放置プレイかコノヤロー



「おぉ!あなたがこのハンカチの持ち主かね?」


「え、いや、あの、違います」



扉を開けて入った瞬間目の前にゴリラっぽい人がいました。

うん、ゴリラに“近い人”だからね。
決してゴリラだ、なんて思ってないんだからね。

ってか目の前にゴリラっぽい人がいたら他の人はどんな気持ちなのだろうか。
もし普通に平然としていられるのなら羨ましい。



「え…違うの?」


「え、あ、違います?」



さらには疑問系で返してしまった。
ゴリラっぽい人が持っているハンカチは確かに私のだ。

私の何だけど、どうしても目の前のゴリラっぽい人に混乱してしまう。

世の中にこんなゴリラっぽい人いたんだ…。
ってか何でこの人がハンカチ拾ったんだ。
何これ、運命です的な?
嫌だよこんなゴリラっぽい人に運命感じるだなんて。



「そうか…。違ったのか。早くこの持ち主に返したいんだがなぁ…」



残念そうに目をハンカチに向けて悲しむゴリラっぽい人。

……この人絶対いい人だよ。いや、だってハンカチ如きでこんな熱心になる?
いやいやならないでしょ。
私だったら絶対ならないもん。さっきゴリラっぽい人っていってごめんなさいィィィ!!



「あれ…今君失礼なこと思った?」


「いえ、別にゴリラっぽい人だなーだなんて思ってませんよ」


「いや、もう言っちゃってるじゃん!!」



どうせ俺は…とか言いながらのの字を書き出したゴリラっぽい人。

優しいけど面倒くさいのね。
私は小さく溜め息をつきゴリラっぽい人に近づく。
ってか今さらだけどゴリラっぽい人って長いからゴリさんにしよう。



「すみません…。私たまについ悪いことを言ってしまうことがあるんです…」


「……」


「だから気にしないでください。私も悪気があった訳ではないですから」



ポンっと肩を叩きながら私は素直に謝った。
勿論心から謝ってるからね?

だってゴリさんめっちゃ良い人そうだもん。
ってか良い人だもん。
そんな人に軽く謝ったら私めっちゃ酷い人じゃん。



「お嬢ちゃん…」


「あ、ついでにですがそれのハンカチまじで私のです。拾ってくれてありがとうございます」



嬉しそうな顔でこちらを見てきたゴリさんにそう言い、すぐにハンカチを貰う。

いや、奪うの方が正しいかも。
ちょっと半泣になった面倒くさいゴリさんにありがとうございました、とまた御礼を言う。
私は後ろでずっと静かに待っていた土方さんと沖田さんの所に歩み寄る。



「何かすみませんでした」


「あぁ、いや、大丈夫だ。あの人はいつもそんな感じだからな」


「あ、ならいいや」


「切り替え早ぇな、オイ!!」


「ところで何で私ハンカチ如きでこんな所まで来なくちゃいけなかったんですか」


「そりゃ、近藤さんがお人好し過ぎるせいだからでィ」


「へー」



やっぱりこのゴリさんは凄く良い人なんだなー…。
ハンカチ如きだったけどいつか御礼したいな…。



「あ、そうだ!トシ、総悟!!悪いがもう暗くなってきたし女の子1人で帰らせる訳にも行かないから送ってってくれないか?」


「えっ、いや、別にいいです」


「いや、遠慮しなくていいぞ!何たってここは真選組だからな〜!!」



ガハハと笑い出したゴリさん。
まぁ、警察だから遠慮はしなくてはいいと思うのは私もそうなんだけど…。



「ったく、しょーがねーな。おい、行くぞ」


急に私の腕を引っ張ってきた土方さん。
ちょっ、地味に痛い!!



「だから、いいですってば!」

「何遠慮してんでィ」


「じゃなくてっ、」


「ほら、意地張ってないで早く来なせェ」


「ああああ!!だから、私まだ家ないんですってば!!」



途中から私のもう片方の腕を掴んできた沖田さんの手と土方さんの手を勢いよく振り払った。



「「「え」」」


「…………あ」



勢いあまりについ言ってしまった。
これじゃあ、私が可哀想なホームレス人みたいじゃないか。
いやいや、断じて違う。
絶対に違う。
私はただ今日江戸に来たばかりで…。
だからそんな哀れんだ目で見ないでください、地味に傷つきますから。



「そうか…今まで辛かっただろうなぁ…」


「いや、だから何誤解してるんですか」


「仕方がない…。ならここに1日住ませてあげよう」


「オイ。何無視してんですか。殴るぞゴラァ」


「おい、近藤さん本気かよ!!」


「当たり前だ!!女の子には優しくするものが男っていうもんだ!」


「だがよ、いくら何でもむさ苦しい男だらけん中に女1人はキツいだろーが」「それなら俺がいるんで大丈夫でさァ」


「お前男だろぉが!!」



何か私めっちゃシカトされてるんですけど…。
もういいや。
この間に帰ってしまえば…。

3人の目を気にしながらも私はゆっくりと扉へと向かって行った。
だが…、



「じゃ、部屋に案内してきやす」



沖田さんに捕まった。
私の肩を抱くように私を捕まえた沖田さんは私にしか聞こえない声で耳元に囁くように「逃げようとしたらただじゃすみやせんぜ」と言った。
勿論いやらしく口角を上げながらドS顔をしている。

あ、私もう絶対逃げられないな、と思ったのはきっと正解だろう。
半泣きにながら渋々沖田さんに付いて行った。
後ろで待ちやがれ!!と叫んでいる土方さんに助けてもらいたいものだ。





(ここがお前の部屋でさァ)

(嘘こけ。これどっからどう見ても犬小屋じゃないですかァァァ!!)

(お前の目は節穴ですかィ。絶対お前にはこの家が似合うんですがねィ)

(お前の目の方が節穴だわ)




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