして子供たちは既に深い深い夢の世界。ここでは見つめ合う視線の先には自分たちしか居ない。
 ――まして彼女とは3ヶ月振り。
 止められるわけ、止まるはずがなかった。リヴァイは無我夢中でぽかんと開かれた淡く色づいた唇に唇をそのまま重ねていたのだった。

「おいで、」

 甘い甘い、彼の手招きと言葉が蜂蜜入りの紅茶よりも甘く彼女の耳に浸透した。

 ▼

 まるで、引き寄せるかのように彼女を自分の腕の中に手招いて。衣服を着てもひしひしと感じる逞しい身体が心地いい。
 まるで動物のようだ、しかし本能で相性がいいと感じる。
 見た目や性格よりも、肌と肌の重なった所、触れ合う粘膜の箇所から海とは何もかもが心地がいい。

「海、」
「あなた、だけじゃない……私だって、」

 なんと、求めているのを感じ、そして求めに応じるがままに、腰を浮かせてばかりだった海は自ら自分の目の前で着ていたワンピースを肩から引き抜きそのまま半端にしなやかな括れに引っ掛け露わにしたのだ。
 そして総レースの白いランジェリーがリヴァイの眼前に飛び込んできた。

 まるで娼婦のような。彼女の流れるように自然に下着姿を見せるその潔い、脱ぎっぷり。
 リヴァイはご満悦そうに顎を掴み海にまたキスをした。
 キスと言うよりも、もう口唇ごと食べられてしまいそうだ。

 彼の手つきに、落ちるキス、触れ合う箇所からまるでじんわり熱を持つようにたまらなくさせる。
 自分の手癖にまんまとハメられて。無自覚な色香は自覚ないからこそ男を狂わせる。
 だが、そんな彼女が自覚して自分を誘うようになったらもう本当に拒めない。あどけながった少女はあっという間に女になってしまった。
 最初からお構い無しに、彼女が口にした蜂蜜ごと吸い尽くすように舌を絡めて呼吸さえも許さない。
 これには突然黙り込んだかと思えばいきなりキスをされた海も彼から贈られるキスのその手加減の無さに戸惑いが隠しきれない。ただ、息が苦しい。思わず彼の胸を叩くと、リヴァイはそっと海の掴んでいた腕を離した。
 その腕は彼の手加減なしの腕力により赤くクッキリと指の痕が残っている。

「っ、は……っ、あのっ、リヴァイ……?ど、うしたの?」
「……もう、どれだけお前に触れてなかったと思う」

 そう告げるともう一度海を引き寄せ、ここは店のテーブルだと言うのにお構い無しにリヴァイは海を抱き上げるとランジェリーを奪いさり机に押し倒していた。
 ギシギシと軋む音に年季を感じさせるが味のある海が一つ一つ選んで用意した家具、ここで今日も明日も客たちが食事をする場所で行為に及ぶなど、海はさすがに寝室にと示すが、それでは駄目なのだ。
 引き寄せて座らせ蜂蜜の味の残る唇に甘い蜜を求める昆虫のように舌を激しく絡ませてきた。
 その激しさに飲み込まれて行きそうだ。僅かに酸素を求めてもその呼吸さえも彼は許さない。まるで獰猛な獣に捕食されたような気持ちになる。
 しかし、いくらなんでもここで……。海は目の前で自分を組み敷く彼の上下したきっちり閉めたままの襟ぐりから見え隠れする喉仏を見つめる。
 そしてその目線は真上の彼へ、3ヶ月ぶりの彼を久々に見ることが出来て、改めてああ好きだ、心惹かれる。と、確かにこうなることを望んではいたが、

「あ! だめっ、だからって……ここ……で?」
「ここで……だ。ここで、お前を抱けば、……離れていようが俺の事で頭がいっぱい……だろ?」
「っ!」
「お前は相変わらず……自覚が無さすぎる。駄目だ、」

 かああああっ!っと、音が出そうな程に赤面した海の顔。そのままの勢いで抱きしめると、海は耳まで赤く染まったその耳にそっとリヴァイの唇が触れて。耳の穴にそっと舌がねじ込まれ、粘着質な水の音がぴちゃぴちゃと響いたのだ。

