24:ちぐはぐチーム 1 / 6

 視聴覚室に不器用な鼻歌が響く。
 頬杖をついた弥生先輩がペンを走らせながら途切れ跡切れの歌を紡いでいく。

「はにわちゃあん、そこの音上げるより下げた方が好きー」


 休憩をしていた香月くんが弥生先輩に近付いていって指摘をする。

「んん? んー……」

 話を聞いているかもわからない中途半端な反応に、香月くんは私に視線を向けた。


「ね、美幸ちゃんもそう思うよね?」
「うん」


 軽く返事を返すと、香月くんは「ほらぁ」にっこりと笑う。
 葛原先輩と出会った日から数日、香月くんの笑顔は少しだけ不器用になった。


「登、少し休憩したら? 音悪くなってきてるよ」
「うへぇ、こーめーに言われちゃうなんて相当だね。少し休むかぁ」
「あのね、俺も割と長い間お前らと音楽やってるんだから少しは分かるようになってんの」


 登くんの茶化す声に、魚住先輩が呆れ声で言葉を返す。
 ギターを立てかけた登くんは私の方を見て手招きした。


「ねー、星尾さん、お願いしたいことあるんだけど」


 にっこり。
 段々と作り物が下手になっていく香月くんとは相対して、上手になっていく作り笑顔を向けられる。


≪≪prev




しおりを挟む
back




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -