7話

「部活辞めたんだった……」


朝5時半に鳴ったアラームを聞きそう思う。
けれどもう一度寝る気にもなれずいつもより少しだけ遅い時間で学校へ向かった。



いつもより1本遅い電車。
いつもより人が多い大通り。

いつもと違うのは私がいつもと違うから。















校門に入り校舎への道を進むと転がってきたサッカーボール。
手に取るとサッカー部の子がかけて来た。


「すんませんっ」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」



笑顔でその子を送り出すと今度はテニスボールが飛んできた。




「先輩ー。それ、取ってくださいー」



低い声。
振り返ると、



「なんだ財前君か」
「ひどいッスわ」



テニスラケットを片手に持ち、、首にタオルをかけた財前君がこちらに向かって歩いてきた。



「財前君が飛ばすなんてありえないよ。わざとでしょ?」
「まじで飛ばしました」
「はいはい」


クスリと笑うと財前君は微笑みながら口を開く。




「先輩……
俺、好きな子おるんッスわ」

財前君の口から漏らされた言葉は予想外の言葉だった。


「へぇ…、そうなんだ。なんか意外」
「めっちゃ好き」
「幸せだね、その子。財前君に好かれて」


私も幸せだった。
自分の好きな人が私の事好きなんてものすごく嬉しかった。



好きっていう1言に重みを感じた。



なのに。







「……っ……ごめん、目にゴミが入ったかな?」



人の目の前で涙をこぼすつもりなんてまったくなかった。


「―――――」

「…なんか言った?」

「いや、なんもないッスよ」



急に顔にタオルがあてられた。



「俺は笑った先輩が好き」


そう言ってコートへ向かって走っていった。



蔵より低くて私より高い身長の彼。




 

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