5-1:真夜中学校[ 3/9 ]
そこにただ1人だけ走らない人がいた。
私は必死に走っていたので誰かは分からなかったけれど。
ただ1人だけ、逃げてはいなかった。
――
―
…
私が走って逃げた先は、自分の教室。
……当然のように、1人で。
あれ? よく考えたら1人って怖くない? 動くに動けないし……私は懐中電灯持ってないし。
考えていると、ぴかりと廊下に光が見える。
「……誰かいるかー?」
この、声は。
「順平!!」
「あ、華発見。よかった」
懐中電灯を持って順平は近付いてくる。
大声出さない方がいいかな。
「みんなバラバラに走るもんだから、何処にいるか分かんねぇや」
そっか、やっぱり全員で行動した方がいいよね……
探そうか、と2人で話して教室を出て歩き始める。
さっさとみんなを捜して帰ろう。
だって、幽霊はいたんだから!
ゆらりとして、にやりと笑ったんだから!
思い出すだけで寒気がする。
探しても中々見つからなくて、廊下を曲がった所……懐中電灯で照らされたところに女の人が立っていた。
私達は驚いたけど、その女の人はこちらの方に気付き近付いてきて「あのう」と話しかけてきた。
「保健室は、どこですか?」
「え、あ、はい! あの、玄関の近くです……けどっ!」
「ありがとうございます。暗いから迷っちゃって」
その女の人は優しく笑って歩いていった。
「普通の人だった……?」
「よく、わかんねぇけど、びびった……」
なんでこんな夜中に……やっぱ霊?
霊だったらどうしよう、普通に話しちゃったよ。幽霊と話したら悪いこと起きたりしない、よね?
「あ、あそこに光見えるよ!」
私の視線の先に、何かがぴかりと光った。
懐中電灯の光だろうか、あれは。
誰か、いる!