私は昔から剣道を習っていた。
そのせいか、沖田さんに強い憧れを抱いていた。
いつも目で追っていて、沖田さんの剣さばきを見ると、いつも胸がドキドキしていた。
でもいつの日か、ドキドキがただのドキドキではなくなってしまった。
最初はよく分からなかった。
このドキドキがなんなのか。
沖田さんを見るとひどく緊張して、顔に熱が集中した。
そしてしばらくして気付いた。
この感情がなんなのかを。
その感情に気付いた時、酷く絶望したのを覚えている。
この恋は叶わないのだと。
貴方と目が合い、会話し、貴方への気持ちはどんどん大きくなる。
生まれて初めて恋をしたというのに、その相手が過去の人間だなんて。皮肉なものだ。
初恋が沖田総司だなんて……。
「なまえ、ちょっと良いか?」
あぁ、名前を呼ばないで。
私に話し掛けないで。
私の想いを、これ以上大きくしないで。
私から見たら、貴方は過去の人間で。
沖田さんから見たら、私は未来の人間で。
時代が違い過ぎた。
沖田さんに想いを伝えてはいけない。
沖田さんを愛しているなら尚更……。
沖田さんに聞こえないように呟く。
「ごめんなさい…沖田さん…。」
「ん?何か言ったか、なまえ。」
「……いいえ、何でも……。」
沖田さん、許してください。
貴方を目で追い続ける事を。
貴方に恋をしてしまった事を。
始めは
憧れ
だった
はずなのに
貴方に恋をするなんて、思いもしなかった。
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