「っ……んッ、あっ! なに……?」
「お前、香水か? 普段と違う匂いがする……お前らしくねぇ匂いだ……」
「あ、っ、そう……?」
「一体どうした、なぁ?」
「っ、んっ……だって、リヴァイが、急に帰ってくるから……三ヶ月も……っ、我慢してたから……」
「そうか、我慢していたのは、お前も同じか、」
「うん……リヴァイも? 私、なかなかそっちに行けないから……あなたが帰ってきてくれなきゃ……」
「他の男に、触られていねぇようだな、」
「……ッ、そんなこと……!! いや、やだっ、あなた以外の人と、なんて、しない。出来ないもんっ……!」

 お互いの指先を絡めながら、当たり前のように、ごく自然な流れで生ぬるい舌が海の耳をなぞる。
 恥ずかしいと顔を赤く染めて俯く海にリヴァイは尚も責め立てるようにキスをする。海の耳に鼻を寄せ、耳の後ろをペロリと舐めると、海は久方ぶりに最愛に触れられたことで戸惑いよりも次第に興奮、背中を駆け抜ける明らかな悦。胸の高鳴りを抑えきれなくなる。

「あっ、はぁっ……! ゃ、あっ、んっ……」
「相変わらず、耳、弱いな」
「あっ……、い、言わないでえっ……ゃぁ……だめ、やめ……て」
「嘘つくな、本当に止めていいのか?」
「ヒャ、っあ……ん……だって、恥ずかし……ぃっ、」

 恥ずかしいと伝えているのにリヴァイはまるで素知らぬ振り。当たり前のように海の耳を弄びながら、下着越しの胸の先端に下着を脱がさずに吸い付くと彼の唾液を吸い込んで染みた部分が海の胸の先端を浮かび上がらせ淫猥に二人の肉体を浮かび上がらせたのだ。

「あっ、ひっ! やっ、恥ずかし……ッ!!」
「あぁ、お前の恥ずかしい部分が丸わかりだな、」

 同じようにもう片方にも吸い付き、ぷっくり主張する両方の胸の淡い先端が膨らんでいる。授乳期を終えたばかりの彼女のまだ張りのある胸はリヴァイを夢中にさせた。
 交わる唇の隙間からとろりと溢れる蜂蜜が海の全ての脂肪をかき集めリヴァイの手の中に寄せた胸の谷間に落ちたのをリヴァイはすかさず舐めとったのだ。たまらず腰を浮かせ両胸を包む彼の手の温度の冷たさに完全に虜だ。

「甘い……」
「あっ、なに……?」

 甘い甘い蜜の味。自分の胸をまるで赤子のように愛撫するリヴァイの舌。明るい場所でそれを見せつけるから恥ずかしくて、海は目を瞑る。
 胸元に蜂蜜を垂らした途端、猛禽類のように鋭い彼の瞳が歓喜と劣情に満ち満ちていくようだ。
 母乳でパンパンだったがしぼんでハリも抜けた海の胸の膨らみに沿って流れた蜂蜜。海の胸のカーブの脇を通ったそれをゆっくりと熱い舌が追いかけるようにさらに舐めとったのだ。
 久方ぶりの行為と甘さにビクビクと震える海の下着越しの胸が見たくて。恐らく自分への期待と自分にガッカリされないようにと、流行りのマーレでお馴染みの下着を身に付けたが、そんな事しなくても何も纏う必要など、何も要らないのに。
 リヴァイは両手で海の太ももの半分まで隠していた裾からレースを捲りあげ、ガバッと眼前に揺れながら姿を見せた形を変えた両胸に釘付けになった。

「あ、あんまり、見ないで……!」
「そう言われると、もっと見たくなるもんなんだ」
「そうなの? じゃあ、見て」
「あぁ――……、恥じらいながら本当は見て欲しいって顔してるお前ほど罪な女はいねぇよ……なぁ、エロい、顔晒しやがって。そんな顔で店に立つのか?」
「っ、ん、……」
「だから……ここ(店)で抱いたら、離れている間の頭の中も俺でいっぱいになるだろ?」
「リヴァイ……!」

