SHORT | ナノ



「セインガルド幼稚園」
SHORTSTORY

麗らかな日差しが穏やかな、ここは国立セインガルド幼稚園。今日も可愛い園児達が歌ったりお絵かきをしたり鬼ごっこや飯事をしたりとで大賑わいの筈なのですが…

「てめぇ…やるかぁ…?」
「あぁ…望むところだ。」
「もちろんですよ…」

校庭の真ん中で、周囲が脅えるのも構わずに空色のスモックに黄色い帽子を被った3人の紫の瞳にまん丸な頭をした黒髪のよく似合うハンサムで中性的な顔立ちの小さな男の子と太陽の様に血潮の様に燃える赤いアシンメトリーな髪型に眼帯をした男の子と風に靡く銀髪が美しい美形ブラックスマイルを浮かべる男の子が見た目だけかわいらしい中身は燃えたぎる火花を散らし対峙していました。そんな中、金髪のつんつん頭の青い瞳がトレードマークの男の子が転びかけながらも何とか水色のエプロンがよく似合うロニ先生のところに飛び込んできました。

「ロ、ロニ先生…大変だぁぁっ!!」
「よぉ、カイル!どうした?まさか…」

その言葉にカイルは迷わず首を縦に振った。

「…うん!むたあの3人だよ!!」

ロニ先生はみんなの人気者、女性にはモテませんが子供達には大人気です。そして、カイルが口にしたあの3人はと言うと…。

「ままごとの相手役は海が適役だと決まっている。」
「違う!俺が海と鬼ごっこして遊ぶんだ!!
「違いますよ海は僕の本を読んでくれるんですよっ!!」

3人が巡り巡って争うのはこの幼稚園にまだ入って間もない海先生の遊び相手を決めるためだ。柔らかな雰囲気を纏う海の姿にエプロン姿はもちろん夏になれば可愛らしい水着姿もお披露目する。そう、今までバラ組担当だった筋肉隆々ムキムキバルバトス先生とは大違いの可愛らしい女の先生に園児の誰もが喜び、そして特に言うことを聞かなかった暴れん坊で未だ子供なのにも関わらず放つ覇気は一人前の最恐最悪・恐怖の3人組が特に瞳を輝かせているのだから…睨み合うだけだった冷戦はやがて…。

海先生と遊びたい人は他にもたくさん居るが、この幼稚園の3恐が海先生を巡って毎回争っている為に皆恐ろしくてうかつに海先生に近寄れないで居るのだ。

「よ、よぉ!お前等!!せっかくいい天気なんだ、睨み合ってなんか無いでみんなで楽しく遊ぼうぜ!
ほら、海先生が帰ってきて喧嘩してたら悲しむぞ?」

宥める様にロニ先生が白い歯を輝かせ歩み寄りましたが…その瞬間、紫紺の大きな瞳に赤い髪のアシメがよく似合うそれは物凄い目つきの子供が思い切り睨みつけてきました。

「テメェはごちゃごちゃうるせぇんだよ…童〇のくせに」

黙ってろ、と言わんばかりの剣幕に押されしかも痛い所を幼稚園児に突かれロニ先生は遙かに年下の彼に身を竦み震え上がった。

「くだらん、ならば実力で貴様等から海を奪い取るまでだ。」
「てめぇ等みてぇなお子さまに海は見向きもしねぇよ。俺の子は海が産むんだよ。」
「な、なんてことを…汚らわしい!このセクハライス!海をそんな厭らしい目で見るな…!できちゃった婚だなんて僕のプライドが許さない!
それに、海は僕とおっきくなったら結婚してくれるってちゃんと約束してくれましたもん!!」
「てめぇ、ガキのくせにイキがってんじゃねぇよ」
「ふん、まぁ…最後に海とバージンロードを歩くのは僕だと決まっているがな。腕っ節ならばどちらが子供か一目瞭然、確かめてみるか?」
「上等だ…来いよ。」
「ピコハンでタコ殴りにしてあげますよ、フフフ。」

終いにはそれぞれが腰に帯びた愛刀を手に身構え睨み合う始末。いつも間に割って入って止めてくれる張本人が居ないため、ロニ先生は最早お手上げだと真っ青なのだが浅黒い肌の所為で顔色が悪いか判断できない。手に負えずじまいだ、幼稚園児を懐柔出来ないだなんて…俺には向いてないかもしれないと先生が銀髪の短頭を抱えたそんな時、

「みんな〜プールの準備出来ましたよっ!」

パタパタと履いたクロックスを小気味よく鳴らし、ふわりと柔らかな髪を風に靡かせ1人の可愛らしい笑みに柔らかな雰囲気を纏った白地のフリルの水着を着た女性が姿を見せたのだ。

「あ、海せんせいだぁ〜!」
「海せんせ〜い」

駆け寄ってきた海先生の着ている水着姿にいち早く反応し、構えていた真剣をロニ先生に向かって投げつけると食い入る様に視線を向けて瞬きすらせず見つめた。

「はい、エミリオ君もクライス君もシャルティエ君も、みんなでプールで遊ぼうね…っ!」

その優しい言葉と柔らかな笑顔を見せた水着姿の海に、3人はすっかりご満悦らしい…
どうせなら黒の三角ビキニでもスカイブルーのフリルでも構わないが、着ていたスモックを何の躊躇いもなく脱ぎ捨て、海パンになると我先にと海のピッピッと楽しそうに軽快に笛を吹くリズムに合わせてプールに飛び込んだのだった。


Fin.
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