“奴隷”じゃなくなってから数年。
“家族”になってから、わずか数年。
俺は、
腕と指を失ってまで迎えに来てくれたくれた“父さん”に、
優しく迎え入れてくれた“母さん”に、
背を向けた。
“太陽を殺した男”を殺したい。ただその一心で。
彼の「憎しみは憎しみしか生まない」という諭しの言葉も振り切って。
裏切った。
それでも。
帰れば、血の繋がりも何もない両親は優しく出迎えてくれるのだろう。
出迎えてくれなかったとしても、大丈夫。
大切な君は、俺の中にいるのだから。
久住は静かに、自分の腹部に手を当てた。
翠色カニバル
共食いセイレーンは愛されることから逃げ続ける
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