23:弱虫騎士と悪役少女 7 / 7

 とりあえず私なんかと噂だっていることを全員に謝らないといけないかもしれない。香月くんは意図的なものだからまだしも。


 視聴覚室につくと魚住先輩が少し困ったような笑顔で迎えてくれた。
 あ、全員揃ってる。


「んーと、大丈夫? 星尾ちゃん」
「いえ、あの、寧ろ私なんかと噂立てられて申し訳ないというか……」

「てか段々尾びれがついてってるみたいだけど。星尾さん悪役になってんねぇ」

 登くんは噂なんてどうでもいいといった表情で言葉を零す。いや、少しだけ苛ついている、のかな?
 昼休みよりも噂は酷くなっているらしい。
 なんてこった。

「『星尾はフェアリーテイルを牛耳ってる』とか超うけるべな! 牛耳ってるって! 頭わりー!」


 弥生先輩がけたけたと楽しそうに笑う。
 この人意外といつでも楽観主義だなぁ。


「笑い事じゃないでしょ。ミュフェスのコンペ近いのに悪役にされてちゃ票集まりにくいし」


 魚住先輩の言葉に思わず土下座しようと構える。登くんに掴まれて止められた辛い。


「悪役上等。そんな理由で投票しないやつを投票したくさせるような演奏すりゃいいんだよ」
「弥生、悪ノリしない。それが出来れば一番だけどね……」


 呆れ顔だ、魚住先輩。


「いんだよ、悪役だろうがなんだろーが。お前らさえいれば、それでよ」


 楽観主義なのか仲間大好きなのか。後者なんだろうけど。



「喧嘩を売ってきた本当の悪役のあのクソ野郎共を潰してオープニングの権利も得る。それで万事解決だ」


 ただ、楽しんで演奏してほしいだけなのに。
 どこか、歯車の噛合わなさを感じた。




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