翡翠


時計回りの真昼のテラスに
あなたの背中を見つけては
冷たい床を私駆けて駆けて
転がるみたいに、逢いたい

迷子の兎を追いかけたこと
硝子の靴を履いてみたこと
全部あなたの為だったの私
煌めくゆらぎを、恋うって

走る秒針の音も聞かず
笑うあなたの声を追って
あまやかな昼夜 日々でした
遠い緑が透けている


あれからいくつの朝が訪れ
私を覚ましていったでしょうか
とうに止まった時計の中で
一秒だけが刻まれていく

花冠をくれたあの指に
もう帰りたいよ


アラビア数字の昨日の色は
とうに掠れたようだけれど
蔦の絡んだ糸の端手繰って
息を閉じ込めて、会いたい

覚えていますか私がかつて
一人が嫌いで泣いたこと
なだらかに落ちる 日々でした
晴れた空から雨が降る


あれから遥かな時が流れ
私を通り越していきました
錆びて壊れた時計を抱いて
私は今も 変わらぬまま

君は綺麗と撫でた手のひらに
もう笑いたいよ


時よもう進まないで
私を引き離さないで
連れていって置いていって
この秒針を巻き戻したら
あなたの傍に
きっと駆けてゆける


あれからいくつの朝が訪れ
私を覚ましていったでしょうか
とうに止まった時計の中で
一秒だけが刻まれていく

花冠をくれたあの指に
もう還りたいよ

そしていくつもの夜をずっと
ぬくもりの中で もう眠りたいの
とうに壊れた心を軋ませて
辿り着いて私、逢いたい

よく来たねと言って抱きしめて
もう帰さないで

二人孵る その日まで



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