拾い物屋 針金堂

クーペルーペとの再会は残念ながら叶わないまま、大陸へ着いた。港と呼べるような港はなく、象牙色の砂地にゆっくりと近づいた船が浅瀬で停まる。ともかく靴を脱いで老夫婦と別れ、少し海を歩いて砂地に上がった。さっそく大陸の中心部を目指してみようと思ったのだが、先に一件の店について書き残しておく。

砂地を上がってすぐのところに、骨董でも扱っていそうな店を見つけた。拾い物屋と書かれている。興味本意で店内に入れば、屋内だと言うのに潮の香りがした。大小様々な巻き貝が並んでいたためだ。
他にも立派な流木や鮫の歯、シーグラスなどがところ狭しと並んでいる。値段はどれも小銭ひとつで買える程度だ。

眺めていると奥で人の気配がした。私は思わず怪しい老婆でも出てくるのを待ったが、出てきたのは存外に陽気な大男であった。ジズと名乗る。
彼は三年ほど前に漁師を引退してから、ここで店を構えているのだそうだ。名無しの海は時として波が荒く、それをよく知る者でなくては危ない思いをすることもあるという。故にあまり砂浜で気ままに遊べない子供らに、波の穏やかな日に拾ったがらくたを安く売り、取りに行きたいものがあると言われれば仕事ついでに連れていくのだそうだ。

私は異国の海賊船が描かれたコインを一枚買って、財布に忍ばせておくことにした。



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