SHORT | ナノ



「missing you」
SHORTSTORY

僕が海に出会ったのは間もなく16歳の誕生日を迎える時の事だった。
客員剣士としてセインガルド王城に迎えられた僕は七将軍の方々に歓迎され、フィンレイ将軍に出会った。
僕とは違う、ソーディアンの力で負けなしの僕を誰もが天才剣士とはやし立てる、諄い、僕は自らの努力で切り開いてきたというのに、才能の人を演じ続ける。

ヒューゴに与えられた偽名も馴染んだ頃、僕はリオン・マグナスとして生きていた。

偉大を意味する古語
マグナス。

何故父がそう名付けてくれたのか分からない儘に、それでも僕は父に、いつか褒めて貰えると信じていた…。

彼女は思えばマリアンや国の女性、ましてや王国に使える筈と違う雰囲気を感じさせられた…まるで、違う世界の人間の様にすら感じられる。
海と言うあまりにも不思議な名前、そう呼ばれた女性の容姿もマリアンやミライナ将軍の様に目を引く様な美人ではないが、この国の多くの女性を見渡しても見たことのない凛とした顔立ちをしているのは確かで。
柔らかな髪質はマリアンとは違う、穏和で…シャルが黙り込んだ理由を知らず僕は海を見つめた。

「!
リオン様、初めまして、えぇと、何でしたっけ…」
「…近衛兵連隊長、」
「…あっ!そうだそうだ…このえへいー…連、隊長…海です。」
「まだ成り立てだがな、私の優秀な部下だ、一応リオンの上司に当たる女性だ、若いが君よりは上だ、宜しく頼む。」

「はい、フィンレイ様……宜しくお願いします、海様」
「…うん…あ、はい…リオン………様っ!」

分からない…
僕は、こちらを見つめる海の眼差しが酷くちらついたことに胸騒ぎを覚えた。


どうしたら僕はお前をいつか手放せる日が、来るのだろうか…。
マリアンじゃない、僕は、お前が好きだ。
だが、この感情には蓋をしなければならない。
お前までヤツの手駒になど、決してさせはしない…。

「ん…どうしたの、」
「海、

好きになって、ごめん……」

生まれたままの姿で横たわる目の前の真っ白で華奢な肩を引き寄せ、その胸に顔をうずめて小さく謝罪した。
それで今までの罪が消える訳でもないと言うのに。
本当の愚か者は、僕なのかもしれない。

Fin.
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