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それだけしか知らない


ケータイを自分の顔の前に持ってきて、ついこないだみんなで撮ったプリクラを見た。
撮ったすぐ後にみんなでケータイに貼ったのだ。
みんないい笑顔をしている。
空いてるスペースには『常勝立海大』の文字。

いや、9人で撮ってよくスペースが空いたね。
みんな小顔だからか……。


「なまえー。初日なんだから早く行きなさいー!」
「はーいっ!」



〜♪
ケータイが鳴る。
幸村からだ。



『おはよう。転校初日、頑張ってね。』


それだけの短いメールだったがあたしは頬が緩んだ。
新しい匂いがする自分の部屋をいそいで出た。




*




「……迷った。」



え?
初めてなのに一人で来るんじゃなかったっ。
でも、一緒に行く人いないわ(笑)
回りにあたしと同じ制服来てる人はいない。
転校そうそう遅刻?


「…どうしよう……。」
「自分どないしたん?」



あたしに向けてかけられたであろう声に振り向く。


クリーム色の髪の毛。


あ、この人四天宝寺テニス部の人だ…。
名前は……
……わからない。


「?」
「あ、あたし引っ越してきたばかりで。迷っちゃって……。」
「四天宝寺でええよな?」
「あ、はい。」

なんで知ってんだろ、と思ったがあたし今四天宝寺の制服着てたんだった…


「立海のマネージャーさんやろ?」
「え?…元です。」
「あぁ…。あ、俺白石蔵ノ介っていいます。中2やで。よろしゅうな。」
「あ、みょうじなまえです。あたしも中2です。よろしくお願いします。」
「同じ歳なんやし敬語なんか使わんといてや。地味に傷付くでー」
「あ、ごめん…。」
「じゃあ、行こか。みょうじさん。こっちやで。」
「うん。」



白石蔵ノ介。
四天宝寺中テニス部であたしと同じ歳。

でも、ただ、それだけしか知らない。

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「白石君か…。」




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