強くなれる
「先輩ー。」
「ん…、」
「めっちゃテンション低いやん。」
「そう…?」
『…楽しいで………。』
気になってしょうがない。
あの日、あの後雨は止み、カフェから出て何気ない会話をして歩いた。
けれど、茶色い瞳は合うことはなかった。
昨日幸村にしたメールの返信も返ってこない。
小さくため息をつく。
「…ため息吐くと幸せ逃げますよ。」
財前君はぽつりと呟いた。
「……財前君はさ、テニスしてて楽しい?」
昨日白石君にしたのと同じ質問を財前君にもする。
財前君は一度こっちを向くともう一度視線を前に戻した。
「楽しいッスよ。」
「そっか…。」
「回りに仲間がおるから。」
仲間。
財前君の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
孤高、そんな言葉が似合う彼だからだろうか。
回りの人には頼らない姿しか浮かばないのかもしれない。
「…何やかんや言うたって結局俺は仲間に支えられとるんや。部活入れられるまではうざくてしょうがなかったけど…今では……楽しい……。」
財前君が時に本音を出す人だってことも知った。
「支えてくれる人がいる人は強くなれるんやと思う。」
さっきとはまた違った様子で言葉を呟く財前君。
支えてくれる人。
「…って俺なに言うとるんやろ…。」
「…ううん、もっともだと思う。」
「…さいですかー。」
ちょっと照れた様子の財前君へもう一言。
「そうだよね。」
財前君は瞳から物事を読み取る。
そしてニッ、と笑った。
「いい目しとりますわ。」
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「ってほんまに恥ずかしいィィィィ(泣)」
「だからキャラ…」
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