1-1:おいでませ逢坂寮![ 4/16 ]

「智くん、いい人でしたね」
「あいつだけまともだからな……次は、家庭科室かな」


 あいつだけってどういう事?
 他の人はまともじゃないって事?


「家庭科室?」

 昼休みに家庭科室……どうして?
 家庭科部とか?すっごいおしとやかな女の人とかかな!


「ここ」


 私の前には“家庭科室”と書かれた教室。
 中から、少し高い男の子の声が響いた。


「わぁーいっ! 先輩ありがとぉ! 大好きっ」


 中を覗くと、数人の女子生徒と小さめな男の子。にこにこっと笑う男の子を囲んだ女の人たちは可愛いものを愛でるようにゆるい表情を浮かべていた。


 男の子はふわふわとしたオーラを放っている……気がした。


「……裕太!」

 平川先生が「裕太」と名前を呼ぶ。
 さきほどの男の子が反応してこちらを見た。

 彼が「裕太」くんのようだ。
 女の子じゃなかった、可愛いけれど女の子じゃなかった。


「あっ、ダメ教師、見て見てー! お菓子貰っちゃったぁ」


 ご機嫌そうにお菓子を沢山抱えた「裕太くん」は近付いてくる。
 私より少し背が高いくらいだ。男の人にしては小さい方だと思う。




prev next
しおりを挟む
back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -