探そう、彼と彼女を



できるよ、私になら



きっと







―事件との繋がり―
〜World link〜









「簡単に言えば生き残りゲームだ」



さらりと説明をされる。



「……」


「ルールはない。“アリス”はいろんな奴から狙われる」




慣れるまではまだかかるか、と目線をコップにやって呟く。



「これは夢なんかじゃない。あんたはそれを受け入れなければならない」



夢なんかじゃない。



目の前ではっきりと言われてしまった。





……受け入れてしまわなければ、ならない。




「あ、そうだ。白ウサギやクイーンのように物を出すのってどうやるの?」


手品のように、物をぽんっと出せる物なのだろうか?


「は?」



ジャックは不思議そうに声を上げた。




しばらくの沈黙を置いて、私が何を言っているのかわかったらしく「あぁ」と声を発した。



「あれは人間じゃない……クイーンに作られた奴がやることだろ?」




クイーンや白ウサギ、見た目はただの人間だけど……違うんだ。




私は物を出したりできないのか。


「へぇ、じゃあ、ジャックは何が出せるの?」


「……俺は何も出せねぇ。俺はリアルの人間だからな」




ここでは私が元いた現実の世界を“リアル”と呼ぶのか。
ジョーカーもそうよんでいたし、それは共通事項なのか。




……ていうか



「その……リアルから来た人は、私だけじゃないってこと??」



アリスだけではない。


目の前の彼も、リアルとやらから来たのだという。




他にも、いるんだ……




「あぁ?そうだな、10人もいないと思うけどな」




本当に少ない。



たった1桁の、私と同じ境遇の人間たち。



……ん?





もしかして、これって……






思い浮かんだのは、たった1つのあの事件。




兄も親友も関係している


あの失踪事件







こちらの世界に来た人が、リアルでは“失踪した”んだとしたら……?




失踪した人は、この世界で生きている……?

私の前に“アリス”に選ばれた人を除けば、だが。



兄が生きているかもしれない。

双葉が生きているかもしれない。




一緒に、元の世界に戻れるかもしれない……!





そう、希望が湧いた。




兄に至っては、中学生になろうとしていた兄だ。
そのくらいの歳だとしたら5年も経てば、顔もかなり変わるだろう。





つまり、今の私は兄の顔が“わからない”。






だから……

目の前にいるこの人が、兄かもしれない。





相手も、忘れているだけかもしれない。




少しの期待を胸に、思い切って聞いてみた。






「ジャック!本当の名前を教えてくれる!?」



宮本光輝。
兄の名が出ることを願って。




「……は?」



「私は、宮本歩って言うんだけど!私のお兄ちゃんだったりしない?」





ジャックからは、予想もしていなかった言葉。




「そうだ」でも、「違う」でもない。



首を横に振って、こういった。




「覚えてねぇよ……名前なんて」




「……え?」






名前を、覚えていない?




自分の名前を忘れるなんて、ジャックはマヌケな人なのか。





「この世界で目が覚めた時、何も覚えていなかった。ただ、俺がこの世界で異質な存在……リアルの人間だったということ、それ以外は」





少し寂しそうな顔をして、ジャックは俯いた。




他の人達も、今までのアリスでも、記憶を持っていた人はいなかったらしい。



じゃあ、どうして……




「どうしておめぇは記憶を持っているんだ?」



「私にも、わからない……」





どうして?




私は……他とは違うの?

自分は特別な存在だなんて、ばかげたことを言うつもりはないけれど。




「今までと、違うか……」





そう呟いて、私を見た。




「おめぇは今までとは違う……“ゲーム”をクリアできる、そんな気がする」




ジャックは小さく笑って立ち上がった。





そして、拳をゆっくりと私に向けた。





「ゲームをクリアしようぜ、アリス。ぜってぇ、守ってやる……絶対にッ」





クリアしよう。


そんな希望の満ちた言葉と裏腹に


苦しそうで、悲しみを帯びたジャックの声。





……なにか、あったのだろうか?





最初会った時も“アリス”に過剰な反応を示した……




以前の“アリス”と、何かあったのかもしれない。





私は拳を作ってジャックの拳にコツンと軽く触れる。




「うん……守られるだけじゃ嫌。私も、あなたを守ってみせる」





頼もしいな。そういってジャックは笑った。



「ジョーカーとダイヤのAもね……Aには、まだ会っていないけど」



「……ジョーカーとエース?」



「白ウサギに渡されたの。この人達が助けてくれる、って」






ジャックが言った言葉は
「最悪だ」
だった。





え、どうして?





そう言うと、溜め息をついて小さく言葉を漏らした。




「ジョーカーは神出鬼没だ。エースはあっちをフラフラ、こっちをフラフラ……何処にいるかなんて検討できる様な奴じゃねぇ……」




ジョーカー、あんまり出てきてくれないの?




エースは、どういう人なんだろう……会えるのかな?



「今日はいろいろ疲れただろ?ゆっくり休めよ。あーっと、部屋はそこだから」





指さされた部屋に行こう。今日はいろいろ疲れた。



正直脳がついていけてない部分もある。






あり得ないようなことがこの身に起きたんだから。




「ありがとうね、ジャック」




部屋に入ると、さっきの部屋と同様に何もない。



幸いベッドはあったが。





布団に入り、ゆっくりと目を閉じ、眠りについた。


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