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3:暗雲の茶話会

※前の学校の元チームメイトの名前を入れて下さい。最後の最後だけ使います。
 (デフォ名:鈴木功助)

▼変換ボックス

↓の名前で表示されます。
鈴木功助

*****































美濃道三と雷門の試合が終わり、人の移動が粗方収まった。
名前は半田と松野を両隣に観戦していたが、その時間もそろそろ終わる。



「じゃあ、俺は練習戻るわ。今日は午後練なんだ」
「僕もいかなきゃ。って言うか今のトコ、僕が言わなきゃ締まらないんだよね。
 3年生ってターイヘン」
「2人共、しっかり強化委員してて凄いね…」
「何言ってんだ、お前もだろ」
「そーそー」



眩しく見えた2人に思ったままを口にすると半田が可笑しそうに言った。



「最初、強化委員の話が出て…雷門に居られなくなった時はやっぱり戸惑ったけど。
 それでも俺達がやりたい事もやるべき事も変わらないな」
「半田君…」
「実質廃部だもんねぇ。必死で夏未オジョーサマの廃部宣言逃れて優勝したのに結局!?って思ったよ」



『雷門サッカー部』という、自分達の戻る場所はもう無い。
派遣された先が悪い訳では無い。ただの気持ちの問題だ。
そんな中、雷門サッカー部が再始動していると聞いた。



「でも正直、全く知らない 所縁もないメンツに『雷門でーすヨロシク!』
 って言われても応援する気1ミリも起きない。ふぅん、あっそ…みたいなね」
「マックス、お前本当イイ性格してるよな…」
「僕は裏表がないだけー」
「あはは…」



毒を吐き散らすのは半田が諌めるのを知っているからか。
あるいは、そのままの気持ちを吐き出す事で他の部員の想いを代弁しているのかも知れない。
名前の苦笑いを確かめてから松野は続けた。



「…だから、名字がいるって知って素直にホッとした。
 僕らのやってきた事を知っているヤツが新しい雷門サッカー部の舵取りしてくれて」
「…マックス君…、…」
「だからってあんま気張り過ぎんなよ?名字は変な所でブレーキ壊れがちだからさ…」
「もう行方不明にならないようにね」
「マックスっ!」
「いやいや、本当あの時はご迷惑お掛けしました…もうしないよ」



いつまでも談笑していたい気持ちもあるが、彼等は今や別チームの核。
きっと2人は名前を気遣って未だ足を進めていない。
長く引き止める訳にはいかず、思い切って自分から切り出す。



「…今日はありがとう。お陰で観戦しやすかったよ」
「気にすんなよ。今度 俺達が忘れてたらその時はよろしくな」
「勿論」
「約束ねー。…じゃあ、そろそろアレだね。
 よく漫画で見る『決勝で会おうぜ』ってヤツ?」
「いや、それ駄目なパターンしかねぇだろ…」
「ぷっ…!!」



松野と半田の漫才のようなやり取りに思わず吹き出すと、それを皮切りに皆で笑った。







『雷門の皆サーン、今日はお疲れ様でしター!
 また明日の練習に向けてしっかり休んで下さいネ。以上、解散デスゥー』
野坂悠馬から連絡が入ったのはそんな監督の労いを受けた直後だった。

この後時間があるかどうかと場所だけ簡潔に伝えるやり取りをして今に至る。



「(さて、指定されたのはこの辺りなんだけど…)」
「名字さん」
「!」



呼ばれた方に目をやれば野坂が軽く手を振ってこちらへ向かって来た。



「お待たせしましたか?」
「ううん、帰る途中だったから」
「良かった。じゃあ、お茶でもしながらこの前のお話の続きをしましょうか」
「あ、うん…」


ごく自然な流れですぐ傍のカフェに入る事になる。
店員に席を案内されて座った後、野坂は意気揚々とメニューを広げた。
顔見知りでない相手を前にここまで寛げるのはなかなか肝が座っている。



「あ、そうだ。美濃同三との試合良かったですね。公式戦初勝利、おめでとうございます」
「あっどうもありがとう」



もう結果知ってるんだ、と顔に出ていたのか聞いてもいないのに『観戦しに行ってましたから』と補足される。
他の人がいたから話しかけるのは遠慮した、とも続くと気を遣ってくれて有難うとしか言いようがなかった。
ライセンスを持ってなかったとは口が裂けても言いたくない。



