騙してみよう〜白石SIDE〜
俺は告白されても、告白を受けた事はないし、告白したこともない。
人を好きになるとかがなかった。多分それは去年全国大会で見た立海マネ――みょうじさんが気になっとったからなんやろな。
やから、告白とかにもやんわり断りを入れてきた。
「屋根のあるとこ行こっ!」
そう言って俺の腕を引っ張っていくみょうじさん。
多分今俺はすごい顔してると思う。
ぽつりぽつりと降る雨の粒が俺の頬を冷やす。
いつも後ろにいるみょうじさんが今は俺の見えるところにいた。
自然に頬が緩む。
みょうじさんの提案で近くのカフェに入る事になって。
メニューを見てたときにかけられた声。
「テニス楽しい?」
うん、楽しいで。
そう二つ返せばよかったのに。
そう肯定すればいいだけなのに。
なかなか肯定の言葉は出てこなくて。
こんなこと考えてる自分が今置かれている場所が、なんて言うのは多分知ってる。
けど、
『白石キャプテンやるか。』
『期待しとるで。』
『さっすがパーフェクトテニス!』
みょうじさんはそんな人やない。
わかっとる。
……
「…楽しいで………。」
楽しいんや。
自分を騙してみよう。
いいや、
今まで騙しとったんや。
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弱い自分はみょうじさんから目を反らす
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