また、いつか…
部屋の大体の物が片付いた部屋を見渡した。
こんなに何もない部屋を見たのはいつぶりだ?
いや、初めてかもしれない。
何もない部屋が余計にあたしの心を沈ませる。
途端、
あたしの心境とは裏腹に軽やかなメロディーでインターホンがなる。
今日は親もお兄ちゃんも家にいない。
仕方なく一階へ行き玄関のドアを開けると予想しなかった人物。
「おはよう。」
バタン
あたしはその人物を確認するなりドアを閉めた。
なんで?
今日部活ないよね…?
〜♪
「わっ!」
ケータイがなる。
この着信音は電話だ。
ディスプレイには先程の人物、『幸村精市』の文字。
意を決してケータイの通話ボタンを押した。
「…も……もしもし…。」
『なんでドア閉めたの?』
「えっ?」
『まぁ、いいや。それより早く出て来なよ。』
「で、でも今日部活ないよね?」
『見えなかったの?俺私服だよ?』
「じゃあなんで…。」
『とりあえず出て来い。ドア壊すぞ。』
急いでドアを開ける。
幸村ならやりかねない。
「おはよう。」
「お…おはよう…。」
「ほら、行くよ。」
「え?どこにっ?」
「フフッ、」
「ヒッ」
幸村に手を引かれて電車に乗せられる。(何故かポッケに財布入っててよかった…。)
「この駅。」
下車した場所はあたしが学校行くときにおりる駅。
「え?」
そしてまた腕を引っ張られる。
幸村連れてかれて歩くこと数分。
「………なんで?」
連れてこられたのは部活の時いっつも来る場所。
テニス部の部室だった。
「俺聞いてないんだけど。」
「え…」
「今からちゃんと話せよ。」
幸村はガチャと部室のドアを開けた。
中には見慣れた人達。
「あれ?なんでみんな?しかも私服……わっ!」
途端、赤也君が抱き着いてきた。
抱き着かれるのは初めてじゃないがいつもと違う気がする。
「……先輩…。」
「…どうしたの?」
「…寂しいッスよ…。」
「……っ…。」
多分赤也君が言ってるのは転校のことだ。
「なんで言ってくれなかったんだよぃ。」
「転校ですか……。」
正直に話そうと思った。
多分今話さなかったら一生後悔する。
「…大阪。多分四天宝寺に行く。……それでみんなに話があるんだ…。」
この話をしたら、みんなあたしをどうゆう目で見るんだろう?
裏切りか。
「…四天宝寺テニス部のマネになろうと思う……。」
そう言った瞬間、蓮二以外の目が見開かれた。
「四天って…、」
「敵になっちゃうじゃないッスか!!」
敵か……。
「四天宝寺のマネになって…四天宝寺と全国に行く。…みんなとそこで会う……。裏切ったって思われても仕方ないけど。」
みんなの顔を見るのが怖い。
「フフッ、なまえらしくていいや。ゲーセン行こ。プリクラ撮ってみたかったんだよね。」
「そっ、そうッスね!みんなで撮りましょうっ!」
「では、行きますか。」
「…みんな……。」
「…みんな、お前が来るまでずっと悩んでいた。」
「…真田。」
「みんなお前がいなくなるのは寂しいんだ。…仲間だからな。」
「……っ…、」
「まだ、泣くな。……今日は思い出を作るぞ。」
「…うんっ!」
「なまえー、行くぜよー。」
「っ、今行くっ!」
あたしはみんなの背中を追い掛けた。
「どうしよう。俺絶対綺麗に写る。」
「プリ機が幸村を女と間違えてか?」
「ちょ、仁王っ!それ禁句っ!」
「静かにせんかーっ!」
「真田副部長が1番うるさいッスよ。
「9人はきついか…?」
「いや、いける確率89%だ。」
「本当ですね。」
「あははっ、」
『3・2・1』
「常勝っ!」
「『立海大っ!!』」
きっと、
またいつか……
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「…離れてても俺達は仲間だ。」
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