「あら、帰るの?」
「はい、お邪魔しました」
「また、遊びに来てね」
「はい…」
出来るだけ笑顔で精市のお母さんにお邪魔しました、と言う。
遊びに来てね、と言う言葉は守れるか分からない。
もし、
精市に彼女が出来てからも今まで通りに過ごしていたら、今はどうなっていたんだろう?
そっちの方が幸せになれたのかな?
どうして私がこんなに辛い思いをすることになったんだろう?
すべてが狂ったのはいつなんだろう?
私と精市が出会った時?
私が精市を好きと気付いた時?
精市に彼女が出来た時?
疑問ばかりだ。
もうどうしたらいいのか、わからない。
家に入り電気を付けると一気に涙が溢れた。
泣く必要なんかないのに。
自分で選んだ結末なのに。
なんで精市を好きになったんだろう?
精市じゃなきゃだめだったの?
他の誰だってよかったじゃない。
もう好きじゃない。
そう言い聞かせて聞けばどれだけ楽だったか。
「…いつの間に……こんなに好きになっちゃったかなぁ…」
零れる涙が制服を濡らす。
私の家の前には公園がある。
公園の花壇には色とりどりの花が植えてあった。
それを見て精市は嬉しそうに私に花の説明をしてくれる。
その中で1種類、好きな花が出来た。
名前はスターチス。
紫の綺麗な花だった。
今もまだ咲いているんだろうか…
「大丈夫、僕がいるから。」家族同士で買い物に行った時、二人だけで抜け出したら迷子になって。
泣き虫だった私は泣きそうになったけど、そんな私に精市は大丈夫と言いながら手を握ってくれた。