香油(本編23話after)


「ん?」

晩御飯に誘われ、皆と行きつけの食事処に向かっていた時のこと。今日考え付いたばかりの『紙幣を期間限定』にするアイディアをジャーファル様に話していると、首を傾げられた。どうしたのかと視線で問うと。

「君、アシュラフ殿に会ってきたんですね」
「ヴィゴさんを待っている時に相手をしていただきましたけど、よく分かりますね」
「臭います」

その言葉に、私は袖を嗅いでみるが分からない。いつも通りの香りである。

それにしても『臭う』って言い方に随分棘がある。贅を尽くしたあの香油に対しの言葉ではないような。

「香油は嫌いですか?」
「飲み会後の王の後始末を思い出し気分が悪くなります」

嫌なことを思い出してしまったと言わんばかりの顔の歪めよう。いつもお疲れ様ですと私は苦笑するしかなかった。

でも、私も香油つけてるんだけど。というか、つけないとこの南の国のシンドリアでは体臭が大変なことに。

反応に困っている私を見て、ジャーファル様はくすりと笑った。

「シノの香油くらいなら気になりませんよ。いい香りだと思います」

そう言うジャーファル様に顔が赤くなってしまった。

自分の香りを覚えられている事実が、もう言葉に言い表せれないほど恥ずかしい。あげくいい香りときたもんだ。

単純に『君は臭くないですよ』って言われているだけだから。他意とかないから。

そう自分に言い聞かせたけど、恥ずかしいものはやっぱり恥ずかしく、話を切り上げ、前を歩いている先輩のところに逃亡した。

ジャーファル様は王様にそっち方面の機微を学んできた方がよいと思う。

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