「名字さんは何を頼みますか?」
「私?えっと…、…ミルクティーにしようかな…」
「飲み物だけで良いんですか?」
「うん」
「じゃあ、僕の頼むパフェ、一緒に食べるの手伝ってもらって良いですか?」
「パフェ?」
「ええ、いつも食べ歩きに付き合ってくれる友人とだと頼めないので」
「?? うん、良いけど」



意味深な言葉によく分からないなりの返事を返す。
それを聞いた野坂はにこりと笑うと店員を呼び、名前の分までオーダーをしてくれた。店員が下がると改めて向かい合う。



「…じゃあ少し、話しましょうか」
「そうだね。私が知りたい事もだけど、野坂君が私に話したい事があるって言ってたのも気になってた」
「あぁ、確かに言いました。名字さんは記憶力が良いんですね」
「…引っかかった事だけ、だよ」



野坂に他意はないだろう。
けれど抜けた記憶を思い出そうともがいている名前には、その言葉は酷い皮肉に感じた。

とは言え、彼はどういう経緯か名前の噂について知っていた。
ならば過去にあった事も知っているのは不思議ではなく、話を聞けば何か繋がる事がある可能性もある。
野坂の話したい事が何か分からない以上、無闇に飛び付く訳にもいかないが。



「そんなに構えないでも大丈夫ですよ、無理なら無理と言ってくれれば良いので」
「そう…?」
「ええ。でも僕の話をするなら、まず名字さんの事から話した方が分かりやすい。
 何故かと言うと…鈴木功助、彼が関わっているから」
「…!」



鈴木功助、名前が元いたサッカー部のリーダー。
スポンサー制度の対流にたって拳を振り上げた加害者であり、またそれにのまれて浮かべなくなった被害者。
名前と確執がある彼が話に出る事はあるだろうが一体 野坂とどう関係があるのだろう。



「…あの子が野坂君にどう関係してるの?…って今から話すんだよね。ごめんなさい」
「謝る事なんて。逸る気持ちは分かります。僕も名字さんの立場ならきっと…−−−」

「−−−お待たせ致しました!カップル限定☆甘酸っぱい青春のベリー×ベリースペシャルア・ラ・モードパフェとミルクティー、お持ち致しました!!」


「…」
「わぁ、メニューの写真以上に大きいな」
「当店自慢のメガ盛りメニューになります!こちら、真ん中に置かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます。あ、ミルクティーは彼女へお願いします」



成程、きっと野坂の言っていた友人は男性だったのだろう。
カップル限定だと連れによってはオーダー出来ないから、先の言葉に繋がったのだ。

全てを理解し、軽い気持ちで返事を返した事が悔やまれた。
店員のはつらつとしたよく通る声が店内に響き渡り、
2人以上の量があるだろう巨大なパフェが目の前に立ちはだかる。

もはや野坂は見えない。見えないまま、パフェの器の向こうで『頂きます』と声が聞こえた。



「カップルだって。可愛い〜、放課後デート?」
「中学生くらいかな?青春って感じね…」



ひそひそと周りから聞こえてくる声に臆する事なく
野坂は席はそのまま、立ち上ってパフェにスプーンを突っ込んだ。
斜め上に視線をずらすと余裕のある表情で微笑み返される。
やはり戦術の皇帝ともなると鋼鉄の心をお持ちのようだ。
対して名前は恥ずかしくて帰りたい気持ちでいっぱいになっていく。



「…名字さん、果物好きなんですよね。ここ、沢山苺が乗ってますよ。どうぞ」
「あ、ありがとう…」



とは言え、折角 過去を知る機会を得たのに手ぶらでは帰られない。
そして恐らくこのパフェに満足するまで野坂は話に触れないだろう。



「(…恥ずかしがってる場合じゃないよね…!)」



名前は意を決して彼から取り皿をもらい、粉砂糖で薄白く化粧をした苺を一粒頬張った…ーーー。












*****
(2019/7/13)

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