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嫌いなわけじゃない


「…好きです……。付き合って下さい…っ」


まさかこんな場面に出くわすとは思わなかった…。


昼休み、たまたま中庭に出て木陰で一休みしていたところ、いきなり聞こえてきた告白のフレーズ。
そして、


「無理。てか自分俺のどこが好きなん?俺、あんたのこと知らへんねんけど。」


ざ、財前君………。

女の子は泣きそうな顔して去って行く。
当たり前だろう。
例え、何目当てだろうとフラれたら悲しいものだと思う。


「…はぁ……、」

財前君は一つ溜息をつくと声を発する。


「誰なん?そこにおるの。」


!、
明らかにその声はこちらに向けられてる。
ばれてたか…。


「…ごめんね…、」


渋々出ていくと財前君はすぐにこっちを睨みつけた。


「……何してるんスか?…盗み聞きとか趣味悪いッスね、自分。」
「盗み聞きするつもりは全くなかったの。ごめん。」


財前君は相変わらずあたしを睨みつけている。
そんなに睨まれると少しへこむな…。


「はぁ……、財前君はあたしの事嫌いなの?」
「は?」
「あたし、睨まれるようなことしてないんだけど。」



言いたい事ははっきり言う。
今まで生きてきた中で思った事だ。

そう言うと財前君は目を見開いた。

そして、ぽつりと漏らす。




「…先輩、女やないッスか……。」
「はぁ?あたし女だからって理由で嫌われてたの?」
「…女子なんて何考えとるか分からん……。」
「そりゃ、そうでしょ。あんた男子なんだもん。女子の気持ちがわかったらある意味すごい。」


「……フッ…、」


急に小さく笑った財前君。


「ちょ、なんで笑う?」
「いや、……先輩すんません。そうッスね…。先輩は違う。」
「?」
「先輩の事嫌いなわけじゃない。」
「…あ、ありがとう。」

「ってか、今すぐ抱き着きたい。」
「キャラ壊れていいならおいで。」



冗談半分で両腕を広げてみたら、


「じゃあ、」


とか言ってまじで抱き着いてきた。


「…甘えたか。」
「今日の部活楽しみッスわ。」

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「財前君、授業始まるよ。」
「俺の事名前で呼んで。」
「はいはい。」




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