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【いつか二人で】

 エルヴィンが負傷した事によって、その責任の矛先は残された幹部達に向けられる事となった。
 新しい調査兵団の新体制、ニック司祭や今回明らかになったクリスタ・レンズ改め、ヒストリア・レイスの処遇やエレンを何としても失う訳にはいかない。
 壁内は今、第二の壁破壊の混乱と恐怖により大いに荒れていた。

 この混乱の状況に便乗して山奥の小屋に隠すことにし、海も処置を終えてすぐにでも隠さねばならないと、今調査兵団のトップとして残されたリヴァイとハンジは調査兵団の班員たちを2分割してだだっ広い荒野のど真ん中で今にも掻き消えてしまいそうな勢力を何としても守ろうも奔走し、寝る間も惜しんで疲弊していた。

 おかげでハンジは既に寝不足だ。
 リヴァイもほとんど寝ておらず、普段にも増してその鋭い双眼の目の下のクマはより深く刻まれている。

「あっ!いた!!
 ねぇねぇリヴァイ〜!」
「うるせぇな、何の用だクソメガネ、さっさと寝ろって言っただろ」
「ああ、それならもう寝るからそんなに怖い顔しないでよ!海は元気かな?手術も終わったんだし、つれていく行く前にゆっくり会いたいよ」
「...ああ、そうしてぇのは山々だがお前もここんとこ寝てねぇだろ、少し休め。それからでも遅くはねぇ。幾らでもあいつに会わせてやる」
「しっかし...リヴァイって本当に海の事好きなんだね。絶対に誰も入れたりしなかったのに、自分の部屋に囲って、しかも外鍵まで掛けちゃうなんてさ、私だって海とあれから会ってないから心配してるんだけど...」
「そうだな...、」

 廊下を歩くリヴァイの足取りは決して軽くはない。ハンジよりも小柄で、細身に見えるが、多くの者たちの死を見届けてきたその背中には数えきれない多くのものを背負っている。
 そんな彼を癒せるのは、きっと海だけだろう。
 人類最強と呼ばれる男が唯一愛した存在、どこにでもいる優しい笑みの、いつまでも穢れを知らない少女の
 ような...、

「ねぇ、」
「何だ」
「いやぁ、ちょっと野暮な事聞くけど、」

 ハンジは純粋にあるひとつの疑問をリヴァイに問いかけた。

「海ってさ、鼻の手術終わったばかりでまだ回復途中だけど、まさか...もうセックスしてるの?」
「...いきなり何言いやがる。クソメガネ。こんな真昼間にするような質問じゃねぇぞ...」
「いや、だって…、あのリヴァイが、こうして人に触られるだけで嫌な顔する潔癖のリヴァイが、」
「だからって触ってんじゃねぇよ、クソが」
「ほら〜!私がちょっと髪触っただけなのに!地下に居た時も娼婦のお姉さん抱く時そうやって冷たくあしらって自分は出すもの出せばそのままサヨナラして何人も泣かしてたんでしょ?」
「海と出会う前の話だ」
「人類最強という名の通り絶倫そうに見えるけど色仕掛けやら女の誘惑とかに無反応のリヴァイが、性欲とかと無縁そうなリヴァイの恋人が同じくそういう穢れたものとは無縁な、選んだ子が調査兵団の可愛い天使の海だとは思わないよ!」
「あ?天使だ?どう見ても天使の顔した悪魔だろうが」
「止めて!聞きたくないよ!いいかい、あの子はね..小さい頃からずっと調査兵団でみんなで親のように成長を見守ってきたんだよ...将来誰と結婚するのか、エルヴィンの周りをちょろちょろウロウロして、本当に可愛かったのに、それが...大人になった瞬間、まさか地下街のゴロツキと恋に落ちるなんて!!」
「悪かったな」
「あああ!当初の話ね!いまも殆どあの頃の生き残りなんて今はもう居ないし…そりゃあ、当時はみんな落ち込んだんだよ。海のお父さんなんか泣いてたよ、海にはまだ恋なんて早すぎると思ってたって、」

 リヴァイは納得していた。
 だから調査兵団に下る形で身柄を預けられた時、自分達は全くと言っていい程に歓迎ムードじゃなかったのだと。

 確かに海は明るくて優しくて人当たりもいい。あの様子じゃ幼い頃の海もそれはくりくりした目がとても可愛らしい子供だったのだろうから。
 そんな子供の海を自分は...。
 まだあどけない少女の海を、

「海はあのままで、いつまでもいつまでも微笑んでいると思ってた。エルヴィンが好きなのはあの頃の年代の女の子ならよくある年上の男性に〜的な事だと思ってたし」
「エルヴィンか、」
「それに、あの子はその…両親がああだから、誰も迂闊に近付けなかったし、そういう事とは無縁な子だとずっと思ってたのに...、まさか、地下街でリヴァイと知り合っていつの間にか...ああああ、」
「合意の上のそれがいけねぇのか」
「止めてよ!海をそういう目で見たくなるじゃないか!あんないたいけな女の子を...やっぱり、いいの?」
「馬鹿かてめえ、なんでいちいち教えねぇといけねぇんだよ」

