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間違った事などない


「え?なんて言った?」
「だから、お父さんの転勤が決まったの。一ヶ月後にはもう引っ越すからね。」
「えっ!?どこにっ!?」
「あれっ?言ってなかった?」
「言ってないよっ!」
「大阪よ。」
「えっ!なぜにっ?!」
「しょうがないじゃない。転勤なんだもの。」
「え?学校とかはどうなるの?せっかく受験したのに…。」
「なんかねー、立海の紹介があればだいたいどこでも入れるらしいわよ。よかったね。」


キャピッ、とお母さんはウインクする
あー、
そうなんだ。
それはよかった。

…じゃないよっ!


「やだっ!あたし残るっ!」
「はぁっ?中2のガキが一人で?はっ、ふざけんじゃないわよ。無理ね。」
「うっ……、」
「あとで柳さん家にも挨拶しに行かなきゃね…。」
「……っ…転校なんてしたくないっ!」


あたしは玄関を飛び出した。


転校?
冗談じゃない。


友達とだって離れたくない。
担任だっていい人だった。



「…なまえ。」



部活だって……


隣の家から出て来た蓮二。
あたしはとっさに下唇を噛み締める。


「…聞こえてた?」
「……あぁ。」
「…転校…したくないよっ……。」


なぜだか涙がこぼれ落ちる。
蓮二と離れたくないっていうのも原因の一つかな?



「お前と俺は幼なじみだ。」
「…なによ。」
「幼なじみって繋がりが有る限り俺達はそう簡単に他人になったりしない。」
「………。」


「どこに引っ越すんだ?」
「……大阪…。」


「大阪なら四天宝寺中に行くといい。そしてテニス部マネをやるんだ。」
「…毎年全国来るとこ…?」


蓮二は一つ頷く。


「…立海以外のマネやって…みんなあたしが裏切ったって思わないかな…。」
「俺の言う通りにしていて間違ったことが今までにあったか?」
「……ない…。」
「きっと、大丈夫だ。…みんな分かってくれる。」
「………。」


「俺達は今年も全国を…三連覇を目指す。その時にまた会おう。」
「……っ…。」


「……お前と離れるのは初めてだな。」
「…え?」
「生まれた病院も一緒で幼稚園も小学校も。ずっと隣にいた。」
「……そうだね…。」
「悲しくないと言ったら嘘になる。」
「…あたしもだよ。」
「でも、もう会えないわけじゃない。また遊びに来ればいいし、俺も遊びに行く。」
「……うん…。」
「あっちでもいい出会いがあるといいな。」


いい出会い。
そんなのあるのだろうか。
立海のみんな以上の出会いが。


蓮二に別れを告げ自分の部屋に戻った。
そしてダンボールの中に荷物をつめるのだった。

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「あ、もしもし。幸村か?」




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