 子供を産んでからもう形も何もかも変わったから恥ずかしい。思わず両手で隠そうとした海だがその両手をリヴァイに絡め取られてしまい片手でひとまとめにされると、そのままテーブルに固定されてしまったのだ。
 割れ目からとろとろと蜜を零す秘密の入口を余すことなく見つめるリヴァイに海も腰を浮かせながら期待にまたジュン……と疼いて蜜を溢れさせてしまう。

「お前の可愛いココももう、勝手に勃起してんじゃねぇか」

 皮の中から顔を出した淡い突起を剥いて既にぐっしょり濡れた愛液を指に絡め取り指の腹で転がすと、海は求めていた快楽と痛烈な刺激に淫らに腰を揺らし、突然の強い快楽にリヴァイの指から逃れようと身を捻ったが、リヴァイの屈強な腕から逃れられるはずがない。海の逃げる推し腰を押さえつけ、そのまま剥き出しの処女でも容易に快楽を感じることが出来るクリトリスを追いかけて更に指先を擦らせると海は甘くのけ反った。

「あっ! あっ……だめぇっ、そこっ、あっ、やぁっ、くりくり……っ、したら、んああっ……」
「気持ちいいんだろ、腰を浮かすな。もっと弄って止めてやらねぇぞ」
「あああんっ、いゃあ!!! や!! やああ!?」
「久しぶりにお前のイキ顔見せてくれよ……」

 そして更に彼の指を伝う蜜が増えていく。クリトリスをいじりながら中指と人差し指があっという間に吸い込まれていき、激しい水音が絶え間なく響き恥ずかしくてたまらない。
 まるでこんな他の男からの贈りものなど全部自分が海の全身に余すことなく塗ったくって飲み干してやると言わんばかりに。
 タラタラと瓶を傾けて、海の露になった中指と人差し指を受けいれぐぽぐぽと音を立てる下肢の間にもトロトロな蜂蜜を垂らしてしまったのだ。

「あ、んんん〜〜! 冷たっ、あっ、おかしくなるっ、あっ、んっ」
「どこもかしこも甘い、口直ししねぇとな、」
「んああっ、」

 ずるるっ!!と中指と人差し指を引き抜き海の口に含ませると、自分の愛液とは明らかに違う粘土の甘い味に海はリヴァイのいつも自分の内部を掻き回す「ソレ」を連想させるような口の動きで激しく舐めだした、その顔は可哀想なくらいに赤い。もっと堪能したいが、今夜はまだまだ時間が長い。
 リヴァイは太腿に腕を回すと、顔を埋め舌先で執拗に突起を転がし、内腿に軽く噛み付いて海を高みへ何度も追いやった。
 歯で軽く突起を挟んでそして、舌で飴玉みたいな突起がどんどん硬さを帯びたらまた転がして、ジュルルルルと、愛液を啜り強く吸えば、その度に再び突っ込んだ中指と人差し指をきゅうきゅうとヒクつき、締め付けるのでそのまま残りの指も一気にねじ込み、先ほどよりもすんなり受け入れる海のそこは3ヶ月ぶりでも既に準備万端のようだ。
 それだけでも十分な刺激なのに、剥き出しのクリトリスにぺろりと舌が這わされる。そんなところを直接舐められたらたまらない。
 腰を浮かせて、ぺろぺろと舐め、ちゅうっとキスをされるとまた開かれた部分から愛液がらトロトロにあふれてとまらい。

「んん〜〜ッ、あぁ、あ、あぁ……イっ〜〜っ、ぅ、……!! っ、んっイッ……あああぁッ」
「相変わらず、よく濡らしやがって……グズグズじゃねぇか……なぁ、」
「あああんっ! んあああ〜〜!」

