真っ暗な闇の中に



とても小さな



でも、確かに光を見つけた









―少女の意志―
〜Hope〜










あれ、どうしたんだろう?

ここは何処だろう?





私はさっきまで、布団の中にいたはずなのに。



ココは何処だ?

この世界に来る前の白い空間とは別の……方向性がまったくわからない空間。





コレは何だ?

水色の……まさしくイラストでよくある“アリス”が着ているような衣装を身につけている私。





あなたは誰だ?

顔がよく見えない、私の前に立っているであろう人。


性別もよくわからない。




私は今、何処にいる?


また、別世界に飛んだのであろうか?


え?早くない?
世界移動早くない?

私まだあのワンダーランドで何も成し遂げてなくない?



「……アリス」





聞き覚えのある声で名を呼ばれる。




誰の声かはわからない。

しかし、ひどく懐かしい声。







「アリス」



「あなたは……誰?」





その人は、泣いているような気がした。





表情は見えない。

でも、声が震えている。





「お願いアリス、お願い」




懇願するような目の前の誰かの声。





「助けて……あの人を、助けて」






あの人?




「私はもう……あの人を救うことが出来ない」





誰のことを言いたいのか?まったくわからない。




「あなたは誰なの?あの人、って誰のことなの?」





ジョーカー?ジャック?クイーン?それとも、まだ会ったことない人達?



「私は――!」





それより後の言葉は聞こえることはなかった。




どこからか現れたクイーンが首をはねた。





血は出ない。ただ、その人はフッと消えてしまった。





「クイーン……?」




「亡霊め、懲りなく出てきおって」





亡霊、か。

もういなくなってしまった人なんだ。





クイーンは私の方を見た。



そしてニコリと笑う。





「アリス、失礼した。では、これにて」




私が問いかける前にクイーンは目の前から消えてしまった。





「助けて」




もういなくなったあの人の声がこの空間を反響する。




「お願いアリス、お願いアリス。あの人を助けて助けて助けて」




しつこいぐらい、反響する。





あの人の未練のせいなのかもしれない。





段々と息苦しくなっていく。



この空間にいることが、苦しい。



どうやってこの空間を抜け出すのかもわからない。





ねぇ、苦しいよ。

泣かないで、泣かないでよ。




あなたは誰?


あの人って、誰なの――?























「……リス!アリスッ!」




焦るような声が聞こえる。




この声は……



「ジャック……?」





目をゆっくりと開けると、目の前に心配そうなジャックの顔が映る。




「大丈夫かっ!?すっげぇうなされててッ!」





部屋の外までも聞こえるほどだったらしい。


どれだけうなされていたのだろう。



「ごめん……大丈夫だから」





目覚めが悪い、とはこのことか。





何故、夢の中でもクイーンの斬首を見なければならないのか。




「そうか……?」





少々心配そうな顔をしながら、ジャックは部屋から離れていった。







“あの人を助けて”






誰かの言葉が頭から離れない。





ねぇ、名前も知らないあなた。




「あの人って……誰のことを言っているの?」





あなたは誰なの?




誰かわからない限り、助けることなんて出来ないのに……






部屋を出ると、昨日とまったく変わらない風景が目に映る。




ジャックが椅子に座って、私の方を見ている。






「何か食うか?」



そう言われたが、お腹が空いていない。



……おかしい。

いつもだったら朝は空腹でしかたないのに。





「まぁ、この世界にいる限り「腹が減る」なんてことはありえないんだけどな」




食いたい時に好きな物を食うんだ。とジャックは言う。



お腹が空かない……つまり、餓死などいう死に方はないということか。



喉も渇かないということらしい。



こちらの世界での食事は
お腹は空いてないけど、なんかお菓子食べたい!!
っていうものと同じなんだ。





「ジャック」




私は椅子を引いて座った。



「ん?」


「エースって人に会いたいんだけど」





案内してくれない?




そういうと、ジャックは何とも言えない顔をする。



だって、あとはエースって人だけなんだもん。

白ウサギに渡されたトランプの中で会っていない人。



「昨日も言ったけど、エースは何処にいるか検討できる奴じゃねぇ」



はぁ、と溜め息をついて肘をつく。





あぁ、そっか……





っていうか



「今日って何日?」



「あー?8月くらいじゃねぇの」




あれ?私がリアルにいた時は5月だったのに……




まぁ、どっちにしろさぁ、外がおかしいわけですよ。



「なんでそんな夏真っ盛りに大吹雪なんでしょうか!?」





外を見ると、景色が見えないくらいの勢いで雪が降っている。




ジャックは窓を見て「おぉ?」と言った。






反応うすっ!




「今日は雪か」


「8月に!なんでそんなに平然としてるの!?ていうか、昨日は5月のはずだよ!」





ジャックは私に視線を戻さずに言葉を発する。



「リアルとは時間軸くるってんだよ……天気は、気分。クイーンの気分で全て決まるんだ、この世界は」





迷惑な女王様だ!




そんな私を余所にジャックは「今日のクイーンは荒れてんな」と呟いた。





あぁもう慣れない!!




「ラッキーじゃねぇか」



「は?」




「雪の日は、エースのいる場所が特定できるぜ」



まじですか?



寒いし、外ふらふらできないのかな?




「5カ所ほどに」



多いね。

特定出来てるって言わなくないそれ。





私達はエースを捜索するために家を出た。


レッツ探索!





















「エース?来てないよぉ!」



歩きに、歩いて……最後の場所



ジャックが言った、最後の“エースがいるであろう場所”だ。





全部まわった。



なのに……何処にもいなかった。




「どうしたの?エースになにかあったの?おにいちゃん、おねえちゃん!」



たくさんの子供がわいわいと私達の周りに集まる。



子供達の施設らしい。


エースさんは子供が好きなのか、ここによくいる……というジャックの情報に頼ってきたこの場所にその本人はいなかった。





「いや……邪魔したな」





疲れたような声でジャックは施設を出た。



「帰るか……」





「うん……」



見つからなかった……






「ジャック、こんな日にどこに行ってたのー?」




家のドアを開けた瞬間に聞こえたひと言。

聞いたことのない、明るい調子の声。



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