「ごちそうさま、とってもおいしかったです」
「フフッ、なまえちゃんが手伝ってくれたからよ。じゃあ、片付けちゃうわね」
「あっ、手伝います」
「いいのよ。今度は精市の相手でもしてあげて」
精市の相手?冗談じゃない。
今精市と話したら私は絶対に精市との仲を今よりもっと壊す事しか言えないと思う。
前みたいな距離に戻れなくてもいいから、今の距離は保ちたい。そう思う私はおかしいんだろうか?
「行くよ、なまえ」
突然、腕を捕まれ引っ張られる。
階段を上っている最中も精市の顔は見えなくて、引っ張られるがままについていく。
精市の行動の意味がよくわからなかった。
どうして今精市は私の手を引っ張ってるの?
顔が見えないから何を考えてるのかもわからない。
2年ぶりくらいに入る精市の部屋は多少変わったものの、大した違いはない。
それが嬉しかった。
変わらないものもあった、って信じたくなった。
「…なんで最近俺を避けるの?」
なんでって、それはっ、
突然の質問に上手く返せない。
いや、それだけじゃない。
そう聞かれるとは思ってなかったのだ。
「……別に避けてないよ…」
「嘘だ」
この時精市と初めて目があった。久しぶりに見た茶色の瞳は少し潤んでるようにも見えた。
「2年になってまともに話した?話してないよね。話す機会はいくらでもあったはずなのに、なまえが俺を避けるから」
「……それはっ……」
「どうして…、どうして、避けるんだい…?」
それは、自分でも分からなくなってる。
「なんで、俺に笑いかけてくれない?」
「…今まで通りは無理なんだよ、精市」
私の口から出た声は思った以上に冷酷な声だった。
「精市には……彼女がいるじゃない……」
「俺はっ、」
「もう嫌なの。これ以上苦しみたくないっ」
「ごめんね、……幸村君…」
ほらね。
より、関係を壊すのはいつも私から。
「わかんない……。」テスト期間になると一緒に図書館で勉強することもあった。
どっちが早く解けるか競争したこともあったね。