愛し方さえも分からずに | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

「2th.secret クリムゾン・ヘイト」


「ハッ、…
1人の女に寄ってたかって阿呆のクソ虫共が…」

木に凭れ、男は少女がこの森に迷い込んだ事を既に掌握済みだった。
人の気配、空気の微かな変化すら研ぎ澄まされた五感の手中に。
そう、つまりそう言う事。
彼女が先程見た紅い閃光は彼の双眼だったと言う事だ。

自分の庭と言うこともあるが、まさか迷い込んだのが少女とそして無意識に彼女の纏う"何か"が、引き連れてきた自分達を狩る側の人間・ハンター共だと。
しかし自分は…正当な血を持つ純血のヴァンパイア。
気配を消したまま夜の闇を舞い姿を見せた男はマントを翻し一瞬にして鞘から愛刀を抜き一閃した。

「?」

しかし、尋常ではない早さで繰り出された刀と左手の鉤爪と右手のカタナと呼ばれる細身だがそれなりに重量のある武器からの抜刀術に男達は気付き知る余地もなく久々にありついた女・まだ幼いウミに群がっている。
その男…アルベル・ノックスには存在しない女に触れたい、性的な欲を満たしたいと願う汚らしい欲望。それすら、あまりにも阿呆らしく感じられその代わりに強さを求める欲望へと昇華し続けていた。

誰に対しても不愛想で傲慢で、その裏に癒えぬ傷を左腕の重鎧のガントレットに隠していた。

「ぎゃぁぁぁー!!!」

その中で急に雄叫びを挙げ屈強な独特の腐った体臭を漂わせた男が倒れてきたと思いきやその後すぐにブシュゥッ!!と勢いよく不意にウミに覆い被さっていた男の腕から夜闇に真っ赤な鮮血が天高く吹き出し周囲に散ったのだ。

「…!?」

「何だ、コレ…」

「おい、まさか…」

男達にべったりとこびりついた粘りけのあるソレ、鉄を含む独特の香りに切りつけられた男は醜い雄叫びを挙げた。

「ぎゃぁあああー!!」

周囲を見渡すも再び素早く闇夜に紛れた彼を肉眼で捉えることは不可能だ。
不意打ちを嫌う強い者を追い求める彼の領域を侵した罪は重い。
彼は今、相手にすらならない阿呆な弱者しか居ないことに強い者を求めるフラストレーションが溜まっていた。

「ぶっ殺されたくねぇならさっさと退きやがれ。」

そして、マントを揺らし。
漆黒のマントに隠された甲冑に覆われた左腕のガントレットに飛び散った血を舐めるも美味いはずがない、苦みを残したその味に…男は眉間に皺を寄せその姿を見せた声を発した。

「テメェら、俺の庭で何してやがる。
阿呆、力付くで女を無理矢理襲ってんじゃねぇよ、」

「…!!」

不意に響いた低く何処かクセのある声が森に響き風が全てを浚う。
風に流された雲の隙間から月明かりが射し込み…姿が露わになる。
男の肩越しにウミも引き裂かれた衣服を押さえその男の姿をまじまじと見つめた。

そして、見せた意外な人物にハンター達は恐怖に戦慄いた。

「…おい!こ、こいつは…!」
「あぁ…ま、間違いねぇ!!」
「あの左手のガントレット、まさか、歪みのアルベル…!!!!」

見開かれた紅い双眼を覆う漆黒から金へ、グラデーションを描く髪。
整った男らしい容姿、マントに隠された長身の鞭の様に引き締まったしなやかな筋肉に左手全体を覆うガントレット。

強者との戦いと強さを追い求める鬼神、そして歪(いが)みのアルベルと称するに相応しい出で立ちと姿からは何処か艶めかしい色香を感じられた。





prevnext
[読んだよ!back to top]