黒猫さん




昨日の夜は結構悩んだが、結局私は晋助君のおかげかあまり悩まなくなった。
やはり、今でも少しはまだ悩んだりするが今を生きることに私は決めた。

今日は天気がよく、快晴。
最近は雨ばっかり降っていたから洗濯日和の日だ。
だから私は今、洗濯者を干している。
濡れた服を丁寧に一枚一枚干していく。
服を干す前は大変だったものだ。
全て、手洗いで洗ったのだから。
この時代にはまだ洗濯機というものがない。
だから、手洗いで洗うのだ。

私は今日、家事全般を松陽先生に頼まれたので家事をやっている。
松陽先生は今はおられるけど、今日は忙しいらしい。
どうせなら毎日私に家事をやらせればいいものの、松陽先生はそれを許してくれない。
だから、せめて今日だけでも役に立てるようにと頑張っている。

干し終えた私は中へと入ろうとする。
だが、ある鳴き声で後ろを振り向いた。



「……猫?」



その鳴き声は猫だった。
猫はまだ子供で、黒い毛が生えており、何とも弱々しい感じだった。



「にゃー」


「お腹減ってるの?」



少しずつ距離を縮ませながら近づく。
子猫はちょっと警戒しており、私から離れていく。

仕方がないから私は一旦台所へと向かった。
台所へと行って、私はすぐに戻ってくる。
子猫がまだ居たので、その子猫の前に座り込んだ。



「ほら、煮干しだよ」



台所から取ってきたのは煮干しだった。
きっとこの子猫はお腹が減っているだろうと思ったから。

だんだんと近づいて来る子猫。
その子猫は私の予想通り、お腹を減らしており、煮干しを勢いよく食べている。
食べ終わったのか、子猫はまだ欲しいとでも言うように私の足に飛び乗る。




「わっ」



急のことで、私は後ろへと倒れた。
だけど、寸での所で誰かに支えてもらった。



「大丈夫ですか?」


「あ…松陽先生」



私に手を差し伸べてくれたその手を私は掴み、立ち上がる。



「倒れそうな所助けてくださりありがとうございます」

「いいんですよ。…その猫は?」



不思議そうに子猫を覗いてくる松陽先生。
私は松陽先生に見せるように抱いていた子猫を前へと差し出す。



「庭の茂みから出て来たんですよ。さっき煮干しをあげたらお腹が減っていたのか勢いよく食べだして…。そしたら私に飛びついてきたんです」


「それじゃあ、その猫はきっとまだ物足りないんでしょうね」


「あはは、多分そうだと思いますよ」


「じゃ、中に入りましょう。そしてこの猫に餌をあげなければ」



松陽先生は子猫の頭を撫で回す。
子猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら気持ち良さそうに目を薄めた。
中に入っていたら、当たり前かのように待ち伏せていたのがあの3人。
銀時君と晋助君と小太郎君。

銀時君と晋助君は私が持っている子猫を不思議そうに見ているけど、小太郎君はその真逆だ。
むしろ、目を輝かせて嬉しそうにしている。
だいたいの理由はわかるが……、そけまで好きなのだろうか。



「菜緒ー、何で猫持ってるんだよ」


「猫持っていていいことあるんかよ」


「菜緒殿!!肉球触らせてくれ!!」



やはり、疑問に思っていたのか。
小太郎君に関しては別だけど。

私はさっきあったことを全て3人に話した。
銀時君と晋助君は納得してくれたが、小太郎君はもう私の話しなんか聞いていない。
目が子猫しか映っていないのだ。



「菜緒さん、私は後でその子猫の餌を持ってきてあげるので3人と一緒に部屋にいてください」


「え、いや!それは松陽先生に悪いですよ!!」


「いいんですよ。それに、その子達もその方がいいと思いますし」


「菜緒殿!!肉球が気持ちいいぞ!!!」


「…じゃあ、お願いします」



私は仕方なく先生の言葉に甘え、3人と一緒に部屋に入ってからそんなやり取りしかしていない私達。

というか私と小太郎君。
銀時君と晋助君は何かが気に入らないのか子猫を睨みつけている。



「2人共、何子猫を睨みつけてるの。子猫は何もしないよ」


「いや、した。さっき触ろうとしたら噛まれた」

「同じく引っかかれた」

「………」



確かにさっき引っかかれたり噛まれたりされてたがもしれない。
子猫も銀時君達同様、2人を睨みつけている。
小太郎君はそれに気にせず肉球を触り続けている。
何故睨み合ってるのだろうか。



「2人共何かした?」


「「睨みつけた」」



原因は絶対それだろう。
猫は自分に威嚇されていると察し、銀時君達に警戒しているのだろう。



「何で睨みつけたの?」


「猫、ムカついたから」


「同じくー」


「………」



まだにらみ合っている2人と一匹。
子猫はシャーッと威嚇している。

小太郎君は今にも噛まれそうなのに気にせず肉球を触り続けている。



「失礼しますね」


「あ、松陽先生」



松陽先生は、魚など猫が食べれそうなものを持ってきてくれた。
松陽先生が魚などを、床に置いた。
子猫はというと、銀時君達と睨んでいたが、すぐに目を餌の方へと向けた。
するとすぐに餌へと飛びつき、食べ出した。



「やっぱり、結構お腹減っていたんだね」


「食べてたら可愛いのに何だこの猫。反抗期か!!」


「ちっ…猫だからっていい気になりやがって」



君達が反抗期なのではと思いながら銀時君達を横目で見て、また視線を子猫へと向け直した。
すると子猫は、魚を半分残し、その魚をくわえだした。
魚を持って何処に行くのだろうと思って、静かに猫を見つめていたら庭に出て行った。
庭に出て行った子猫の近くには、もう一匹その子猫より大きい黒猫がいた。

少し似ている所もあり、親子だとすぐにわかった。
子猫は、その餌を親猫へと渡した。
餌を持って外へと出てったのはきっと家族にあげるためだったんだろう。
じっと、みんなで見ていると猫達は私達に背中を向け茂みの中へと消えていった。



「子猫、いなくなったね」


「あいつ絶対に俺らから餌を貰うためにハメたんだぜ」


「くそっ、猫が」


「俺の肉球が…」



1人1人、何だか半面悲しがっているように見える。
松陽先生もそれを見て思ったらしく、私と松陽先生は顔を見合わせながらクスクスと小さく笑った。





(菜緒殿ォォォ!!ね、猫を飼ってくれェェェェ!!に、肉球ゥゥゥ!)

(いや…無理だと思う・・・)



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