あたしという人間の立場
「おはよう、みょうじさん。」
昨日の事は誰にもいっちゃいけないんだと思う。
少なくとも自分ではそう思った。
「おはよう、白石君。」
迷う事がないのは知ってる。
あたしが迷って考え込んだってなんの解決にもならないんだから。
それがわかってて考え込んでしまうあたしは本当にどうかしてると思う。
「せやせや。もうすぐ先輩ら引退やろ?やから、なんかしようと思うねんけど…。」
「引退か…。色紙とかは?」
「あ、それええなぁ。」
完璧なテニス。
彼の描くテニスはそれであって。でも何故彼がそれを描くのか、あたしには到底理解できなくて。
もう、本人があたしに話してくれないかななんて思ってる。
「…じゃああたし色紙買ってくるよ!」
「それは悪い!俺が行くから気にせんとって。」
「え、いいよいいよ。」
「女の子一人で行かせるのも…。あ!ほな、一緒に行こか。他にも買いたいもんあるしな。」
話してくれればいいのに、
話せないから一人で抱え込んでるだろうに。
あたしは本当にバカだ。
「うん、そうだね。いつにする?」
「せやな…、明日なんてどうや?学校も部活も休みやし。」
「ん。わかった。」
マネージャーの立場から、
あたしという人間の立場から、
白石君を支えたいと思った。
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「じゃあ学校前待ち合わせで。」
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