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「1th.secret 紅の再会」


自分の姿さえ見えない、真の暗闇に閉ざされた世界の片隅にただ助けを呼ぶことさえ出来ない自分。

「…っ…きゃぁああ!」

不意に遠くの背後から聞こえた狼か…獣の唸る様な遠吠えにウミはカタカタと小さく身を震わせとうとう腰を抜かしてしまった。
顔はもう見えざる恐怖からか、ぐっしょりと脂汗が浮かんでいる。
不意に空を漆黒の影が舞った様な、そんな気がして振り向きたくても後から蝕む恐怖がそれを許してはくれない。

歩いても歩いても一向に見えない街の街灯すら奪われた世界で…不意に肩を叩かれ暗闇の向こう側で赤い光が見えた気がした。

「…っ!!」

あの光は…

なに???

何!?

まさか、…狼?
一瞬で背中を寒気がウミを駆け抜け恐怖から慌てて来た道を戻ろうと振り返れば其処にいたのは…

「お嬢ちゃん気分が悪いのか?」
「ー…!」

得体の知れぬ恐怖とはまた違う恐怖が彼女を待ち受けていた……

背後に感じた気配に振り向けば下劣な、汚らしい風貌をした小汚い男達が複数彼女の周りを取り囲んでいたのだ…

とくとくと迸る本能が警告音を鳴らす。
逃げろ、と。

しかし身体は言うことを聞かず情けなく震えるだけ…もっと早く気付いていれば…森に迷い込んだ自分が恨めしい…

「1人でこの森に迷い込んじゃったんだね?」

「かわいそうに…着いておいで。俺たちが出口まで連れて行ってやるよ」

しかし、それが嘘だと言う事など手に取る様に分かる。

「…っ!いや!!」

怖い…怖い怖い怖い!!
誰か、助けて!!
たまらず引き寄せられた手を振り切るもそれが逆に男達の行為をますます過剰にエスカレートさせる事を知らない。

「てめぇ…引っかきやがったな!」

「っ…あ、あぁっ…わ、わたし…っ…」

ふらふらと覚束無い足取りで逃げ出そうとするも味わったことのない危機感・恐怖からか全く力が入らない…

素性も知らぬ男達に囲まれる経験など今までこれまで皆無。
呆気なく囲まれそのまま茂みに突き飛ばされ鈍い痛みが全身を容赦なく襲う。

「このクソガキ!俺達を誰だと思っていやがる!!!」

「しかし…暗くて顔が見えねぇのが残念だな…」

「なぁに、ヴァンパイアの生き残りの可能性は低いんだ、身ぐるみ剥いじまえば女だ、」

「っ……!」

「待てよ、たまには俺が先に…」

わなわなと噛みしめる口唇が震えている…助けを呼ぼうにも最早、振り絞った喉からは嗚咽が漏れ、恐怖から逃れる叫びは声にすらならなかった。

「…ッ――――!」

ピチャリ。
不意に、首を掠め鎖骨を這った生温いそれにウミは必死に暴れるも両手足を屈強な
…吸血鬼狩りを生業とした男供に無理矢理開かれ押さえつけられてしまう。

「っ……!」

華奢な身体をぶるぶると震わせ後ずさるもこのままでは…そんなの嫌だ、こんな形で…
顔も見えない男達に怯える1人の小さな少女に男達はますます煽られた。

「静かにしろ…殺すぞ!!!」
「ひッ…!」

「可愛い声だな、ヒッヒッヒッ…本当に顔が見えないのが残念だ」

―必死に逃げだそうともがくウミに男は容赦なく彼女の頬を殴り飛ばし着ていたマキシ丈の緩やかなワンピースを引き裂いたのだ、

闇に散る赤い花弁の様に…引き剥がされた衣服にウミの身体は痙攣したかの様に激しく震え出す。

そんな光景をー…1人の男がウミに寄って集るクソ虫螻を見下す様に紅い瞳が射る様に睨みつけて居ることなど…

「ハッ、…
1人の女に寄ってたかって阿呆なクソ虫共が…」

「ぎゃぁぁぁぁああ―!!!」

誰が知るだろう、
気配を消したまま夜の闇から姿を見せた紅色の双眼を持つ男はマントを翻し一瞬にして刀を抜き一閃した。





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