▽影の薄いあの子 何とか沖田さんに部屋を案内してもらって今日はその部屋でぐっすりと寝た。 見慣れない部屋で寝るのは少し戸惑ったけど畳の匂いとかが故郷にある自分の部屋と似ていて落ち着いた。 そして朝起きて私は借りた布団を畳み押し入れに入れ、きっと近藤さんがいるだろう局長室へと向かった。 ……が。 「局長室って…どこですか」 あっさりと迷ってしまった。 やはり初めて来た場所を1人でうろうろしたことが間違いだったのだろう。 すぐに引き返して、誰かが来るのを待とうとしたが案の定寝た部屋の場所も忘れてしまった。 あーあ…。 こんなことになるならずっと部屋にいるべきだった。 遊び半分で局長室まで行こうとした私が馬鹿だった。 「仕方がない…ここで誰か来るのを待ってるか」 よいしょ、と言いながら縁側に座る。 目の前にある庭にはやはり男だらけの真選組というように松の木やらがちらほらとしかなく、花や池などは一切ない。 「何か飾ればいいのに」 見ててもつまんないなーと呟きながら空を見上げると誰かの顔がドアップで映った。 「うわわわわわっ!」 吃驚してすぐさまその人から離れる。 「…あ、昨日の門番さん」 よく見るとこの人は最初私が助けを求めた影が薄そうなジミーさんだった。 ジミーさんも私が顔を上げると思ってなかったらしく吃驚している。 「あ、あの、何かごめん」 「え、いや別にいいですって!それより何か用ですか?」 「え、あ、うん。君を探していたんだよ」 私を?と聞くと、うんと返事を返してきた。 どうやら私が寝ていた部屋に来たんだが私が居なかったため探していたらしい。 「…本当すみません。ちょっと局長室に行こうと思ってたんですけどあの、その……………迷いまして」 恥ずかしすぎて顔を下に向ける。 あぁ、もう恥ずかしすぎるから死んでも構わない!と思っていたらジミーさんがくすくす、と笑った。 意味がわからず顔を上げるとジミーさんと目がバチッと合う。 「そりゃ仕方がないよ。何たって真選組は広いもんね。それに初めて来た人が彷徨いたら迷うに決まってるよ」 いや、でも二十歳になってでも迷子になるっていうのはかなり恥ずかしいものなんですよ。 私にとっては、ですがね! 「あ、それと局長室向かってたんだよね?」 「あ、はい」 「ちょうど良かった。局長が呼んでいたから探していたんだ。ついて来てくれる?」 「勿論です!!」 本当にナイスタイミングですよ、ジミーさん。 何かジミーさんが神的存在に見えるのは私だけでしょうか。 歩き出したジミーさんの後ろを足取りよく歩いていく。 迷子になったけどすぐに誰か人が通って良かった。 それも知っている人だったしね。 まぁ、沖田さんとかが通ったら多分シカトだと思いますが。 私、あの人嫌いですからね。 勿論チビチビ言ってくるしイジメてくるからです。 一発殴らせてくれないかなー、まじで。 「そういえば名前何て言うんですか?」 「ん?あぁ、自己紹介がまだだったね。俺は山崎退。君は?」 「加々美実乃です。改めてよろしくお願いしますね」 「うん、よろしくね。それにしても礼儀正しいね。偉いな〜こんなに小さいのに」 「……」 「え、何。何で睨んでくるの?ちょっ、いたたたた!頬抓らないで!!」 「ねぇ、何で皆さん私を馬鹿にするんですか?そうですよね、私小さいですよね。だからって普通子供扱いしますか?えぇ?ゴラァ」 「すんまっせェェェん!!」 本当、真選組の人達は酷い人達ばかりだ。 いや、故郷にいる人達もそんな感じだったかな…。 あ、何か泣けてきた。 「それにしても実乃ちゃんは何歳なの?」 赤くなった頬を抑えながら言ってきたジミーさんをまた睨む。 するとすぐごめんと謝ってきたのではぁ、と溜め息をつきながらいいですよ、と言ってきた。 まぁ、すぐ謝ってくるし良い人だから別にムカつく、とかはないですけど。 あ、沖田さんと土方さんはもう論外です。 「二十歳ですよ。…あり得ませんよね、本当…」 「それで二十歳かぁ〜…。実乃ちゃんも大変だね」 でも頑張ってね、と一言付け加えて言ってきたジミーさん…いや、山崎さん。 こんなこと初めて言われたから嬉しすぎて感動した私は山崎さんの手を掴んだ。 「わっ!」 「ああ、もう山崎さん神です。山崎さん最高です。山崎さん是非お友達になりましょう!」 一旦山崎さんから手を離して私は山崎さんの正面へと移動し、そしてまた手を差し出す。 手を掴まれて恥ずかしかったのか顔が少し赤い。山崎さん癒やしだね、本当可愛いよ! 山崎さんは照れながらも私の手を受け取って勿論、と笑顔で言ってきた。 (あ、そうだ。あんパン食べる?) (え、急に何故あんパン?) <<|back|>> |