4-2:俺はお前が、[ 3/8 ]
思いついたように川谷くんが言葉を漏らす。
「俺のこと順平って呼んでよ。名字じゃ、なんか堅いしさ」
にこり、と可愛い笑顔で言う。
「あ、そうだね! じゃあ、私のことは華って呼んでね?」
友達なんだし、そうだよね!
「あぁ! よしっ、次行こうか!」
それから、夕方になるまで夢中で遊び続けた。
「もう暗くなってきたね……」
「そうだな……あ、観覧車乗らない?」
びしりと観覧車を指さして言う順平。
「え、あ……」
その言葉に、私は少し戸惑った……実は高所恐怖症なんです、私。
「あ、ああいうの嫌い?」
順平はまるで犬のようにしゅんとする。
犬の耳の幻が見える……断れないよ。
「そんなことないよ、乗ろうか」
私の言葉で順平の表情は一変して笑顔になった。同じ年齢なのに寮の常に不機嫌な人とか、常に笑顔の人とか、常に無表情の人とかと違ってわかりやすい表情を見せるものだなぁ。
私達は観覧車に乗る、とても大きな観覧車だ。乗ってから少しの間、無言の時間が過ぎていく。無言が気まずいとか、そういうの、人によってはないものなんだけれど。
ゆっくり上に上がる、私はそんな気まずさよりも恐怖が大きくなって、喋ろうだとかも思えなくなっていた。
「華」
沈黙を破ったのは、順平だった。私は口を開きもせずに順平に目を向ける。
彼はゆっくりと、言葉を続けていく。
「あの、さ……華、遊びに行くのを誘ったのは、好き、だからなんだ……だから、俺と付き合ってください」
それは、唐突に。
私の事を、好き?
「え……っと、あの、ごめん」