 さっきから舐めても舐めても止まらない。もう蜂蜜の味はしないだがそれでも伝う蜜をリヴァイは、器用に舐めとるが、それでも収まりきれずに溢れた蜜がデーブルに垂れてしまう。

「ふあぁぁぁ〜〜っ、ひ……あぁ………ん……ああんっ、だめ……! テーブルがっ、ベタベタに……なっちゃうからあっ、」
「お前に何のために掃除を教えてきたのか覚えてねぇのか。お前の汚したモンなら……掃除すりゃあいい」
「あっ、違うの、そういう意味じゃ……」
「こっちも、本当は欲しいんだろ?」
「ん、っ」

 見越したように、こんな上半身だけの愛撫だけじゃ海が足りないのを知っていると言わんばかりにリヴァイはショーツ越しに沈めた指伝いにクチャ……とわざと聞こえるように粘着質な音を立てて、満足気に歪んだ笑みを浮かべ、その笑みの妖しさに海はますます下肢の間から愛液を自分の意思ではなく自然に溢れさせてしまう。

「んッ、ひっ、あっ、待って……!」

 直に先走りか自分の愛液、何度も何度もそこを擦られて海は鼻に抜けるような甘い喘ぎ声を漏らしてしまう。

「ひ、ぅっ、あ、あ、だ、めっ、あ、ああ、あぁぁ〜〜〜」

 そう。彼しか知らない、自分の声。
 あまり高くない自分の声が、こんな風に高く歌うように啼く事、こんな声に変わるなんて誰も教えてくれなかった。

「ああぁっ、も、イ、くぅ!! あ、んぁああっ、」

 こんな甘い声を――。親も知らない声を彼に散々聞かせて、巨人を屠る事しか出来なかったそれが自分の課せられた使命だと、海は生きてきたのに。彼に出会い、瞬く間に変えられてしまった。海は物欲しげに脚を擦り合わせた。

「海……」
「は、あっ、」

 まるで、自分が言わないと触らないと。甘ったるい声で名前を呼ぶ彼の目は情欲に染まりギラギラと欲望を携え見つめている。その目に射抜かれるともう何も考えられなくなってしまう――。
 海は自ら彼の目の前で淡い媚肉を晒したのだ。
 そこはもう彼の目で見てもわかるくらいにテラテラと明かりに照らされ、濡れていた。

「ここも、あっ、触って……リヴァイ……」
「……は、はは、あぁ、お前な……本当に……お前ってやつは……ああ、クソ、……もう……我慢出来ねぇ……お前のナカに……入れてぇ」

 あなたは何も分かってない。分かっていない。あなたの頭の中を私で満たしたいの。それは本当は私の方。あなたの周りに近づく女の兵士や貴族のご令嬢、私がいない間にその隣を虎視眈々と狙う女の影をみんな、みんな、叩き伏せたいの。
 肯定の代わりに海の脚が鍛え抜かれた鋼の身体を持つリヴァイの屈強な細腰に絡んだのを合図に、リヴァイは蜂蜜をもっと利用するのに適した箇所を見つめながらも堪えきれずに一気に本能の土壇場で完全に今のあまりにも淫らな海にいきりたつ自身を思い切り……。

「ひ……!」

 ぐちぐちと秘部に擦り付けられる自身。傘を張った彼の亀頭が何度も何度も秘豆を往復し、そして。

「オイ、知ってるか? 海よ」
「ひっ! んっ、」
「聞・け・よ……なぁ?」
「んっ! ん〜〜!!」
「蜂蜜は喉にもいいらしい、ガキ共は2階の離れでおねんね中だ、夜泣きしてもあいつがいるから平気だろ。だから、普段我慢させてる、分、な、声出しても、いいぞ、今夜は」
「あっ、んあああ〜〜!!」
「またいつ戻って来られるか分からねぇから、いい声、土産に聞かしてくれよ、お前がいない間もお前の可愛い声を覚えられるように頼む」

