愛し方さえも分からずに | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

「20th.secret Dearest-HEROIN-」


私達は結ばれないと知りながら出会って…離れた数だけお互い見えないツタに絡み取られてしまった。

もう、手遅れだったの…?

アルベルさんだけは巻き込みたくなかった、
私が大人しくこのまま世継ぎを産む為に生きているのならその通りに義父が決めた相手と婚約していれば良かった…。

今はもう、私には後悔だけ。
この手のひらに舞う雪の様に儚く散った思いに強がりな嘘を付いて覆い隠し静かに降り積もってゆく…

それでも、未だ貴方を忘れることができない私を許して…

私たちの間には壁があって愛してるさえ言えないけど、

それでも、私は貴方を愛している。
ずっと、ずっと…




「ラルヴ、久しぶりだな?」

そして馬車から義父の後を続き姿を見せたのは…
私より遙かに大きな背丈に年を重ねた静観な顔立ち白金色の髭に生え際まで生えた髪型をした男性だった。

「ヴオックス…!」

その瞬間。滅多に怒りや激情に駆られた表情を見せないラルヴの表情が一気にアルベルさんと同じく憎悪に満ちて居た事に気付く。
いったい…その名が意味するものは何だと言うの?

私はその白金の赤い衣服に身を包んだヴオックス公爵と呼ばれた男性を見上げる。
その青い瞳からは酷い、それはまるで…危険な何かを感じた。
アルベルさんとは違う…この人は普通の人間で吸血鬼の狩人なのに、うぅん、吸血鬼よりも私達人間の方が醜いのかもしれない。

吸血鬼は血を食らうだけであり危害を加える様な事はしない、でも人間は平気で嘘を付けば金がなければどんなこともする、…お金が全ての世界。
貧困は後を絶たない、人はお金で人生も幸せも決めつけてしまう。



「…お久しぶりです、公爵閣下。して、御主人様、なぜ狩人の"疾風"の団長様がわざわざこのような辺境の土地に…?」

ぼんやりと彼の吸い込まれそうな毒を孕んだ瞳を見つめている私にラルヴは丁寧な口調で笑みを浮かべて居るもその鋭く赤い瞳には明らかに嫌悪の眼差し、それが惜しげもなくヴオックス公に向けられている。

ヴオックス公もその視線に気付いているだろう、不適な笑みを浮かべ互いに睨み合う緊迫した状態だ。
ラルヴが左胸の懐に手を突っ込み何かを考え込んでいる。
恐らくその左胸の懐には…

「ああ、彼は昔からの知人でね、私の娘の写真を見せたら是非お会いしたいと嬉しい声を掛けていただいて…」
「何…!?」

それより先に反応を示したのもラルヴだった。
まるで、この目の前の男性を完全なる危険人物だと見なしたかの様に。
私を心配そうに見つめまたヴオックス公と睨み合う中でお義父さんが怪訝そうに仲裁に入りラルヴを叱りつけた。

「何だ、ラルヴ、先ほどから仮にも私の客人に…ましてや私の娘を街中に連れ回すとは…お前はウミのボディーガードだろう?」
「…申し訳、ありません。
処罰なら何なりとお受け「やめて…お義父様っ…街に出たいと我が儘を言ったのは私よ、ラルヴは悪くないわ!」
「お嬢様…」
「…む…」

義父に責められるラルヴの前に仁王立ち思い切り両手を広げて彼に眼で合図すればラルヴも静かに頭を深々と下げる。

お義父さんは私に甘い、根負けしてその口を閉ざしてくれた。
良かった…、だって彼には何の罪もない。
そう、全ては…

「たかが執事一匹を庇うとは…貴方の娘は本当に内面から輝きを放って…中身が引き立つからこそ、外見も、際だつ。」
「…っ…ひゃ!」

そして不意に真下から声がして慌てて視線を上から下に向けれは…
不意にヴオックス公と交わるブルーの瞳、ラルヴの怒鳴り声にも似た荒々しい声が静かに響いた。





prevnext
[読んだよ!back to top]