 「あっ、リヴァイ?さん?あの、?」

「止めて!痛...、っ、や、っ、あっ、痛い、よっ…!」


「ねぇ!海を初めて抱いた時の事って覚えてる?」
「声がでけぇな...お前に関係ねぇだろ。もう随分と昔の事だ。覚えてるわけねぇだろうが、」
「えー!聞きたい!ほら、私じゃ海の事抱けないし、想像だけでもさせてよ」
「おいクソメガネ、お前のくだらねぇ妄想に海を巻き込むんじゃねぇよ」
「え〜いいじゃないか、思うのは自由でしょ?」

 しかし、ハンジはリヴァイの言葉を聞かず、尚も興奮したように捲し立て、しゃべり続ける有様だ。

 海の行為特有の甘い声や、柔らかな肢体や、長い髪を振り乱して赤い顔で身じろぐその痴態を教えてくれと、興味津々に鼻息を荒くしてリヴァイの肩にしがみついている。

 そして、今いる場所が兵団の廊下だというのにも関わらず、ハンジのその声は寝不足も相まって元からのテンションと共にボリュームも上がっていく。

「海を抱いた時は!?
 あ!海はもちろん初めてだから痛がったんじゃないの?可哀想に...まぁ、激しい訓練してるから処女膜破れてて処女でも痛がらない子も稀にいるけど海はきっと痛かったよね、あ!血も出たかな?あ、処女だったら快感なんてまだわかんないよね、」
「...」

 リヴァイは沈黙したまま前を見据えて歩いていた。
「(まさか、ハンジには言えねぇ。
 あいつが処女だと知らずに最後まで...やっちまった…)」。
 俺は海の親に殺されるかもしれねぇな、

 だんだん抱く度にあいつは女のカオして、

 「あ...んっ、」

 両足の間に埋めてた顔を上げれば酷く淫猥に乱れたあいつの顔があった。
 恥ずかしいと泣き叫びながらそれでも無理矢理抑え込んで、柔らかな肢体を持ち上げて、たちまち濡れちまう。

 そのうち悲鳴がもっと、もっとと、俺を欲して淫らに誘う。

 「はぁっ…いやぁぁ…やん…はぁっ…きもちっ…いっちゃぅぅ…はっ…いっちゃぅぅう…」

「ああっ!やああっ!も、ああっ!」


 ダラダラ上の口も下の口も濡らして、
 求める頃にはもう...
 ああ、たまらねぇな、

 五年間の空白がやっと埋まったような気がした。
 もう若くもねぇのに10代のガキ以上に目の前の女を欲して止まないのだ。

 小さな身体は簡単に持ち上がるし、無駄な肉のない、しかし、筋肉もあるはずなのに柔らかな肢体は簡単に思い思いに動いて。

 ゆっくり顔の上に乗せて。舌でつついてやれば海は甘く身じろいでまた果てた。

「なぁ、海...」
「ん?あ、リヴァイ...お帰りなさい...」

 シーツを裸体に巻いただけの海はドアが開かれると嬉しそうに目の前の疲れきった顔をした男を迎えた。

「このまま、こうしていてぇ。お前と離れずに済むのなら...」
「え、あの?」
「海...、」

 なぁ、海。
 お前はどこにも行くなよ。

「愛してる」

 こんな単語を、こんな陳腐な言葉を自分がまさか使う日が来るなんて。
 シーツを奪えば着る服も奪われ、どこにも行けるはずも無い、剥き出しの素肌のままの海を再びベッドへ押し倒していた。

「んあぁん…はっ…ぁっ、あっ、」
「海…、」
「…ぃ…あっ、…あぁっ…はんっ…」
「声は我慢しろ、まだ病み上がりなんだからな」
「つっ、じゃあ…こんな事するの…は」
「そうか、止めていいのか?」
「あっ…!やめ、ないで…」

 駄目だ。まだ足りない、離れ離れだったこの永遠のように長い5年間。
 全ての空白を埋めるかのように男は幾度も海を抱いて、抱いて、抱いた。
 独り身を持て余した彼を手招く、男のその手は幾度も女に誘われた。
 そう、幾度も。

 華やかな光の中で微笑む女たちはこぞって「人類最強」の名を求め、欲していた。
 しかし、男は全てを拒みそして最愛の今自分の真下で甘く身じろぐ声の元に操を立てたから。
 海のくれた思いが永遠に生き続けていた。こんなにも「愛おしい」と深く思う感情をくれたのは。

 こんなにも心をつかんで離さないのは海の存在、ただ、それだけ。だと。

 思い出だけは誰にも奪えない。
 今まで失い続けてきた人生の中で唯一奪えないものがここにある。

「海…」

 もし、たとえこの命が永遠に失われても、もう二度とあの時の心奪われる瞬間など永劫に訪れなくていいと感じていた。
 いつか終わる世界で、静かに終わりを見つめてあたい。
 弧を描いてこの狭い壁を越えて、そして何処までも飛んでいく番の鳥は生涯寄り添い、決して離れることはないのだから。

「こいつがどう感じて、どうなるか…お前には到底教えられねぇよ、ハンジ」

 清楚な雰囲気を纏うあどけない少女を女にしたのは自身だけ。
 この小さな手を誰にも触れさせはしない。
 男は喉を鳴らしてようやく満たされたと、満足そうに微笑んだ。

 Fin.
 2020.01.30
【いつか二人で】

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