箱庭舞踊


厳かな愛撫が執拗なまでに降り注ぐ。
私はただ、黙って彼の気が済むのを待つしかない。

こうしていると、昔何かの神話に書いてあった一節を思い出す。


昔、人と結婚したポケモンがいた。
ポケモンと結婚した人がいた。


当時はそのページが示す意味なんてまるで考えずに、面白い神話の一部として読んでいた。

しかし今は、ふとした瞬間――そう、例えば今みたいな時に、それは厭な形で思い出されてしまう。

人とポケモンが――それは、番ったという意味なのだろうか。
本が示すところの「神」は、こんな切なくて無益な行動を許していたというのだろうか。

それともこんな気持ちになるのは彼がミュウツーだから、なのだろうか。

彼は世界で一体しかいないポケモン。
対する私は、只の人間である。

私の秘部は、彼の生殖能力を持たぬソレを受け止める術を持たない。

「んっ…ああっ」

痛みより先に寂寥が私を襲う。
こんな関係、彼は満足しているのだろうか。

ミュウツーが只のポケモンだったら、或いは私が特殊な人間だったら。

不毛な仮定は、脳内で完結して外へは出ない。
そして矢張り、頭ではどんなに複雑な思いを抱いても、単純に外部からの刺激に打ち震える私の身体に嫌気がさす。

「ああっ…やっ!」

反転する視界。

私の限界を感じたのか、ずるりとミュウツーが自身の尾を引き抜いた。

白濁した液体の下で変わらない紫に、嗚呼矢張り生理的な反応を返すのは私だけなのだと思い知らされ。

「ごめん…ね」

口をついて出た言葉は。

ふわりと宙を舞ってこちらへと飛んでくるバスローブを受け取り。

嗚呼、でも。

突如壊れるくらいに強く抱き締められた身体に、私はまだ酔い痴れている。



10/02/02

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