水上楽団クーペルーペ

夕刻の船に乗って名無しの海を渡る最中、不思議なものに出会った。船上で一週間を過ごす、三日目の夜明けのことだ。朝の早い乗客の老夫婦につられて目を覚ました私は彼らと甲板に出て話をしていたのだが、どこからともなくヴァイオリンとハープを足して割ったような音が聞こえてきた。確かに近づいてくるそれは次第に音楽となり、唐突に高くなった波が数滴、船へ入り込んだかと思うと、たちまち人の形を作って見慣れない楽器を弾きながら歌い出した。ライエ、ライエ、と歌っていたのは覚えているが、記憶はあまり鮮明でない。意識がはっきりとしたのは彼らが崩れて水滴に戻ったときだった。老夫婦も驚いていたようで、夫人のほうがその一粒に触れようとしたのだが、それはその瞬間に空へ舞い上がったかと思うと無数の白い鳥になり、私達の目の前で固まって一羽の大きな鳥になり、雲の向こうへ姿を消してしまった。

これは先程船長に訊いた話だが、あれらを船乗り達はクーペルーペと呼んでいるらしい。異国の言葉が訛ったものだそうだ。残念ながら元となった言葉は、すでに伝えられていなかった。
運が良ければ大陸に着く頃、また会えるかもしれないとのことだ。



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