ずっと小さく
「あれっ?どこか行くの?」
「うん、友達と買い物行ってくるね。」
「あらあら、いってらっしゃーい。」
「いってきまーす。」
大分肌寒くなってきた今日この頃。
いつもは結んでることが多い髪も今日は下ろしてきた。
大分時間に余裕を持ってたが、待ち合わせ場所にはもう白石君はいて。
「白石君早いね。」
「みょうじさんも大分早いで。」
「フフッ、…じゃあ行こっか。まずは色紙?」
「せやな。この先にめっちゃ安くていい店があんねんで。」
「じゃあ、そこだね。」
白石君の一歩後ろを歩く。
一歩後ろから見る白石君の背中はあたしの背中なんかよりずっと大きくて、
けど、あの頃より成長しているはずの背中はあの頃よりずっと小さく見えた。
空は青くどこまでも透き通っていた。
「これで全部?」
「せやな。色紙は買ったし、テーピングとかも買ったし。もうええやろ。」
「今何時?」
バックからケータイを取り出すと画面にうつる黒い影。
「ん?」
思わず上を向くと先程とはうって変わって黒い雲が空に広がっていた。
「これは、降って来るな…。」
白石君の言葉を合図にするかのようにたくさんの雨の粒が降り始める。
「屋根のあるとこ行こっ!」
白石君の袖を引っ張るとあたしは駆け出した。
「!」
その時、白石君がどんな顔をしてたかなんてあたしは知るよしもない。
*
「降ってきたねー…。」
そう呟いたあたしの回りにはあたし達の他にも雨宿りをする人達。天気予報では今日一日晴れるはずだったのだ。
「天気予報嘘つきだな…。…白石君?」
反応がない白石君に呼び掛けると慌ててこっちを向いた。
「降ってくるなんて誰も思わんかったやろうな。」
「そうだよね。…どうする?まだ止みそうにないけど。…カフェにでも入ろっか。…あ、白石君がよければなんだけど…。」
「かまへんで。ここでええ?」
近くにあったカフェに入ると、店員が声をかけ、メニューを持って来る。
メニューを開きしばらく目を泳がせ話題を出す。
そう、普通の話題を。
「ねぇ、白石君。」
「なんや?」
「テニス楽しい?」
すぐに返してくれれば。
楽しい、って返してくれれば。
けど、白石君は一瞬黙り込んだ。
なんで、黙るの…?
楽しくないのかな…?
「…楽しい…で。」
なんで、そんな顔して楽しいっていうの?
白石君はあたしから目を逸らした。
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逸らした目はもうなかなか合わない
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