痛ましきあなたの声は弓を張るあの世の空の月に似ている
蔦のない壁に這わせる緑の手ぼくらは描く遠い記憶を
幸あれば懐中電灯ふり翳しあなたを呼ぼうトンネルの先
真夜中のホームに光る自販機でふらりと買いし明日飲む水
革靴の踵鳴らして肌を踏み夢から醒めよと云う調律師
貴方には見えない月に目を閉じて祈るわたしの愛よおやすみ
一粒の飴をあげると悪戯に灯りを消して君は微笑む
心臓をガラスに喩えられぬのは裏手に君が棲んでいるから
簪は要らないのですもう二度と髪を肩より伸ばしはしない
たなごころ、はこにわ、りねん、ぎやまんも、全ては君が教えた言葉
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