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朝目覚めれば、隣には昨日散々可愛がった美作がいた。
彼は既に起きていたらしく、昨日脱がした制服に身を包みこちらを茫然と見ていた。
「………」
「あー…、みまっち起きてたんだ?」
カリカリと後ろ頭をかきながら上半身を起こす。美作は無言でそれを見ていた。
それにしたって、美作はでかい。
立ち尽くしている彼を見やれば、軽く180はありそうだ。ひょろいけど。
俺よりでかいけど、昨日は全然気にならなかったなー。むしろ可愛かったし。
「…日高、なんで…」
やっと声をあげた美作。
呟く疑問は意味をあまりなしていない。
俺は逆にそんなことを聞いてきた美作に対して不思議で、きょとんとしながら彼を見上げた。
「だって、みまっち可愛かったし」
「え…?」
「なんとなく、抱いちゃった。でも気持ち良かったでしょ?俺上手いし」
そう理由と言えば、美作が可愛かったからとしか言えない。
可愛かったのが悪い。思わず手が出た、それだけ。
てか、他に理由が必要なのかなぁ?
いつもこういう理由で他人を抱いてきたけど、みんな喜んでたし、正直言うと、美作のように『なんで?』と問いかけてくる奴なんかいなかった。
「なんとな…く?」
茫然と目を見開いて呟く美作。
「そうだけど?」
そして俯いてしまった美作に、俺はさらにきょとんとする。今までこうやって抱いてきたことは数知れず。そうやってセフレがどんどん増えたのだから。
「俺は……初めて、ああいうことした」
「そうなの?感度よかったし、そうとは思えなかったなぁ」
美作の『初めて』という事実に、何故か胸が踊った。
やっぱり、お気に入りだからかな?美作を抱くのはいたく気持ち良かったし。
身体の相性がいいのかな。また抱きたいなー。もしあとで美作が溜まってたら、抜いてやるついでにまた抱いてもいいかな?
そう思ったら、つい言葉にしてしまった。
「ねぇ、また抱いてもいい?」
その問いに、美作はぴく、と肩を揺らしたと思うとそのまま無言で動かなくなってしまった。
やがてしばらくすると、美作は顔をあげる。
返事を返してもらえると期待して、俺は彼の顔を見つめた。
しかしその顔は、昨日想像したような困った笑顔は浮かべられていなかった。
「お前…最悪だな」
「え…」
美作の言葉に、何故か心が急速に冷えた。
ぽつりと呟いた美作は、踵を返して急ぎ足で部屋を出ていく。
追い掛ければいいのに、俺は呑気にもベッドに入ったまま動けずにいた。
バタン、と玄関の扉が閉まる音がやけに大きく聞こえて。
「みまっち…?」
誰もいない部屋で彼を呼ぶ。
出ていった美作が最後に浮かべていたのは、俺が初めて見た彼の表情で。
胸が苦しくなるような、泣き顔だった。
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成るは嫌なり、思うは成らず
(困った笑顔を見せてくれると思った。だけど君は泣いていた)
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