気がついたら朝だった。
カーテンの隙間から漏れる光が眩しい。
寝返りをうち光に背を向ける。
でも、あの人より1本早い電車に乗らなくてはいけないから無理矢理目を覚ますんだ。
「おはよ、なまえー。うわっ、目すんごい腫れてるよ…」
「あ…、…昨日DVD借りてきてそれが意外と感動物でさ。思わず泣いちゃった」
「なまえが泣くのも珍しいね…。見たことないわ…」
「そんなことないよ」
「あ、もう男テニ練習始めてる。…いいなぁー、なまえは。幸村君みたいなかっこいい幼なじみがいてー」
みんなは知らない。
私が精市にどんな感情を持っていて、昨日何があったか。
私は昨日で感情に区切りを付けたつもりでいる。
けど、それでも胸が苦しくなってしまう私はほんと駄目な奴なんだ。
「…なまえ?」
「…ん、あぁ、本当だよねー。なんで、あの人が幼なじみだったんだろ」
あの人が幼なじみじゃなかったら、こんな痛み感じなくてすんだのに。
幼なじみという立場が余計私を縛り付ける。
「でもあんまり言わないよね、幸村君と幼なじみだ、って。あたし達だって知ったのは幸村君からみたいなもんだし」
「うん、……そういえば今日漢字小テストあったよね?」
今のは無理矢理過ぎたかな…
でももう思い出して苦しくなりたくなかった。
幼なじみじゃなかったら、
幼なじみじゃなかったら、
ちゃんとこの気持ちを伝える事が出来たんだろうか?
「なまえっ!!!!」
我に返った時には頭に衝撃が走っていた。
何かが頭に当たったようだ。
「…なまえ…り…っ……」
「…だ……か…」
回りの音が掠れていく。
もう何をいってるかも理解できない。
幼なじみじゃなかったら、
幼なじみじゃなかったら、
きっとこんな関係なんてなかった。
「精市君と幼なじみなのぉー?!」今まで私と精市の関係を羨ましがられる事が多かった。
今となっては譲りましょうか?とでも言いたい。
けど、この関係がなかったら私と精市の関わりはあったんだろうか…