 愛液を纏った彼の熱に蜂蜜みたいに甘い声が声が漏れた。ぐぷぷぷぷぷ……ッ!と音を立てて彼の屹立が挿入される。
 いつも散々胸をいじめて下半身がマグマみたいにドロドロになって。それからたくさん恥ずかしい言葉を口走らせておねだりをさせてやっと挿入れてくれるのに。
 彼も焦がれていたと思ってもいいのだろうか。受け入れる熱を甘く締め付け海はまたぶるぶると、生まれたての調査兵団が乗っていた馬の子のように足を震わせた。

「んん〜〜……あ、〜〜ッ!!」

 3ヶ月誰も受け入れてないそこはまるで処女のように元々筋肉で出来た膣口は広がって彼を締め付けながら招き入れた。
 途端、海はそれだけで気持ちよすぎて、期待した以上の快楽に腰を引き軽く星を散らして達してしまったのだ。

「もう、……っ、イッちまったのか?」
「あ、あ、あっ……」

 来る、来る、もう駄目。ずろろろろ……と抜かれる自身、そして――

「オイ、寝るな」
「ひっ、んっ! ああっ〜〜! んん〜〜!!」

 ズプンッ!と熱が再び押し込まれ、ここにちゃんと挿入ってるのが分かるように、背丈は成長期なのもあり長身ぞろいの兵団内部の中で逆に小柄で一際目立つ彼の背に見合わないそこはしっかり成長した質量に三ヶ月ぶりの海の腟内は喜んで。
 彼が律動する度に愛液が掻き出され、耳で直に聞くに耐えない卑猥な水音が普段はお客さんや、料理の音で和やかな空気で満ちていたお店の中に淫猥な空気をもたらす。

「ひんっ、あ、イクぅっ〜〜!!」
「は、気持ちいいのか?」
「ぁ、もう、何もしちゃ、だめぇっ、ぜんぶ、イっちゃう、からぁっ!」
「それは無理……だな、」
「んん〜〜!」
「ここで止めていいのか?」
「あっ、ダメっ、……やめ、ないで……」
「あ?」
「つっ〜!! やめないでっ!」

 普段貞淑な海からの懇願するような締め付けにリヴァイは腰から下を震わせそっと瞼を伏せた。圧迫感を感じ、身体がびくびく震え、きゅうきゅうに締め付けられた自身に、気持ちよさからリヴァイも、声を漏らした。

「ひ、うううんっ、んあ〜〜あっ!!」
「ああ……、入っちまった……ッ、お前のナカに、収まっちまった」
「ひ、あっ、あっ……」
「っ、何、軽く気やってんだよ、勝手に気持ちヨくなってんだよ、お前はっ、」
「んん……あっ、あっ、」
「海、動くぞ……」

 ギッ、ギッ、と彼が自分の両足を肩に抱えると膝に彼の口付けが落ちた。
 そのまま真上から叩きつけるような律動を開始して、二人分の重みを受けながら誰もいない空間に響き渡る濁音が耳を汚した。

 ――どちゅんっ
「ひぁ、んううぅッ」
「んッ、……っ、」
「ふあぁ……っ! あ、あ――ッ! んあ、あっ……!」

 このまま二人分の重みを受けテーブルが真ん中から壊れそうな勢いで早く速く早く的確に、どうか誰も来ないで。誰も来ないのに、こんな姿、誰かに見せられたものでは無い。
 全身蜂蜜塗れの自分。リヴァイは服をぴっちり着込んでいるのに。ちぐはぐなギャップ。
 誰も見ないで欲しい。そう祈りながらも、快楽にすっかり飲み込まれた自分は真上から貫かれる熱にどうしようもなく溺れた。

「んぁ、あっ!! 〜〜あああァっ!!! ひっ! だめぇ、っ、あっ、んアッ!」

 気持ちいい声が止まらない、感じたらダメなのに、もう、自分の真上から叩きつけるような一突き一突きが重い律動に揺さぶられて。
 泣きそうな顔で快楽に溺れる海の痴態にリヴァイもずっと忘れていた久々の悦楽に感じ入りフー、フー、と荒い息を漏らして律動を続けている。

