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「14th.secret Dearest-HEROIN-」


―…「また、アルベルさんに逢えますか…?」

このままさよならだなんて悲しすぎるから、さよなら、したくない…不意にあの言葉を彼の大きな背中に呟く私が居て。

気付けばあの月夜の逢瀬から既に2週間の時が流れていた。
今でも早く逢いたい、今すぐ貴方に逢って、そしてこの不思議な記憶・感情がどんな意味を持つのか…
早く伝えて、確かめたい。
貴方に逢えばこの胸を締め付ける思いもきっと分かる、そんな気がする。

あれから片時も彼の事が頭から離れないというのに…。

酔夢は泡沫に微睡む幸せな時間。
…だから現実は呆れかえる程残酷で意地悪で、逢いたくて仕方ないのに現実はそう簡単には行かない事など百も承知している。

アルベルさんに逢えるその日までとにかく早く、この足を治さなくちゃ…クッキーも作れるようにラルヴに教えて貰わなくちゃ。

それもアルベルさんに逢いに行くには夜に誰にも見つからずにこの屋敷を抜け出さなければならない。
そんなの…この屋敷の配置された私の部屋の構造からして正直言って完全に不可能だ。
ベランダから飛び降りれば茨に串刺しにされてしまう。
だからと言って危ないから屋敷からは出してもらえないし…
逢いたいのに逢えない、焦り、もどかしい思いだけがどんどん過ぎて苛立ちばかりが募るばかりで…

それでも、唯一救われたのは逢いたくて仕方がない私の夢には必ず貴方が会いに来てくれた事…。
月明かりに照らされたベランダで、歯を剥き出しにニヤリと強く、精悍な作りをした顔立ちのアルベルさんが居て。
私はただ高鳴る胸を抑えきれなくて彼に魅了されていた。

私がこんなにも彼に逢いたがっているからきっと夢に頻繁に彼が出てくるんだ…そう、思い込んでいた。

でも、暇つぶしにもならない恋愛小説のワンシーン、昔の人は夢に出てくる人物は自分が逢いたい人。ではなく自分に逢いたい人だと、そう考えてそれを文に認めていたそうで…じゃあ…それはつまり?
まさか、有り得ない。
アルベルさんは…きっと私の事なんて一時の危機に直面して助けてくれただけ。だから、

うん、そうだよ。
そうに決まっている。

私は人間貴方は吸血鬼、

相容れぬ運命に何度も言い聞かせようとした。

でも、諦めきれなかった。
貴方と引き裂かれたソウルメイトの記憶に蝕まれ私はもうこの運命のツタに両足を捕らえられてしまっていた。

そのツタは私だけではない、貴方の左腕を縛り続けていた。
隠し続ける、癒えない罪の象徴。
私たちは悲劇の連鎖に捕らわれている。
その末路は―





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