「で?」
「…はい?」
「とぼけても無駄だよ」
「…」







今、私は寺田屋の皆と縁側でのんびりしている。
龍馬さんは街へ出ているためここにはいない。
そんな時、武市さんに突然問いかけられた。

「君たちが恋仲になったことくらい、皆知っていることだ」

「!!」
「ゴホ…ッ
…え、えぇ!?姉さんと龍馬さんが…!?」

慎ちゃんがビックリして飲んでいたお茶を喉に詰まらせ、それを呆れたように横目で見る以蔵。

「見ていれば分かるだろ。気付いてないのはお前くらいだ」
「そ、そんな…」

ガックリと項垂れる慎ちゃん。
一方私は少し好奇心を含んだ武市さんの視線から逃れられずにいた。

「し、知ってたんですか…」
「当然、君たちの様子を見ていれば簡単に察しがつくよ」
「そ、そうですか…」

隠していたつもりはないけれど、この事実にとても恥ずかしく感じた。

「で、君たちはもう褥を共にしたのかい?」
「…しとね?」

(しとねって何だろう?)

「あの、しとねって何ですか?」
「あぁ、褥っていうのは―…
「千夏ーおるか?」

武市さんが微笑んで口を開いたとき、玄関の方から龍馬さんの声がした。
そしてすぐに龍馬さんは私たちのいる縁側に姿をあらわした。

「お、なんじゃ?みんなあそろって…。まるでわしだけのけもんみたいじゃのぅ」

と、少し拗ねた顔をした。

「今君たちについて話していたところだ」
「ん?わしらの?」
「君たちがもう褥を共にしたのかどうか」
「な…っ!!」

武市さんの言葉を聴いた途端、龍馬さんは顔を真っ赤にさせた。

「何を言うちゅうんじゃ!そがなことを千夏に聞いちょったがか…!」
「……その様子だと、まだ手を出していないみたいだね」
「あ、当たり前じゃ!」

2人の会話についていけず、私は首を傾げた。

「龍馬さん?しとねって何ですか?」

すると龍馬さんは大きな声で

「知らんでえい!」

と言ってそっぽを向いてしまった。

「……」
「…ま、そのうち教えちゃるき」
「…?はい」

龍馬さんが大声出すなんて、珍しい。

ビックリしていると、まだ少し顔を赤らめたままの龍馬さんがこちらを向いた。

「千夏、ちっくと外歩かんかぇ?」
「あ、はい!いいですよ」

私の言葉を聞いた龍馬さんが立ち上がり、私も後に続く。

「じゃ武市、夕餉までに帰ってくるき」
「ああ。
……早まらないように」
「……」

龍馬さんは最後、無言で武市さんを軽く睨みつけて先に玄関へ行ってしまった。

「おい!先生を睨みつけるとは無礼な!」
「…。千夏さん、気をつけていってらっしゃい」
「あ、はい。いってきます!」

怒る以蔵を尻目に武市さんは微笑み、そして私は龍馬さんを追いかけた。





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