「はっ、んあっ、やめないで……っ、あっ、」
「言われなくても……途中で止めないから安心しろ」

 付かず離れずの距離で揺さぶり続ける目の前の彼が愛おしくて仕方ない。
 たまらない。海も彼の律動に合わせて腰を振って奥の子宮口の入口に彼の亀頭を宛ててしまうのを止められらない。
 ――自分よりもずっと年上で、大人の人で、きっと自分とはしなかったことを他の人と重ねたかもしれない。抱いた女は数知れないかもしれない。だけど、彼の心からの愛を得たのは自分だけだと、自惚れていたい。もう止められない。
 彼の真下であられもない姿を真っ白な喉を晒し海はそれでも与えられ続けた快楽に完全に理性というものを、普段見せない顔を彼に暴かれてしまう。
 彼の前で、自分はただの、生身のオンナだと言わしめるように、律動の度に揺れる胸の谷間を寄せて、再び彼の顔が埋まると、リヴァイは蜂蜜よりも甘い両胸の突起を転がしながら何度も何度も硬い熱で海の下半身を突き刺した。
 硬いテーブルに打ち付けられた腰が擦れて赤くなると今度は海を抱き上げて背後から交わる。
 また向き直り彼の肩に乗せられた膝がガクガクと律動の度に揺れ何度も跳ねて天井に向かって蹴りあげながら、ついに絶頂を迎えると、ピンと足が伸びて。
 もう何も考えられなくなる。
 知性のあるいい大人が、――馬鹿になってしまう。

「ひっ…!! あぅ…ッああぁっあっ…あ〜〜ッ、ッ」
「っ――……クソ、」
「…っ! ン…っ! やぁ、らめぇ…っあぅ…ッ」
「あぁ、いいぞ、イケよ、海」
「あああっ! んあああっ!」

 海が果てても、それでもリヴァイの腰の動きは止まらない。ビクビクと震える海の身体を押さえつけリヴァイはそれでも止まらない。
 なんせ、三ヶ月分。
 またいつ帰ってこられるか分からないと思うと尚更傍に居てあげたくて、そしてうねるように締め付ける海の熱に腰の疼きが止まらない。
 傍らに転がった蜂蜜が詰まっていた瓶がいつの間にか傾いていて、そのまま手を伸ばさないと落ちてしまう。
 しかし、それよりも。もっと目の前に甘いものがある。
 構うものか。リヴァイは、その瓶を煩わしそうにたたき落とし、落ちた瓶はそのまま重力に従い、床に粉々に砕け散ったのだった。

「まっ、あ……んんっ!? イってる、から、イってるのっ! まっ、ふあっ」
「俺はまだイってねぇ……、ほら逃げるな、って」
「あ……っ! ア、うあ、ん! ひ、まってっ、ん」
「待てるか……あっ、――はっ、イク、……ッ――!!」

 何度目かの律動の後、行き過ぎた絶頂にガクガクと震える海の下肢の間から収まりきれなかった互いの混ざりあった体液がトロォ……と溢れた。
 彼のものか、それとも自分のものか。もうどちらかの境目も分からないまま中に吐き出された熱をギュウと閉じ込め恍惚とした表情で見つめる海の目を見つめ返しながら、二人は深く舌を絡め抱き合った。

「海。いいか、一滴も零すなよ、零したら、またここに注ぐから、いいな?」
「あ、……ひ、はい……っ、」

 珍しく激しかった行為の後で、前髪に張り付いた黒髪を乱したリヴァイの目がまだ獰猛さを失っていないようだった。
 二人共まだ息を整えてる途中だと言うのに。リヴァイは足りないと。耳をかすかに澄ませてやっと聴こえるような声音でそう、呟くと、海は、本気かと青ざめる。
 久方ぶりの行為でだいぶ体力を奪われましてや65キロの重みにさっきからのしかかられて、余すこと無く彼の眼前で肌を晒されているのに。
 ミチミチと3ヶ月誰も受け入れていないそこは狭くキツく、そしてナカに埋まっていた彼の熱がまた徐々に質量を増していくのを肌で生々しく感じて締め付けた。

Fin.
【秘蜜】

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