第五章


「無謀ですね……、意外と」
「そうかもしれませんね。でも、それが楽しかったのですよ」
「レトー先生はもう少し、着実で真面目な方だとばかり。それに」
「はい?」
「そんなにたくさんの勉強をして……、どうして魔法学の教授を選んだんですか」
無謀だ。だが、それをやり遂げた人だという。ならばどうして、その道の教授にならなかったのだろう。彼ならば、古代魔法史だけでなくそれに関わる言語や暗号、すべて教えることもできるだろうに、なぜ。それだけの努力をしてそれだけの知識を持ちながら、彼の授業は基本的に魔法について語らうだけ。もっと、良い立場の授業を請け負っても問題ないはずだ。
「年齢がまだ若いからとか、そういう事情で……?」
「え?ああ違いますよ、そんな、目上の教授が許さないからなんて裏事情ではなくて。単純に、僕は魔法学を教えたいのです」
「どうしてですか」
「それは、そうですね……僕自身、魔法の勉強が楽しかったからでしょうね」
「魔法の勉強……」
「ええ。好きなことを好きなだけ勉強していました。それは、根本的に魔法が楽しくて仕方なかったからだと思うのです」
懐かしむように軽く微笑んで、彼は暗号を書き写したノートにまた何ごとか、今の私ではまだ辞書がないとよく分からない文章を書き足した。そして訳を簡単に説明するから、私は慌ててペンを取る。それを目で追いながら、彼は話題を戻した。


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