学問担当の評価


「……」
「どうしたのです?怖い顔をして」

眉間にしわを寄せ書類を見ていると、通りがかったジャーファル様に声をかけられた。

「学問担当、予算使いすぎじゃないですか?」

『今期各担当予算収支表』の学問担当のところを指差す。外回りがある外務担当や、難民対応をしている国家管理担当の予算が多いのは分かる。

以前いた学問担当の仕事内容を思い浮かべ、その性質からこの予算額は少々多過ぎではないかと思う。だって、法務担当なんかと比べて桁が違うのだ。

そう言えば、学問担当の時に出させてもらった予算検討会議で、法務担当長官がやけに突っ掛かってきたのはこのせいか。

「何を今さら、シノが以前いたところでしょう」
「いや、そうなんですが、私自分の仕事に振られている予算くらしか知らなかったので」

以前私がしていた仕事は主に黒秤塔の蔵書管理と寺子屋設置推進企画くらいで、学問担当全体でいくら予算をもらっているかなんて知らなかった。

「あそこは、優秀な方が多いですからね」
「えっ」

ジャーファル様の言葉に目を見開いた。おおよそ学問担当を表すとも思えない言葉が出たからだ。

「何を驚いているんですか?」
「いや、優秀っていたら財務とか外務とかかなぁと。学問担当は日蔭の存在かと思っていました。新人配属希望でぶっちぎりのびり独走中ですよ」

先日、総務担当から回ってきた回覧資料を見て、学問担当の人気のなさに涙した。

「まぁ、人気はありませんが、その分本当に学問の分野に関わりたい方が希望を出してくれるので、優秀な方達で構成されていますよ」

ジャーファル様が苦笑しながら言った言葉の内容に納得する。

確かに自分を含めて皆、『これがしたいんだ!』みたいな企画があったなぁ。

自分を優秀だとは思わないが、確かにやりたいことに関しては異様に能力を発揮する人たちは多かったかもしれない。

「そのおかげで、いつも予算編成が大変です。学問担当長官が有無を言わず、ごっそり予算を持っていくので」

脳内に白ひげを撫でてる学問担当長官を思い浮かべる。

穏やかな人だったが、やり手だったのか。あんまり想像できない。よく窓際でお茶を啜っていた姿が思いだされた。

私達部下からの隠れた愛称は『じい様』だ。

でも、ジャーファル様がこういうのだし、何より手元の書類の数字が物語っている。じい様はすごい人なのだろう。

自分の古巣を誉められて私の頬は緩んだ。

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