ミュウツー嫉妬夢U


「ミュウ、ツー……?」

その言葉は、普段彼女の口から紡がれるそれとは全く異なった響きを持って紡ぎ出された。
*の呼びかけに呼応するようにゆっくりと背後を振り返るミュウツー。
しかしその瞳に穏やかにたゆたう紫を見いだすことは困難を極め、再び*は言葉にならない声を絞り出す。

「…話がしたい、と言っていただろう?」

*の様子を伺うように言うミュウツー。
その言葉は、視線は、いつも通りなのに、何処かが違う。
そしてその違和感は、目に見える事実として*の目の前に広がっていた。

「これでゆっくり話が出来る。邪魔者は居ない」

ミュウツーの背後に建つ、かつてのポケモンセンター。
しかしそれは、そうと言われなければ分からない程に、原型を失っていた。
目印の屋根と赤い看板など、粉々になって欠片程も見当たらない。
出入り口付近に、かろうじてかつての形を留めて転がっている二つの体があったが、
それがポケモンなのか人間なのか、近づいて見ることは躊躇われた。

「私……」

こんなことは、望んでいない
そう言おうとしたはずなのに、喉がからからで声が出ない。
黙って涙ぐんだ*を見て、ミュウツーはそっとその側へ寄った。

「具合が悪いのか? それならこの先に休める場所がある」

「……どこにも無いよ。全部壊れてしまったじゃない……」

かろうじて声に出した"本音"は、歪んだ解釈の前に崩れ去ってゆく。

「ああ。美しいだろう。私とお前だけのセカイだ。…足りないか?
それならこの町だけでなく、この国も、世界も…」

「"彼"のこと?」

*の口から飛び出した単語に、ミュウツーは顔をしかめる。
その反応を見て、それが原因なのだ、と確信する。

「…もう終わったことだ。奴も他の人間もいない」

ポケモンセンターの、或はその他の建物の。
下敷きになった人間や、焼死したポケモン。
この町の惨状は、ありとあらゆる生き物の生存を許さなかった。

「なん、で……?」

するりと崩れ落ちる*に、ミュウツーが微笑みかける。
困ったように、穏やかに。

「当たり前だろう。…お前は、私だけのものだからだ」

さあ、行くぞ。

差し出された手を振り払う勇気も、掴まない元気も無く、
後悔の気持ちも、或は怒りすら麻痺して、*はミュウツーの細い腕を、掴んだ。





嫉妬というよりヤンデレ。
弱い子のヤンデレは可愛いけど、
最強ポケモンのヤンデレは可愛いとか言えるレベルじゃない。
リクエスト、ありがとうございました!

(10/08/03)





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